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Ogawa & Tokoro インタビュー公開!

2020.12.26

カクバリズム,その他

明日渋谷7th floorにて今年8月にリリースした7inch single “Shinmaiko”のリリースパーティーを開催するOgawa & Tokoroのインタビューを公開!カクバリズムの文化祭でのライブ収録後の2人に話を聞きました。聞き手は松永良平さん。是非ご覧下さい!

Ogawa & Tokoro Interview (聞き手: 松永良平)

──ふたりは大学の同じサークルで出会ったんですよね。

小川 僕が2コ上で23歳。(野老が)21歳ですね。なので、僕が一応先輩という感じは多少はあります。

──どういう流れで一緒にやるようになっていったんですか?

野老 僕はサークル内でいろんな人とプロジェクトをいくつもやってて、最初はそのうちのひとつでしたね。

小川 僕と僕の同期と野老の3人でユニットをやったこともあるんです。カシオトーンとかおもちゃキーボードだけで音楽を作るような。

野老 他にも、もうちょっとクラブサウンドっぽいユニットもやったり、バンドみたいなのもやったりしてたんですけど、どれも音源は残してなかった。ユニット組んでパッとパフォーマンスして終わりじゃなくて、音源を残したほうがいいと思うようになって、そのタイミングでやったのがOgawa & Tokoroだったんです。音源を残したい。それしかなかった。

──それは小川くんも同じような心境だった?

小川 僕も同期と組んだハードコアパンク・バンドでドラマーやったり、90年代の日本のインディー・ロックみたいなオリジナル曲をやるバンドとかやったりはしていたんですけど、やっぱり自分が作った作品が欲しいなというのはだんだん思っていた時期で、そこの思惑がふたりで一致して「やってみるか」という流れになったのが最初のカセット(『惑星探査-Planetary Exploration-』2019年)ですね。

──カセット・レーベルOriental Tapesもそこからスタートしたわけですね。Ogawa & Tokoroというシンプルすぎるユニット名にしたのは?

小川 いい名前が決まらなくて、あきらめたんですよ。

野老 え? 全然覚えてない。なんか候補ありましたっけ?

小川 とりあえず、いったん名前つけるかということで、Ogawa & Tokoroと。

──いいと思います。丸見えすぎて謎(笑)

小川 イベントとかに行くと、みんなかっこいい名前がついてるじゃないですか。でも「これは誰なんだろう?」ってわからないこともあったりする。そんななかで、「僕らはそのままOgawa & Tokoroです」っていう(笑)。それがちょっと便利かなと思うところは最近ちょっとあります。

野老 名前はなんでもいいです(笑)。そんな重要じゃないからこれにしたというのはあります。

──7インチになった「Shinmaiko」って曲名も、地元の地名でしょ? 固有名詞なんだけど限りなく匿名的になりうる。そういうよさがあるんですよね。

野老 大事だなって思ったのは、SEO対策的なこと(笑)。あまりにもシンプルな名前をつけると検索でも埋もれてしまうじゃないですか。だから、検索に引っかかりやすい名前さえあれば、あとはなんでもいいんじゃないかなって。

──Ogawa & Tokoroとしてのコンセプトとかは最初に決めていたんですか?

小川 Numero Groupとかの再発音源みたいな音質のものを作る、みたいなことは頭にありましたね。

野老 アナログオンリーっていうことですかね。パソコン無し、DAW無し、みたいな。縛りを作る、みたいなことがいつもテーマですね。Ableton使えばひとりで本当になんでもできるけど、逆に仲間とやるときはアナログ機材同士でセッションしたほうがインタラクティブに作業が進むし、楽しいかなと思ったんです。

──そこでの小川くんの役割は?

小川 野老はおもしろいと思ったアイデアをどんどん試していくタイプなので、僕はそれをいい軌道に乗せたり、脱線しそうになるところがあれば直したり。

野老 僕がパズルのピースを作って、小川さんにはめてもらうみたいな感じです。Visible Cloaksのインタビューを読んだときに、あの人たちもどちらかが素材を作って片方がまとめてくみたいな感じだったので。

──野老くんは曲の断片だけでも5、600曲あるそうですが。

野老 本当に断片ですけどね。インターネットからドラムマシーンのサンプルをダウンロードしたり、自分でギターを録ったり、Abletonのエフェクトでいじったものだったり、Max for live や pure data のような音楽系のコーディングで実験してみたり。1ループ、2ループくらいのがほとんどで、かたちにはなってない。でも、ふたりで制作に入るときは、僕が事前に持っていったアイデアというより、その場でイチから作りますね。

小川 素材としてループはあるけど、そのうえでふたりでパッと試したアイデアを一緒に改良していったり。

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──いま話してもらったのは、制作環境や作業の話ですけど、オリエンタルとかアンビエントみたいな世界観の下敷きもOgawa & Tokoroにはあると感じてるんですが、それは両者に共通してることですか?

野老 組んだ頃は、GIGI MASINとかめちゃいいなと思って聴いてた時期でしたね。ニューエイジ系にもハマってて、古い音源も掘っていったら結構素晴らしいアーティストがいっぱいいて、現行でもそういうサウンドをやってる人がいるんだと気がついたり。でも、結局作るときはそんなに意識してないんですよ。

小川 野老が教えてくれる音楽があって、僕はそこから興味が広がっていったほうなんです。Ogawa & Tokoroを始めたタイミングが、まさにその時期だったんで、知ったものをすぐに実践できたという感じです。

──自分たちのカセットレーベル名を〈Oriental Tapes〉にしてるのは?

野老 レーベルもニューエイジ・レーベルみたいにするつもりだったんですよ。思った以上にニューエイジやってる人が周りにいなかったから、レーベルとしては違う感じになりましたけど(笑)

──まあ、とにかくレーベルを作って、自分たちの作品を出そうと。

野老 勢いで(笑)

小川 とにかくなにかを残そうとしてましたね。デザインは完全に野老任せでした。

野老 でも、「こうやりたい」というのが明確にあったわけじゃなく、なりゆきでしたね。カセット作ろうとなってなにが要るかとなったら音楽が要る。そのあとなにが要るか、ジャケットが要る。人に頼むお金はないから自分たちで作る。カセットの生産の発注にはどうしたってお金が要るからいくらかかるか調べて、お互いで半分ずつ出し合って。完成品がカナダから届いて、現物が「あるやん。できたやん」ってなって、できた(笑)

──で、売らないと、と。

野老 それは届いてから気付きました(笑)。でも最初はとにかくそれくらい手探りで、音源をどうやって知ってもらったらいいかということを考えだして。メールをいろんな人に送りまくったほうがいい、みたいなことを言われて、海外のキュレーターに連絡取ったり。

小川 サークルとか知り合いのなかだけで消費されるんじゃなく、いろんな人が聴くことできないのかなと考えてましたね。

野老 プレスリリースっていうものがあって、それを作ってお店に紹介するということを知って。自分たちでプレスリリースも作ったんですよ。置いてもらえそうなレコード屋さんをリストアップしてメール送ったら、何軒か返事をくれたところがあって。「マジか! 返信くれるやん」って。

──そうやって送ったカセットの一本がカクバリズムとの縁を作ったという。すごい偶然だけど。だって、ライヴもこの時点ではまだやってなかったんですよね?

小川 19年の春にカセットを出してから「やらないの?」と言われてはいたんですけど、ライヴハウスみたいなところでは無理だなと思ってました。でもカフェみたいな小さいスペースならできるかなと思って夏に初めてやってみたら、それからちょいちょい声をかけてもらうようになりました。でも、どうやってやったらいいのか、すごい迷いながらいつもやってる感じです。

野老 セッティングも毎回全部違います。〈カクバリズムの文化祭〉でやったセッティングがいままででいちばんちゃんと組んだ。

小川 いろいろ機材も持ち込んで、全部をシーケンサーで動かして、みたいなのは〈文化祭〉が初めてでした。でも毎回初めて、みたいなシステムなんですけど。

野老 やっぱりある程度演奏する側もリスクがないと見る側もおもしろくないかなと思うんですよ。パソコンで音源流して原曲通りにやるのもいいんですけど、「あ、そうなるの?」みたいなことがあったほうが楽しいなと。

小川 やる側と見る側のスリルがうまく両立できるところをいま探してる途中です。

──音源とライヴは別物という考え方もあるけど。

小川 僕は結構そこに迷いがあるんですよね。まあ、ライヴも去年の春、夏に一本ずつ、秋に2本、冬に2本しかやってなくて、そしてコロナでなにもできなくなりましたから。その空白があって、いきなりWWWでの〈文化祭〉だったんでめちゃくちゃ緊張しました。

野老 ライヴは難しいですね。僕みたいにミュージシャン100%じゃない人が観客を楽しませるエンターティンメント性を出すとしたら、やっぱりインタラクティブな部分がおもしろいんだろうなと思ってます。お客さんと一緒に反応しあって見せる即興性みたいなことのほうかな。

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──7インチの両面曲「Shinmaiko」「Bayou」はバレアリック/アンビエント寄りで、bandcampで聴ける2曲「Tell me what you’re feeling」「The Detective」はダンスミュージック。ずいぶん性格が違うじゃないですか。そこの両面性は最初から?

小川 「Shinmaiko」に関しては19年の夏にもうできあがっていた曲なんです。最初のカセットを録り終えて、次になにか作ってみようと思っていろいろやっていたうちの一曲でした。そのタイミングでカクバリズムからお話をいただいて、シングルは「Shinmaiko」で行くという方向になっていったんです。

野老 ふたりで作りはじめると、いきなりドラムセッションはじめるよりも、とりあえずファンキーなのをやろうって感じになるんで。

小川 「Shinmaiko」は僕らのなかでもバレアリックかつリズムボックスがポコポコいう、みたいな曲も好きで作るという方向。それが一方にあって、僕らがいちばん得意とするファンキーな部分は配信のほうの2曲。そういう分け方はなんとなくありましたね。

──「Shinmaiko」については、スティーヴ・ハイエットの影響も大きかったというインタビューも読みましたけど。

野老 作ったときはリリースすることも考えてなかったんで、スティーヴ・ハイエットのアルバムを聴いたあとの「いいアルバムだったな」って気持ちのまま作ってました(笑)。

──影響受けたというよりは、もっと反射神経的な?

野老 そうですね。本当にその直後に作ったし。

──いまは、みんな影響や参照はしても、取り込んで消化してひねって組み込む、みたいな工程を経てない音楽が普通だから、「Shinmaiko」みたいな反射神経的な反応でできた曲が、逆にすごくストレートでおもしろかったんですよ。かっこよかったからやった、みたいな。「若いのにこんなことまで知ってる」的な感性とは違う、本当の意味で若くていまな感じがあるというか。

小川 僕は渋谷系ってそういう面があったと思うんですよ。音楽を聴くと、聴いてる人もその先をたどっていって「あ、もっとこういうのがあるんだ」って知ることができる。聴くほうもやるほうも、どんどん好きな音楽の世界が広がっていくような感覚がある。

──曲の完成をジャッジするのはふたりで?

野老 セッションをやって、作って、その場で終わりです。僕があとでいじったり、とかもない。基本的にはそのままです。カクバリズムから出すってなったときに、初めてあとからいじりましたけど(笑)

小川 ポストプロダクションみたいなことをしたのは、今回のリリースが初めてでした。

野老 僕がポストプロダクションしてしまうと小川さんと作った作品から遠ざかっちゃうんで、僕はあんまりやりたくないです。ふたりでスタジオ入って、作って、スタジオを出たらもうそれで終わりというのが理想ではあるし、それがいちばん純度が高いとは思うんですが、録音芸術としてはクオリティは低いのかもしれない(笑)

小川 今回のリリースで、ポストプロダクション的な過程も知ったし、そのうえで次によりクオリティが高く、かつ純度の高いものが作れたら一個レベルアップしたことになるんじゃないかな、というふうに僕は考えてますけど。

──たとえば、その曲に対してベストの環境やシステムを事前に決めてレコーディングしてゆくとか?

野老 でも、事前にシステムを組みすぎちゃうと固まった曲しかできなくなっちゃったのでそこも難しいんですけどね。システムからズレたものをやるのが逆に大変になっちゃう。なんか新しいものを生み出す余裕があるモジュラー性も持ちつつ、最終的にいいものを作れる流れがあるのがベストかな。だから最近はパッチベイがめちゃくちゃ便利ですね。モジュラーシンセ的なやつもすごい理想です。

──演奏としての肉体性にわりとこだわっているのもおもしろいですね。

野老 音楽を全然知らない人が「この人なにやってるんだろ?」みたいな感じで見ても「よくわかんないけど、ノブを回してるとフィルターが閉じたり開いたりして音が変わってるぞ」みたいにわかるじゃないですか。そういうのができたらおもしろいですよね。

──ポピュラー・ミュージック、ポップスとして自分たちの音楽を意識したりもしてますか?

小川 そこは、わりと僕のほうが考えてるかもしれないです。(野老は)あふれ出るアイデアで突き進んでいくので、そこをなんとか自分たちもおもしろく、もうちょっとライトに聴く人も楽しむことができたらベストかなと。そういうことを野老に話すときも多いです。

野老 僕はポップスとかよくわからないんですけど、ミュージシャンじゃない人が肉体的とかフィーリングで感じられるものは大事かなと思ってます。

──でも、すんなりまとまるんじゃなくて、あるかたちからは逸脱していきたいんだなということは共通してるかも、とすごく思いました。

小川 そうですね。そのポイントはふたりとも共通してるんですけど、バランスをどういくか、みたいなのは作るときに考えます。

野老 わりと音楽が好きな人とあんまり音楽を知らないけどなんとなく好きな人の幅って意外とあるじゃないですか。あんまり音楽を知らない人の聴き方ってすごく美しいものがある。コードとか転調とかじゃなくて、「ここはホワーンとした感じ」みたいな聴き方。そういう人たちでもわかるノリのほうを大事にしてるかな。

──自分たちの周りやよく聴いてるミュージシャンとかで、似たような感覚を持ってる存在はいますか?

野老 ラリー・ハードは大好きですね。LAビート周辺の人たちのインタビューで言ってることとか、やってることには影響受けてますし。「音楽にはメッセージ性があるべきだ」みたいな発言を断片として意識はしてます。あとは、70年代とか80年代とかのスタジオ・ミュージシャンたちのクレジットをDiscogsとかで探したりもしてますね。ラルフ・マクドナルドとか、めちゃくちゃかっこいいなって思ったり。昨日のライヴでもラルフ・マクドナルド聴きすぎてて、そんな感じになっちゃったところがありました(笑)

小川 僕は、ミツメとかトリプルファイヤーが好きで、あの人たちは自分たちの好きな音楽を作品を通じていろいろ教えてくれる人たちなんです。ミュージシャンとしてはそれは当たり前かもしれないんですけど、聴いてる人たちにもそのおもしろさが伝わる感じの活動が見えるような人には憧れを感じます。自分もいろいろ聴いて、いろいろ作って、おもしろい音楽が伝わるようなことができたらいいんじゃないかなと思います。

今後の活動にも期待大な2人の貴重なライブ、レコ発パーティーは明日開催!
是非ご来場下さい!

KAKUBARHYTHM x Oriental Tapes presents
Ogawa & Tokoro “Shinmaiko” & nutsman “sumi kawa” Release Party

2020.12.27.SUN
@7th floor
OPEN 18:00
TICKET ¥3000

LIVE:
Ogawa & Tokoro
VIDEOTAPEMUSIC

DJ:
nutsman

TICKET RESERVE / INFO
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7th floor チケット予約フォーム
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http://7th-floor.net/

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