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Jin Ono 2nd Album 「Someday」レビュー(texy by 高橋芳朗)

2025.12.29

Jin Onoの2nd Album『Someday』の高橋芳朗さんによるレビューテキストが公開となりました。

Streaming Link: https://kakubarhythm.lnk.to/someday

Review of Someday(text by 高橋芳朗)

今年、6月10日。スライ・ストーンの訃報が飛び込んできたその夜は、彼の『There’s a Riot Goin’ On』と『Fresh』にひたすら耽溺していた。そして、そのまま自作のプレイリストを流してリズムボックス「Maestro Rhythm King」の朴訥な音色に身を委ね、偉大なイノヴェーターの死を悼んだ。

 マーヴィン・ゲイ「Where Are We Going?」、スティーヴィー・ワンダー「You Haven’t Done Nothin’」、グラハム・セントラル・ステーション「Tell Me What It Is」、D.J.ロジャース「Listen to the Message」、ティミー・トーマス「You’re the Song I’ve Always Want to Sing、リトル・ビーヴァー「Party Down」、シュギー・オーティス「Aht Uh Mi Hed」、ボビー・ウーマック「What’s Your World」。さらにそこからフリートウッド・マック「Forever」、J.J.ケイル「Crazy Mama」、マックス・ロメオ「Tan and See」を経て坂本慎太郎「それは違法でした」に辿り着いたとき、このプレイリストに昨年誕生した新たなクラシックが加わっていたことを思い出すーーJin Onoの「I Want You Tonight」だ。

 その「I Want You Tonight」で幕を開けるJin Onoのファーストアルバム『The Light』は、Maestro Rhythm Kingのドライなグルーヴとフェンダーローズの淡い煌めきに彩られた紛れもない傑作だった。ソウルミュージックを軸に、ファンク、シティポップ、AORの記憶を溶かし込みながら過去と現在を滑らかにつなぐ音像は、アナログ機材の温かみと現代的なフィーリングがもたらす洗練された都市的ムードも相まって、他では決して得られない独自の世界観を標榜していた。彼はざらついたビートとメロウなコード、どこか影を帯びたメロディを重ね合わせることによって、現代を生きる者の孤独や逡巡、言葉にならない感情をそっとすくい上げていく。タイトルの『The Light』が示唆するように、夜明け前の街に差し込む微かな光にも似たJin Onoの音楽はノスタルジーと現実のあわいに立って静かに、しかし確かな存在感を放っていた。

 そんなMaestro Rhythm Kingの新たな担い手であるJin Onoが、ニューアルバム『Someday』を携えて再び動き出す。スライ・ストーンが逝去した2025年、あえてこのタイミングに新作を用意してくるスリリングな展開に彼が背負った業を感じずにはいられないが、先行シングル「Last Call」ではまさにスライ&ザ・ファミリー・ストーン「Luv N’ Haight」~ディアンジェロ「Sugah Daddy」の流れを汲むクールなファンクで新機軸を打ち出していた。しかも、「Last Call」の7インチシングルではカップリングで意表を突くアース・ウィンド&ファイアー「I Think About Lovin’ You」のカバーを披露。その滴るようなメロウネスと飾り気のない歌心から垣間見えるJin Onoのコンディションの充実ぶりに、アルバムへの期待は否応なく高まる。

 『The Light』での衝撃から約2年。このあいだ、Jin Onoのコンポーザーとしての力量はyomm「ミラコー feat. Layone」(作編曲)やNao「ゼロ地点から歌わせて」(編曲)などの参加作品を通じて改めて証明されてきたが、リードトラックの「Last Call」からもうかがえるように今回の『Someday』ではより多彩なソングライティングの手腕が堪能できる。

 重心の低いバッキングのもと、ヴォコーダーを駆使したヴォーカルがたゆたうタイトなミッドテンポ「Life Goes On」。ミニー・リパートンの官能性をいまに甦らせたメランコリックなスロー「I don’t wanna (Interlude)」~「愛の罠 – Love Affair」。スティーヴィー・ワンダー調のピースフルな歌世界をネオソウル的なリフを交えて描く「Someday」。ドリーミーな揺らぎと共に聴き手を陶酔境へと導く極上のメロウソウル「白のポンティアック – My Pontiac」。リズムボックスの無機質なビートが生み出す緊張感を見事に引き出した幻想的なインストゥルメンタル「A New Sunrise」。アメリカ南部由来のレイドバックしたソウルフィーリングが薫る「Sugar Toast & Black Coffee」ーーそして、ハイライトはアルバムの最後に訪れる。第2弾先行シングルの「Snow – あの雪の日」。マーヴィン・ゲイ『What’s Going On』を想起させるめくるめくサウンドスケープの神秘的な美しさは、まちがいなくJin Onoの新境地を拓く現時点での彼のベストワークだろう。

 それにしてもーーMaestro Rhythm Kingの「鳴り」を都市生活者の哀愁と憂鬱に寄り添う現代のアーバンブルースとして再提示したJin Onoの音楽と新作のタイトル『Someday』は実に相性がいい。希望と諦念が同居する言葉「someday」(いつか)は、歌や物語のなかでは未来ではなく過去として響くことが多い。叶わなかった夢、戻れなかった関係、選ばれなかった人生。その残響としての「someday」は時間を遡るように胸に沁みてくるが、これはJin Onoの歌から立ち上がってくる心象風景そのものだろう。手を伸ばせば触れそうで、だが決してつかむことのできない場所に浮かぶ「someday」の美しさと残酷さ。彼の作り出す音楽には、そんなほろ苦さが通奏低音として鳴り続けているのだ。

リズムボックスの素朴で温もりあるグルーヴ、エレクトリック・ピアノの淡く歪んだ煌びやかな響き。その音に魅了されるように旅を続ける渡り鳥《Jin Ono》。

2024年春、1stアルバム『The Light』をカクバリズムよりリリースして以降、楽曲提供やプロデュースなど活動の幅を広げてきた彼が、ついに待望の2ndアルバム『Someday』を12/24(水)に発表。

前作『The Light』から続く独自のスタイルはそのままに、先行第1弾シングル「Last Call ラスト・コール」では新たにファンキーな側面を提示。12/10(水)配信開始となる続く第2弾先行シングル「Snow – あの雪の日」は、季節の空気と静かな情景が柔らかく溶け合う、今の時期にしっくり寄り添う温もりと確かなソウルを内包した1曲。

1stアルバム以降の制作活動の影響もあってか、ソングライティングはさらに研ぎ澄まされ、全9曲がより奥行きのある世界観を描き出している。Jin Ono という人物については多くが語られていないものの、そのサウンドとリリックからは確かな気配が伝わってくる。聴くたびに新たな景色が広がる、Jin Onoの現在地を示す一枚がここに完成しました。是非お聴きください🟧🟨🟦

《RELEASE INFO》

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Jin Ono ‘Someday’

〈Streaming〉
2025.12.24 Release
KAKU-243
Label: KAKUBARHYTHM
Streaming Link: https://kakubarhythm.lnk.to/someday

≪ Tracklist ≫
1. Last Call
2. Life Goes On
3. I don’t wanna (Interlude)
4. 愛の罠 – Love Affair
5. Someday
6. 白のポンティアック – My Pontiac
7. A New Sunrise
8. Sugar Toast & Black Coffee
9. Snow – あの雪の日

All Songs Written, Arranged, Recorded & Produced by Jin Ono

Musician Credits:
Vocals, Rhodes Piano, ARP Solina String Ensemble, Vocoder, Synth, Drums, Percussions and Maestro Rhythm King MKII played by Jin Ono on All Songs

Except For:
🟧Bass by James Gonda on: Last Call, Life Goes On, I don’t wanna (Interlude), Love Affair, Someday, My Pontiac, Sugar Toast & Black Coffee, Snow
🟧Guitar by Yoji Jackson on: Last Call, I don’t wanna (Interlude), Love Affair, Sugar Toast & Black Coffee
🟧Drums by Kushina Kaunis on: My Pontiac

🟨Mixed by Ben Tapes (studio MSR)
🟨Mastered by Kentaro Kimura (KIMKEN STUDIO)

🟦Illustrations by Tomoyuki Yanagi
🟦Design Mechanics by Stsk Ltd.

✨A&R Rui Fujita (KAKUBARHYTHM)

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【PROFILE】

Jin Ono

リズムボックスの素朴で温もりあるグルーヴ、エレクトリック・ピアノの淡く歪んだ煌びやかな響きに魅了されし渡り鳥《Jin Ono》。2024年春1stアルバム『The Light』をカクバリズムよりリリース後、他アーティストへの楽曲提供、プロデュースなど活躍の場を広げていく中、2025年冬、待望の2ndアルバム『Someday』をリリース。

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