12.21 INTERVIEW UPDATE

INFORMATION

cero / Orphans / 夜去

DDCK-9004 ¥1,750 + 税
CD + DVD

CD
01. Orphans
02. 夜去
03. 1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)

DVD
「cero ライブ映像集 ''Scrapper's Delight''」

01. cloud nine 02. ターミナル 03. Contemporary Tokyo Cruise
04. 小旅行 05. Yellow Magus 06. さん!

Directed by 大関泰幸

MUSIC VIDEO

初回特典

タワーレコード全店

『Orphans / 夜去_購入特典 Orphans / 夜去 ロゴバッジ(38mm)

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(『WORLD RECORD』『My Lost City』『Yellow Magus』をご購入のお客様)

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Orphansロゴ靴下
セット価格: ¥2900(税込)

INTERVIEW

2014.12.20 UPDATE! 後編が公開になりました!

前編

ceroの「Orphans」は名曲である。ただ、意外な楽曲でもある。前作にあたる『Yellow Magus』は、ブラック・ミュージックに対する関心が高まり、リズム隊を変えてまで制作に挑んだ、バンドの新たなタームの始まりを告げる野心作だった。歌詞にしても「『My Lost City』でつくった船をどう処理しようか、あのアルバムをどう終わらせようか考えながらつくった」というかなりハイ・コンテクストなものだ。それに比べて、一見、「Orphans」は甘酸っぱいムードの中、ティーンエイジャーの日常が歌われるオーソドックスな楽曲として成り立っている。しかし、 そのメロウネスは、ダンサブルな「Yellow Magus」とはまた別の方向からブラック・ミュージックにアプローチしたとも言えるし、「(別の世界では)2人は姉弟だったのかもね」「あぁ 神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて/あぁ わたしたちは ここに いるのだろう」というフックでは、彼らがこだわってきたパラレル・ワールドというテーマが、より普遍性を持って表現されているようにも思える。そう考えると、「Orphans」はじっくりと浸ることが出来る名曲でもあるが、そこから様々な文脈を読み取ることも出来そうだ。では、cero自身は同曲も収録されたニュー・シングル『Orphans / 夜去』を如何に捉えているのか。高城晶平、荒内佑、橋本翼に話を訊いた。

──『Orphans/夜去』は、2013年12月リリースの『Yellow Magus』以来、1年振りのシングルになります。順を追って訊いてくと、ceroは今年の春頃からライヴで次々と新曲を発表していったよね。前回のオフィシャル・インタヴュー(http://www.kakubarhythm.com/special/yellowmagus/)では、バンドが新たなモードに入りつつあると話してくれたけど、新曲群もその延長にあると考えていいのかな?

高城 基本的にはそうですね。今年に入ってから新曲をつくるための合宿をやっていたんです。バンドってセカンド・アルバムくらいまでは、デビュー前につくった楽曲のストックを消化する形でリリースをしていきますよね。ceroも『WORLD RECORD』『My Lost City』まではそういった状態で、あそこに入っているのは、ストック+αみたいな感じでした。ただ、そろそろ、ストックも使い果たして、書き下ろしで作品をつくるというモードになったんですね。そのために、皆で泊まり込んだ。

――これまでのceroは、まずは作曲者がひとりでデモをつくり込むという制作方法だったと思うけど、今回は、そうではなく、セッションをしながらつくろうとしたということ?

高城 曲によりけりですけどね。

荒内 合宿に持っていく段階で結構つくり込んでいたものもあったかな。

高城 そして、それをタネとして、現地でさらに膨らまそうという感じでした。結局、合宿は計3回やって、1回毎に新曲が3曲づつくらい増えていって。

――最初に出来た曲は?

荒内 まず、「1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)」をカヴァーすることで、これからの自分たちのモードを調整していこうっていう話になったんです。あの曲は、今のceroとこれからのceroを考える上でぴったりであるように思えて。だから、練習曲、課題曲みたいな感じでやってみようと。

――「1つの魔法」は小沢健二のアルバム『Eclectic』(02年)収録曲だけど、前回のインタヴューでも、同作を「日本のR&Bの歴史における“点”」「突然、現代的なR&Bに傾倒して、ただ、何処か歪で、その予兆もなかったし、後継者もいない」「『Yellow Magus』以降のceroは、オザケンの『Eclectic』っていうワン・ジャンルを目指すのかもしれない」と言っていたよね。ちなみに、『Eclectic』の中から「1つの魔法」を選んだ理由は?

高城 オレが提案したんだっけ?

荒内 そう、高城君がやろうって言った。

高城 今年の渋谷<AX>のワンマン(1月25日)で配った、ラジオみたいにそれぞれが好きな曲を掛け合うCD-R(『セロのラジオ~Contemporary Exotica Radio obsession~』)をつくった時も、オレは「1つの魔法」を選曲したんですけど、曲調もそうですし、“魔法”について歌っているところなんかも、“魔術”をテーマした「Yellow Magus」と通じる部分があるので、ちょうどいいから自分たちなりにアレンジしてみようということになったんだと思います。

――そして、『Orphans/夜去』に収録されることになったceroヴァージョンは、アレンジやコードも変わって、原曲とはかなり雰囲気が違っているよね。

高城 うん、泥臭い。さっき話題に出た前回のインタヴューでも言ったように、『Eclectic』って孤高の作品で、エロティックであると同時に妙に無機質な感じがありますけど、それを人肌な感じに寄せたっていうか、もう少し汚しを入れてみたんです。あのアルバムをそういう風に解釈することって誰もやっていないないと思いますし、意味があることなんじゃないかなと。

荒内 結果として、もし、90年代に「1つの魔法」がつくられていたら……って感じになったと思うんですよ。オザケンのその前のアルバム『LIFE』(94年)はスライ&ザ・ファミリーストーンみたいな60年代、70年代のソウルに影響を受けていたわけですけど、それと、『Eclectic』を接続するというか。孤高だったあのアルバムを、ブラック・ミュージックの歴史に改めて位置付けたような面白さがあると自負しています。

――なるほど。ちなみに、「1つの魔法」で方向性を定めたあと、新曲はどういう順番で出来ていったんですか?

荒内 最初の合宿で出来たのが「Elephant Ghost」と「Roji」。次にやった夏の合宿で出来たのが「Orphans」、「ticktack」、「Summer Soul」。そして、最後の合宿で出来たのが「夜去」かな。

――個人的には、5月18日の熊本<NAVARO>公演で「Elephant Ghost」を聴いたのが、シングル『Yellow Magus』以降の新曲の初体験だったけど、複雑なアフロ・ビートで、『Yellow Magus』からさらにドープな方向に行ったな、という印象があった。あれは荒内くんの曲だよね?

荒内 そうです。「Elephant Ghost」は、『Yellow Magus』を経てバンドのモードがソウル、ファンク、R&Bというような感じになっていって、ただ、何となく次につくるアルバムが普通なものになってしまったらちょっと怖いなと思い、それで、ある意味、宣戦布告というか、カマしてやろうという気持でもって、まずはアフロ・ビートの新曲をつくろうと。

高城 最初は、あらぴー(荒内)とみっちゃん(光永渉/ドラム)とでスタジオに入ったんだよね?

荒内 うん。まずはドラム・パターンから組み立てた。あと、アフロ・ビートをやろうと考えたのは、そこには「1つの魔法」と同じように、これまで興味を持っていたことと、いま興味を持っていることとを繋ぐようなところがあると思って。例えば『My Lost City』で使ったペンタトニックでエキゾチックなコーラスやリフレインはアフロ・ビートにもあるし、あとは、リズムに対する執着というか。だから、『Yellow Magus』の前後を繋ぐものとして機能するんじゃないかと。

――かなりコンセプチュアルにつくった楽曲なんだね。

荒内 かなりコンセプチュアルですね。しかも、いわゆるオーセンティックのアフロ・ビートではなくて、ジェイ・ディラ的な要素も取り込んでいますし、都市的というか、この曲に関しては、むしろ、あまり泥臭い感じにならないようにしました。コードも動くし、色々と工夫しています。

高城 ビートは凄くホットだけど、そこに乗るエレピはクールな感じだよね。

――で、『Yellow Magus』、「Elephant Ghost」と来た時は、「ceroは『Jazz The New Chapter』(前回のインタヴューでよく聴いているアーティストとして名前を挙げていたロバート・グラスパーに代表される、ヒップホップ以降のジャズ新世代をまとめた書籍 http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=1639529)が提示したような方向に進んでいくのかな?」と思ったんだけど……。

荒内 ああ、確かにそう思いますよね。

――実際、その後、「Elephant Ghost」はライヴでもやり込んでいたわけで、「あれが次のシングルになるんだろう」と想像していたら、もう少し、普通に“良い曲”である「Orphans」が選ばれたというのは「なるほど、こう来たか」という感じでもあり。ちなみに、「Orphans」は橋本くんがceroで初めて作曲を手掛けた歌ものです。前回のインタヴューでは、「橋本くんはジオラマシーンではソングライターをやっているわけだけど、ceroではそこまで楽曲をつくるつもりはない?」という質問に対して、「つくれる気がしない……」と弱々しいことを言っていたよね(笑)。それが、今回、つくることになった経緯は?

橋本 そういう空気だったんです(笑)。

高城 「お前、流石にもうそろろそやれや」みたいな?(笑)

橋本 それで、ストックの中から出せるものはこれかなぁって。

高城 「うるせえから出しとこうか」と(笑)

橋本 いや、まぁ、これしかなかったんだけど……。

――ceroに提供するしないは別として、最近、新曲はつくっていたの?

橋本 そうですね。ジオラマのレパートリーになるだろう曲を。ただ、「Orphans」は5年ぐらい前に皆に聴かせたけど、結局、完成しなかった曲なんですよ。

高城 えー、そうなの?!

荒内 ああ、2曲送ってくれた時の、片方のやつだよね?

橋本 そうそう。よく覚えてるね。

高城 ああ、あったあった。

橋本 あれとまるっきり一緒ではないんだけど、結構、古い曲ではあるんです。

高城 まぁ、時が熟したんだね。

橋本 うん。ceroの方向性が多様になってきたから、今、やるのがちょうどいいんじゃないかなと思う。

高城 だから、「Orphans」が揺り戻してくれたというか、ちょうど良いバランスにしてくれたよね。ceroがドープな方向へ進んでいたところへ、はしもっちゃん(橋本)が絶妙なタイミングであの曲を出してきて、前のモードを思い出させてくれた。

――ただ、「Orphans」は懐かしいようで、これまで、ceroがやってこなかったタイプの楽曲でもあるよね。

橋本 そうだと思います。つくっている時も、「これはceroには合わないかな?」と思っていたので。

荒内 整合性が取れた曲だよね。ceroって、結構、無茶な展開の曲もあるけど。

高城 確かに、グルーヴもエモーションもキープオンしたまま最後まで行く気持よさがあるよね。

荒内 普通と言えば普通なんだけど、これまでそういう曲ってあまりなかったから。

――橋本くんは「Orphans」を曲だけでストックしていたの?

橋本 ですね。

高城 デモもメロディは「ラララ♪」で入っていたよね。

――高城くんと荒内くんの第一印象は? 僕が初めて聴いたのは、7月に代官山<UNIT>でやったSIMI LABとのツーマンの時だったと思うけど、関係者席はざわめいていたよ。「ヤバい!」って。

高城 うん、オレも凄くキャッチーだと思った。

荒内 それにスタンダードでオーソドックスな良さがあるなって。

橋本 デモを聴いてもらったら好評だったんで、すぐに練習に入ったんだよね。高城くんには「ラララ♪」のまま歌ってもらって。

高城 そして、その時、自分の歌詞のストックでハマりそうなものがあったなと思って。それで、夏の合宿は都内でやっていましたから、一旦、家に帰って、ストックをはしもっちゃんの曲に合わせて調整して、次の日には歌詞がある状態にしたんです。その段階では、仮タイトルは安達哲のマンガから取って、「バカ姉弟(きょうだい)」って付けてました。

荒内 「ラララ♪」で歌うのと、歌詞があるのとではこんなに印象が違うんだってびっくりしたな。

――高城くんの歌詞はストックから持ってきたということだけど、それは、もともと、別の曲のために書いた歌詞だったの?

高城 いや、歌詞だけがあったんです。『新しい音楽のことば――13人の音楽家が語る作詞術と歌詞論』(作詞術/歌詞観についてのインタヴュー集 http://books.spaceshower.net/books/isbn-907435424)のインタヴューでも喋りましたけど、Ahh! Folly Jetの「ハッピーバースデー」(00年のEP『Abandoned Songs From The Limbo』収録)っていう曲の、菊地成孔さんが書いた歌詞に凄く影響を受けて、読んでも面白いっていうか、もちろん、歌に乗っても面白いけど、文章として取り出してみても面白い、強度がある歌詞って良いなぁって思っていたんですね。それで、何と言うか、ふわふわしていない、具体性に落とし込んだ歌詞をつくってみたいなぁって考えていたものの、そういうものって逆に言うと歌に乗せるのが難しいので、とりあえず、まずは歌詞だけ書いてみたんです。そして、はしもっちゃんのデモを聴いた時に、このムードだったら乗りそうだなという予感がして、実際、調整してみたら上手い具合に乗せられたので、採用したという流れでした。

――「Orphans」で描かれている物語は、橋本くんのメロディにインスパイアされたわけではなく、もともとあったものだったんだ?

高城 そうですね。シングルの『Yellow Magus』に入っている、「Ship Scrapper」や「我が名はスカラベ」で、ト書きに重点をおいた歌詞というか、「~で楽しい」とか「~で悲しい」みたいに感情を説明するのではなくて、状況設定や舞台設定が雰囲気を醸し出していくような書き方を試して面白かったので、それをもうちょっと発展させて、ドラマがつくれたらいいいなぁと思ったのもありました。

――今回、歌詞に関して新機軸だなと思ったのは、これまで、高城くんが得意としていたファンタジー色は薄まって、いわゆる青春物語としても聴けるよね。舞台設定も現代的で日常的だし。

高城 そうなんですよね。確かに今まで書いてきたような明確なファンタジーではない。ただ、「終日 霧雨の薄明かりが包む 白夜の火曜」という歌い出しには、普通の街のことを歌っているようで、ひょっとしたらここもまたパラレル・ワールドかもしれないと予感させるような雰囲気があるんじゃないかな。

――資料に高城くんが寄稿した解説には「タイトル“Orphans”は『孤児』を意味していて、“Contemporary Tokyo Cruise”(引用者注:『My Lost City』収録曲、以下「CTC」)でみなしごになった姉弟がこの世界に転生し、普通の高校生として再び出会う、というようなイメージをもって付けています」とあったけど……。

高城 『My Lost City』はパラレル・ワールドが舞台で、最後の「わたしのすがた」で目が覚めるものの、目の前の現実に妙な違和感を感じてしまうという話でしたけど、「Orphans」はその続きと言えるかもしれないですし、現実と非現実の境目を歌っているという意味では『WORLD RECORD』と近いところもあるのかもしれないですし、あるいは、さっき引用した歌い出しは、『My Lost City』のタワーレコードの特典だった「あとがきにかえて」の「このまま朝がこずに 夜もまたやってこない永遠の夕暮れから 言葉を探し続けているの」っていう歌詞と似た感覚を持っているとも思いますし、それは「夜去」にも繋がっていて……要するに、今回は現実世界を舞台にしているようで、その現実世界だって別の世界の誰かが夢想した世界かもしれないっていう……何かパラノってますよね(笑)。とにかく、そういう、うやむやでちょっとグラグラした東京を描きたかったんです。

――確かに、「休んだあの子は海みて泣いてた」というラインには、まるで、世界の裂け目からもうひとつの世界の記憶が滲み出てくるような感覚があるよね。

高城 「Orphans」だけじゃなくて、「Elephant Ghost」にしても、合宿で形にした曲は、全部が連なってひとつのものになるようなつくり方をしているんですね。「Orphans」と「夜去」はそこから摘まみ上げて、シングル単位でも機能するように構成したわけですが、やはり、次に出るアルバムのピースのひとつでもあるので、歌詞に別の凸や凹は用意していて。アルバム単位で聴いて初めて明らかになるような部分もあるんじゃないかな。

――前回のインタヴューで、「我が名はスカラベ」や「ship scrapper」の歌詞はネットで見つけたニュースを基にしていると言っていたから、今回も現実とのリンクを考えてしまって。例えば、「“CTC”でみなしごになった姉弟がこの世界に転生し……」というところから、また、東日本大震災の津波のことを連想してしまったり。

荒内 あぁ、そうか……。

高城 そうですよね。これは今ふと思ったことですけど、もしかしたら、震災で行方不明になった方たちが不思議な転生を遂げているのかもしれないし。

――あるいは、韓国のフェリー転覆事故のこととか。

高城 ただ、今回は何かモチーフがあったわけではなく、やはり、作家的にというか、いちから世界を構築するようなつくり方でしたね。

――そういえば、以前、あるエッセイにインスパイアされたという話もしていたけど。

高城 そうそう。

荒内 言ってたね。

橋本 何? その話。

高城 はしもっちゃんには言ってなかったっけ。オレが好きなブロガーの方が、ミニコミに寄稿した「夫のちんぽが入らない」っていうエッセイがあるのね。彼女は不思議なめぐり合わせで男性と結婚したんだけど、その夫のチンポがどうしても入らない。そして、一時期、自棄になって出会い系サイトで知り合ったひととやりまくって、どうでもいいやつのチンポは入るのに、運命的に出会った夫のチンポだけは入らないのはどういうこと? みたいに悩む話で、そのエッセイの締めが「私たちが本当は血の繋がった兄妹で、間違いを起こさないように神様が細工したとしか思えないのです」っていう文章なの。オレはそれにガッツーンときて、泣けて泣けて。そのブロガーの方に「僕はこれを歌にします!」っていう熱いDMを送ったりして。

――では、やはり、そのエッセイもモチーフのひとつではあるんだね。

高城 はい。「Orphans」に関してはニュースではなく、そういう、個人的体験を書いたエッセイがいちばんの源になっていますね。

――そういったところも含めて、今までの作詞の方法とは違うと。

高城 今までの方法を展開したというか、より強固にしてみたという感じです。ぼんやりと手癖でやってきたことを、もう少し意識的にやってみた。

――なるほど。あと、前回のインタヴューで橋本くんは「杞憂なのかもしれないですけど、こういうふうに、『My Lost City』から大胆に変わっていくことを、今までのファンはどう感じるんだろうとも思っていて。もちろん、それを乗り越えていく柔軟なひとがいる一方で、“やっぱり、前の方が好きだなぁ”と思うひともいるだろうし、僕もそういう感覚は少しあるので、その中間の立場に居たいな」と言っていたけど、その点、「Orphans」はオーソドックスな良さを持っている曲だから、冒険的な「Elephant Ghost」と対になっているところもあるし、まさに、「前の方が好きだなぁ」と思っているようなファンを今のceroに改めて惹き付けるような役割を果たすかもしれない。橋本くん自身は手応えを感じている?

橋本 ceroは変わり続けるバンドで、しかもペースが早いんで、僕が「Orphans」みたいなちょっと落ち着くものもつくっておいて、「その間に行ってくれ!」みたいな(笑)。

高城荒内 ははは!

――「オレはここでホームを守るから、お前らは最前線に進んでくれ!」みたいな?(笑)

橋本 うん、このシングルにはそういうところがあると思います。特に「Orphans」はceroを全く初めて知るひとでも聴きやすい曲だと思う。一方で、今回、特典DVDにライヴ映像も入っていて、「CTC」や「Yellow Magus」もやっているので、そこから興味が広がっていったらいいなって。

高城 「Orphans」と「夜去」はこれからつくるアルバムの中ではいちばん聴きやすい2曲になるかもしれないよね。

荒内 そういえば、はしもっちゃんが「Orphans」を出してきた合宿の前、「シングルっぽい曲、つくって。オレは無理だから」って言ったんだ。

高城 そもそも、合宿のテーマは「シングルっぽい曲をつくろう」っていうことだったからね。

荒内 オレ、そう言われると出来なくて。

――それで、「Elephant Ghost」みたいな曲を。

荒内 「Yellow Magus」とか、あだれい(あだち麗三郎)に提供した「ベルリンブルー」とかは「シングルっぽい曲」みたいなオーダーがなかったんで、何も考えずにつくれたんですけど、いざ、そう言われるとなかなか難しい。だから、今回は好きにやろうと思って。多分、はしもっちゃんが良い曲をつくってくれるだろうっていう安心感もあったし。

――では、「Orphans」が出来た瞬間、「これがシングルだ!」という感じがあった?

橋本 いや、実はそうでもなかったんです。

高城 最初は「アルバムの中にぽつんと入っていて、しみじみとするようなタイプの曲だ」って話してたよね。

荒内 『My Lost City』における「スマイル」的な。

高城 それが、段々と考えが変わっていったというか。

――結果として、ブラック・ミュージックのスウィートな側面をフィーチャーしたシングルになったと思います。

高城 そうなんです。「Orphans」だとスウィート過ぎるかな? っていうところを、「夜去」の渋さが抑えてくれて。「Orphans」の青さと、「夜去」の大人っぽさの対比も良いバランスだし、そこに、「1つの魔法」が入ることによって化学変化も起こって。3曲を通して聴くと、夕暮れから真夜中へと夜が深まっていくような感覚もある。この3曲の構成を考え付いた時、「これだったら面白いシングルになるかもしれない」と思ったんです。

(interview by 磯部涼)

…つづく

後編

ceroの『Orphans / 夜去』は彼らにとって1年振りのリリースである。ただ、ブランクを感じさせない作品でもある。前作にあたる『Yellow Magus』は、2012年10月に発表したセカンド・アルバム『My Lost City』に続くものだったので、つまり、ceroは2年間で2枚のシングルしかリリースしていないことになる。そういったスピードは、日本のポップ・マーケットにおいて決して早いと言えないし、あるいは、ネット・ミュージックの時代にそぐわないかもしれない。しかし、『My Lost City』は未だに新たなリスナーを産み続けているし、一方で、ライヴに足繁く通っているひとならば、そこで鳴らされているサウンドが、以前とがらっと変わり、彼らは今、2年前とはほとんど別のバンドになっていることを知っているはずだ。また、小さな恋の物語を歌いながら、同時に聖書のような世界観をも表現してしまう「Orphans」を聴いて、いわゆる“東京インディ”の代表として語られがちなceroが、ポップのベクトルでも、エクスペリメンタルのベクトルでも、飛躍しつつあることを感じ取るひともいるに違いない。果たして、『Orphans / 夜去』でその片鱗を窺える、彼らが水面下で制作しているサード・アルバムはどんなものになるのだろうか。引き続き、高城晶平、荒内佑、橋本翼に話を訊いた。

──「Orphans」とは両A面扱いになっている「夜去」についても訊いておきたいんですが、まず、タイトルの"夜去(ようさり)"って日常的にあまり使われない言葉だよね。万葉集に柿本人麻呂の「ぬばたまの 夜去来れば 巻向の 川音高しも 嵐かも 疾き」という歌があるけど。

高城 "夜去"は、夕方って意味で、宵の口――夜の始まりなのに、"夜が去る"と書くんですね。その、夜が深まっていくにつれて、同時に遠のいてもいくんだという表現の仕方は、時間をループで捉える日本/アジア独特の感覚に基づいているのかなと思うんですが、それが、「Orphans」で描いたような転生とも重ねられるなと思って、シングルに入れようと。

――西洋では時間の捉え方が直線的であるのに対して、東洋では円環的であるというのはよく言われることだよね。

高城 まさにそういう感じです。

荒内 下ネタだけど、セックスの時、日本では"イク"って言うのに対して、西洋では「I'm Coming」って言うよね。絶頂に達する際に自分の意識が何処かに去ると捉えるか、それとも、天国がやってくると捉えるか……そこには宗教観の違いが表れているのかな? ちなみに、ブラジルやアルゼンチンでは"イク"って言うらしいよ。

一同 へー!

高城 「夜去」は"イク"だ? エキゾチックやなぁ。

橋本 全部の国のパターンを知りたいね。

――そのために、世界ツアーを(笑)。

高城 セックスと言えば、「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」(ユージン・マクダニエルズがつくり、ロバータ・フラックが歌った74年のヒット・ソングで、ディアンジェロのカヴァーでも知られている)みたいなものってブラック・ミュージックのテーマのひとつじゃないですか。これまで、ceroがやってきた音楽の中でいちばん抜け落ちていたのがそういうセクシャルな部分で、いつかは着手したいと考えていたんです。でも、オレたちがストレートにセックスについて歌うことは出来ないだろうから、今回のシングルでは、自分たちなりのやり方で表現してみようと思ったところはありましたね。

――それが、「夫のちんぽが入らない」(前編参照)を経由して、別の世界で姉弟だったためにセックスに至れない2人の話になるというのは、かなり捻りが効いている。

高城 でも、「Orphans」は、あくまでも「姉弟だった余韻を感じながら一瞬の家出をする」っていうところだけを切り取った歌ですからね。2人はこのあと、そんな奇妙な余韻は忘れてしまって、ただの男女の関係になるかもしれない。そこは分からない。

荒内 深読みだけど、逆に近親相姦に対する願望とも取れるなと。姉弟みたいだからセックスに至らないわけではなくて、姉弟みたいだからこそセックスをしたいのかもしれない。

――AVで近親相姦ものってあるじゃん。僕はあれが無理なんですよ。でも、ジャンルとして成立しているってことは惹かれるひとが多いということでしょう?

荒内 ひょっとして、オレの「Orphans」に対する読みは自分のそういう願望が反映されているのかな……。

――近親相姦ものが好きなの?

荒内 好きじゃない! 好きじゃないけど……いや、好きなのかな?

一同 (笑)

高城 俺は全然観れちゃうんだけど、やっぱり断然姉だよね。俺は妹いるから。よく言うじゃない、妹がいないひとは妹に憧れる、姉がいないひとは姉に憧れるって。そういうことじゃない?

――そう言えば、「Orphans」と「夜去」には一十三十一ちゃんがバック・コーラスで参加しているよね。その人選も、高城くんの姉コンに依るものなんでしょうか?

高城 そういうわけではないです!(笑) 今回、女性コーラスはスパイスとして絶対欲しいなと思い、ちょうど良いフィーリングのひとを探していて、その流れで一十三さんにお願いしようということになったんですよね。

――最初、一十三ちゃんを起用すると聞いた時に想像したものよりは抑えめの使い方になったように思うけど、「Orphans」では橋本くんの青い声を彼女が支えている感じで、まさに、歌詞の通りだなと。

橋本 あ、ほんとですか? 僕は曲のストーリーと、高城くんと一十三さんの声のバランスを重ね合わせながらミックスしてました。

高城 オレは、一十三さんってセクシーな女性っていうイメージを持っていたけど、声だけ聴くと少年っぽい瞬間があって、それがはしもっちゃん(橋本)の声と混ざると、凄くイノセントな魅力が出るなぁって思ったな。

荒内 少年性はいい女の条件だよね。ウィノナ・ライダーとか。

高城 "いい女の条件"(笑)。

――今回のシングルでは、高城くんのヴォーカルもぐっと黒っぽくなっているよね。特に「1つの魔法」では細かくおかずを入れていたり。

高城 シャウトもしてますしね。今、シャウターを目指そうと思っていて。この間、<笑ってバイとも>(高城が働く阿佐ヶ谷のバー<Roji>で開催されている、neco眠る・BIOMAN主催のトークショー http://warattebaitomo.tumblr.com)の、日本のポップスがお題だった回で、大瀧詠一ははっぴいえんどを始めた時、周りに日本語で歌うシャウターがいなかったから自分がそれをやろうと思ったらしいっていう話になって。それは今のインディ・シーンにも言えることで、下手でも良いからオレがシャウターになってやろうって目論んでるんです(笑)。

――なるほど。ところで、「Orphans」は捻っているとは言え、これまで、ceroが頑なに書いてこなかったラヴ・ソングではあるよね。

高城 これがオレたちの限界(笑)。ボーダーライン、ギリギリですよ。

荒内 でも、確かに「Orphans」はラヴ・ソングとも取れるんだけど、物語形式っていうか、例えば「Ship Scrapper」なんかと同じように独立した話として書かれているから、リスナーは高城くんが実際にこういう経験をしているとは思わないんじゃないかな。

高城 そうだね。そういう意味では、作家的にラヴ・ソングが書けたと思う。桑田佳祐さんみたいに、実生活とは関係なく、色んな恋愛の形を……例えば、「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」のように不倫の話を想像してつくるっていうやり方がちょっとは出来たんじゃないかな。

荒内 作詞家だなぁ。

高城 いやぁ……頑張る!(笑)

荒内 リスナーが感情移入しやすいつくりになっているとも思った。以前の高城くんの歌詞だと「exotic penguin night」なんかも具体的な描写が多いけど、あれはマジック・リアリズムというか、映像として楽しむ感じだけど、今回は自己投影するひとが多いんじゃないかな。

――"ceroの歌"ではなく、"私の歌"だと思うんじゃないかと。

高城 ライヴで「Orphans」をやった後、Twitterで感想を検索してみたら、もちろんまったく同じ経験をしたわけではないんだろうけど、それぞれ、自己解釈して、「分かる~」みたいな感じの感想を書いてるひとが多くて。「あるよね~。恋愛感情のぎりぎり手前で踏みとどまっているような感じって」とか。でも、それで良いと思うんですよ。まさにシングルっぽいっていうか。90年代のスピッツの歌詞とかって、実は複雑なことを書いていても、みんな難しいことは抜きに、ラヴ・ソングとして感情移入していたし。

荒内 冴えない男の子と勝ち気な女の子っていう設定が良かったんじゃない?

高城 ね。今、男はそういうやつばっかりだから。

荒内 あと、女の子にもお姉さん願望みたいなものがあるのかなって。可愛い男の子を引っ張っていきたいっていう。

――ceroは、今、いわゆる"J-POP"や"J-ROCK"のフィールドにおいても注目されていると思うけど、その中では決して分かりやすいバンドではないし、決定打となるシングルを求められていたようなところもあったんじゃないかな。ただ、そこに乗っかり過ぎてもつまらないじゃない。

高城 確かに。前から聴いてくれていたひとは「どうした、cero?」って思っちゃいますよね。

――そういう意味では、『Orphans / 夜去』はその期待に対してceroらしく捻りのある答えを出したシングルだと言えるよね。

高城 そうかー。じゃあ、この曲がシングルで良かったんだな。最初、「地味かな?」と思って不安だったんですよ。

――いや、むしろ、cero史上、最もポップな曲だと思います。……ところで、今回、橋本くんはceroでは初の歌ものの作曲を手掛けて、しかも、それがシングルになった割には、相変わらず発言が少ないんですけど。

橋本 ええ?! 今回は取れ高あったと思うんですけど……。

――もうちょっともらいましょうか。今回、ミックスで意識したことは? 以前と比べて音数も少なくなって、隙間を生かしたつくりになっているよね。

高城 うん、ぐっとスリムに。ようやく、大人になってきたのかな?

橋本 確かに以前の作品を久しぶりに聴き返すと、ちょっとごちゃごちゃして感じる時もあって、もう少し軽く聴けたら良いなと思っていたので、今回はライヴ感を出したり、レンジをぎゅっと狭くしたいということは考えていました。あと、高城くんに教えてもらったモッキーの「バーズ・オブ・ア・フェザー」とベニー・シングスの「レット・ミー・イン」は参考になりましたね。それで、ああいう、ざらっとしたロウファイな音質にしようと。

――ああ、確かにその2曲は「Orphans」に通じるところがあるね。

橋本 あらぴー(荒内)にも、UAの「ミルクティー」の音質が「Orphans」に合うんじゃないかってアドバイスしてもらったり。

高城 「ミルクティー」の、ポップなのに乾いていて、ほんのりと黒っぽさもある、あの感じを目指したようなところはあったよね。ちなみに、あれも98年の曲ですけど、今回のシングルの裏テーマには"90年代"だったんですよ。

――まず、"CDシングル"というメディアが90年代っぽいもんね。

荒内 このジャケ(『Orphans / 夜去』)の元ネタって何だと思います?

――何だろう? 真心ブラザーズの「サマーヌード」?(笑)

荒内 デ・ラ・ソウルの『ステイクス・イズ・ハイ』(96年)。

――ああ、なるほど。あれはまさに今のceroが参照しているサウンドの源流でもあるしね。そう言えば、2014年はSIMI LABやスチャダラパーとツーマンをやったり、ヒップホップやダンス・ミュージックのアクトと共演する機会も増えたじゃない?

高城 この1年は、ライヴ、作曲、録音と例年になくタフだったと思う。バンドとして強度が増しているという実感はあります。

荒内 昨年の今頃は、ブラック・ミュージックの要素をどう取り入れていこうか試行錯誤していた感じだったけど、今年は実践する段階に入ったよね。

高城 8月にオレとあらぴーとでロバート・グラスパーのライヴを観に行ったことも大きかった。

――どういうところが良かった?

高城 演奏しながら客席をジロジロ見てるんですよ。何回も目が合うから、何か「このノリにお前らはついてこれるのか?」って試されているような感じになってきて、しかも、お客さんの集中力が高まるとグラスパーは演奏を止めてしまう。それで、あとはメンバーに任せて、客席でビールを飲んだりしている。場をつくりあげたら、もう自分は居なくても良いっていうその感じが格好いいなぁって。

荒内 自分名義のバンドでありながら、あんまり弾かないんだよね。あくまでもコンダクターであり、周りを立てるためのアイディアマンであるという。

――柳樂光隆さんや原雅明さんの受け売りですが、あの辺りのジャズ・ミュージシャンはエゴが希薄だっていうよね。ソロにはあまり興味がなくて、自分の演奏はあくまでも全体的なサウンドのいちパーツだと考えている。

高城 グラスパーのライヴはハウスっぽいという話もしたよね。サウンドが出来上がってくると、むしろ、抜くっていう。ソロを取っていてもイン・テンポだし。

荒内 うん。リズムが変わっているようで、実はBPMが一定しているところもハウスっぽいって思ったかな。

高城 発見が多かったよね。それをすぐに自分たちのライヴに還元出来るかというと、そんなことはないんだけど……。

――ロバート・グラスパー周辺は、ジェイ・ディラに象徴されるような打ち込みのアーティストの表現を、如何に生演奏に還元するかということを考えていると思うんだけど、やはり生演奏が主体であるceroとしては、そこにインスパイアされるところが大きいということかな?

高城 そうですね。

荒内 特にこの1年はそういうことを考えていました。

――ちなみに、橋本君はどういうものを聴いていたの?

橋本 ずっと、吾妻さん(吾妻光良&ザ・スウィンギング・バッパーズ)の演奏や、吾妻さんがライヴでやっているカヴァーの元曲とかを調べて聴いています。あとは、昨日、北海道から帰ってきて、羽田からモノレールに乗っている間、まりん(砂原良徳)さんの『TAKE OFF AND LANDING』を聴いて、車窓を流れる海沿いの景色とすごくマッチしたのが素晴らしい体験でした。

高城 吾妻さんからまりんさんっていう流れがはしもっちゃんぽいね。

――なるほど。最後に近況を訊いておくと、サード・アルバムのレコーディングがそろそろ始まるといったところ?

高城 うん、1月からやる予定です。

――ちなみに、「Orphans」はセカンド・アルバム『My Lost City』収録曲「Contemporary Tokyo Cruise」(以下、「CTC」)の続編的楽曲ということだったけど、「夜去」には"とてつもなく巨大なレコードのうえで"(「ワールドレコード」)とか、"テント"(「outdoors」)とか、ファースト・アルバム『WORLD RECORD』収録曲の歌詞が散りばめられていて、このシングルが、前2作とこれからつくられる新作とのリンクをほのめかしているようなところもあるよね。

高城 自分がいま構想しているのは、サードの舞台は「CTC」の巻き戻し(曲の最後に「巻き戻しして」というラインがある)が達成された後の世界だということなんです。そこは、一見、平和で、登場人物も普通の暮らしをしているんですけど、常に奇妙な違和感が漂っていて、ふとした時に、前の世界で起こった天変地異をデジャブのように感じてしまう。今回のシングルに入れた曲だと、「Orphans」もそうですし、「夜去」に関しては『WORLD RECORD』以前まで巻き戻っているっていう設定で。だから、「夜去」の歌詞にしても、「ワールドレコード」や「outdoors」から引用したというよりも、それ以前の世界を描いたというか。

荒内 「Yellow Magus」もそうだよね。「CTC」に幽霊船として出てくる船が、出港したときの話で。

――あれっ、そうなの? 以前のインタヴューでは、あの舟が、その後、どうなったかっていう話だと言っていたけど。

荒内 ああ、どっちとも取れるようにつくってあるんです。高城くんからサードのコンセプトとして、"巻き戻しが達成された後の世界"という話が出てきた時、「Yellow Magus」はそうとも解釈出来るなと。

――新曲だと「ticktack」もそういうことを歌っているよね。あと、"一見、普通なのに、奇妙な違和感が漂っている世界"というのは、先程、荒内くんが「何となく次につくるアルバムが普通なものになってしまったらちょっと怖いなと思い……」と言っていたけど、確かに、『Yellow Magus』以降のceroはブラック・ミュージックをベースにしたオーセンティックな楽曲が増えたわけで、ただ、そのある種の"普通"さに、歌詞で別の意味をもたせようとしたのかな。

高城 何と言うかこう、だらっとした日常に、時折、ひやっとするような時があって。「え、あれ?」みたいな。そういう感覚を描きたいのかもしれない。

――ceroはパラレル・ワールドをつくりあげてきた一方で、そういう、"だらっとした日常"も描いてきたよね。

高城 そうですね。『WORLD RECORD』にもそういう曲が入ってますし、あと、「Good Life」(デビュー・7インチ「武蔵野クルーズエキゾチカ」のB面)とか、「ディアハンター」(10インチ「21世紀の日照りの都に雨がふる」収録)とか。

――そして、『My Lost City』のラスト「わたしのすがた」では、まさに、"一見、普通なのに、奇妙な違和感が漂っている世界"を描いていた。「Orphans」もその延長線上にある。

高城 □□□の『20世紀アブストラクト』って、ファースト以前の音源の集積をサード・アルバムとして出したものじゃないですか。三浦(康嗣)さんがその時のインタヴューで「『ドラゴンクエスト』シリーズは、『3』では『1』『2』以前の話になるから、それになぞらえてみた」っていうような話をしていたんですね。そのことが何となく印象に残っていて、ceroもサードは『WORLD RECORD』以前の話にしたら面白いかもしれないと思ったのもありましたね。

――"巻き戻しが達成された後の世界"だから、"以後"でもあるんだろうけど。

高城 まぁ、今はまだそんな風にしようかなっていうプラン立てを頭の中でやっている状態ですけどね。まずは、『Orphans / 夜去』から楽しんでもらえたらと思います。

 

(interview by 磯部涼)

LIVE SCHEDULE

2014/12/21 SUN@EX THEATER ROPPONGI
『cero ワンマンライブ "Wayang Paradise"』

OPEN / START 17:00 / 18:00 (ラウンジオープン16:00)

TICKET 前売 3,800円(D代別・アリーナスタンディング)
     限定2日通し券 7,000円(D代別・アリーナスタンディング) THANK YOU SOLD OUT!

「2日通し券」に関して
※引き換え券」の発券となり、公演当日に入場券と引き換えになります。
※また、各公演日ごとに入場時1ドリンク代が別途かかります。

下記プレイガイドにてチケット発売中!
・ぴあ(P: 242-947) 
・ローソン(L: 73402)
・e+
・岩盤

INFO SMASH: 03-3444-6751

2014/12/22 MON@EX THEATER ROPPONGI 『cero ワンマンライブ "Wayang Paradise"』SOLD OUT!

OPEN / START 18:00 / 19:00 (ラウンジオープン17:00)

TICKET 前売 3,800円(D代別・全席指定) THANK YOU SOLD OUT!
     限定2日通し券 7,000円(D代別・アリーナスタンディング) THANK YOU SOLD OUT!

※引き換え券」の発券となり、公演当日に入場券と引き換えになります。
※また、各公演日ごとに入場時1ドリンク代が別途かかります。

INFO SMASH: 03-3444-6751

2014/12/28 SUN
@幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
 『COUNTDOWN JAPAN 14/15』

COUNT DOWN JAPAN 14/15