結成20周年を迎えたキセル。
カクバリズム移籍後の2008年以降の2枚組ベストアルバムのリリースが決定です!
Disc1にはカクバリズム移籍後の2008年以降のアルバム
『magic hour』『凪』『明るい幻』『The Blue Hour』などから選曲した全12曲を収録。
Disc2はビクター時代も含む過去曲を、
リアレンジし録り直したテイク、6曲を収録した2枚組のベストアルバムです!
DDCK-1062 CD 2枚組 3,200円+税
TOWER RECORDS ONLINE(特典ステッカー付!)
DISK UNION(特典缶バッジ付!)
HMV&BOOKS online
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カクバリズムデリバリー
辻村豪文
キセル結成20周年を迎えるにあたって、この度ベスト盤を出すことと相成りました。「若くて有望なミュージシャンがどんどん出て来る中、まだ聴いてもらったことのない人に向けて少しでも間口を広げたい」という角張くんからの提案にありがたく納得しつつ、せっかくの機会なのでライブをやりながらここ10年くらいでアレンジの変わったのを何曲か再録してみたい、という我儘叶って2枚組でのリリースになります。
内容はカクバリズムからの4枚のアルバムの内から選曲してまとめたものと、ビクター在籍時からやり続けてる曲を中心に新しく録り直したもので、再録の方は改ってキセルの原点回帰という訳でもないですが、全曲四畳半宅録です。
なので、何となくDisc1の方は「はじめまして。」、Disc2は「いつもありがとうございます。」という心持ちで作業してました。
初めて聴いてくれる方も勿論ですが、普段からでも時折でもあの頃はでも、キセルのことを心の何処かに留めて置いてくれる人たちに楽しんでもらえたなら、何より幸いに思う次第です。
20年やっても相変わらず不束な兄弟バンドですが、これからも何とぞよろしくお願いします。
辻村友晴
「 20年兄弟でよくやってこれたなぁ~」より、「兄弟やしやってこれたなぁ~」感が強いです。
意見が正反対だったり、面倒と思う事は沢山あるんですが、最近はそういう面倒なところに新しい答えや、見えてなかった風景があったりするんじゃないかと思い、これからもまだやっていけそうな気がします。笑
兄弟で音楽は郷愁が大事やねという話しをした事があります(確か...)。
その郷愁の共有の濃さがキセルの強みなんじゃないかなと思っています。
新しいアイデアは体内フィルターをいい具合に通った音じゃないと嘘っぽくて座りが悪く、兄弟間ですぐにバレます(特に兄さんが厳しい)。
そうやってアイデアと郷愁とを行ったり来たりしながら、ふるい にかけて「面白いね」と言われるものを作ってきましたし、そうあり続けられるよう頑張っていきたいです。それには面倒な事が鍵っぽいです。ふ~面倒やな。
最後に。
キセルを聴いてくれている方々には感謝の言葉しかありません。それとこんな僕らと活動を共にしてくれているカクバリズムのみんなやスタッフの方々。キセルの遅さに耐え、受け入れてくれる度量の深さに感謝です。。
出会えて本当に良かった。
あとはやっぱり両親のおかげです。。
この先、世の中がどうなるか分かりませんが、自分たちの出来る事を見極めて色々発信していきたいと思いますのでこれからもどうぞよろしくお願いします。
“20th anniversary year of Kicell”
2019. 9.16(月・祝)
日比谷野外第音楽堂
FINISHED
OPEN 16:00 / START 16:45 ※雨天決行・荒天中止
チケット料金
前売 4,800円(自由席/整理番号付き)
ペアチケット 8,600円(2名様/自由席/整理番号付き)
※中学生以下入場無料(保護者同伴に限り)
※客席前方自由席/後方ファミリーエリア
お問い合せ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com
SPACE SHOWER MUSIC STAND
2019. 9.28(土)13:45 -
SORARINA PLAZA1F
ライブ後にベストアルバム購入者対象のサイン会
時間:14:20頃~ @SORARINA PLAZA1F
https://spaceshower-musicstand.com/
【参加方法】
タワーレコード福岡パルコ店および、イベント当日会場CD販売ブースにて、 8月21日(水) 発売 キセル『Kicell’s Best 2008-2019』
(DDCK-1062) をご購入いただくとサイン会参加券を差し上げます。参加券をお持ちの方はサイン会にご参加いただけます。
開始時間は前後する可能性がございますのでご了承ください。
【対象商品】
キセル『Kicell’s Best 2008-2019』
2019.08.21 Release
DDCK-1062 / ¥3,200+税
祝! キセル結成20周年&カクバリズム移籍後の初ベスト・アルバム『KICELL'S BEST 2008-2019』リリース&3度目となる日比谷野音ワンマン(9月16日)! ということで、やってみました。キセルとカクバリズム角張渉、13年ぶりのアンコール対談。
かつてキセルのBLOGで公開された対談から13年。カクバリズムで4枚のアルバム・リリース、バンド編成の定着、野音ワンマン、全国各地を訪れてのツアーなどなどいろいろありました! 今3人が思うキセルのこれからをカクバリズム近所の名店にてお酒も交えつつ語ってみました。(構成:松永良平)
角張渉
2006年の12月にキセルのBLOGで公開したキセルと僕の対談というのがあるんですが、あの13年後の続きをやったらどうだろうかと思って、今日は二人に来てもらいました。今のキセルの現在地を探りつつ、話をしようかなと。結局振り返ってみて思ったのは、この約10年のカクバリズムとキセルの歴史っていろいろ試行錯誤の連続だったなと。俺が「(キセルで)こういうことやりたい、やったらどうか?」というアイデアにいろいろ付き合ってもらったなぁというか。
辻村豪文
いや、本当にこちらこそいろいろ付き合ってもらって。
(ここで飲み物が揃う)
角張
おつかれさまです、いや、20周年おめでとうございます。かんぱーい! キセルにカクバリズムに入ってもらったとき、こうしようああしようっていろいろ目標はあったよね。でも、この10年やってきて、こういうふうになるとは俺ら3人とも誰も予想してなかったし、そもそもあのころはカクバリズムがずっと続くとも思ってなかった。せいぜい「続くかな?」くらいの感じ。
豪文
うちらも同じです(笑)
──角張くんと兄さんが初めて話したのが、2005年9月のSAKEROCKのライヴの打ち上げで。
角張
表参道のFABでしたね。
辻村友晴
僕はその場には居なかったけど、家に帰って来た兄さんが(※当時は一緒に住んでた)「インストで7インチを出すのはどうですか?って言ってくれる人がいたよ。」って言っていて、面白そうやねと2人で話した記憶がある。
角張
そうそう。インストで7インチがいいと思ってた。当時、うちはニカさん(二階堂和美)とかもそうだったけど他のレーベルの音源をライセンスして7インチで出すというのをやらせてもらっていて。いろんな人のアナログ、特に7インチを出したかったんだよね。
豪文
あのころ、バリさん、よくライヴも来てくれて。
角張
行ってたよね。代々木のZher the ZOOとかO-nestとか、いろいろ。当時キセルに声かけてた他のレーベルもあったけど、うちで出したかったからね。
豪文
まあ、俺らも「レーベル探してます」ってあちこちに相談してたから。でも、俺はカクバリズムがいいと決めてた。
角張
その選択は勇気が要ったよね。当時のキセル界隈にはわれわれカクバリズムはまだぜんぜん知られてなかったから。YOUR SONG IS GOODもSAKEROCKもインストバンドだったし、キャリア的にもまだベテランでもなかった。
豪文
勇気が要るというか、俺もカクバリズムのことを知らんかったし。いろんな人にも相談したし、「自分たちで大丈夫かな?」という不安はあったけど、とにかくなんか面白そうっていうのがやっぱり大きいかも。
友晴
肌感覚で「ここなら居たい」っていうのはあったかな。
角張
でも、それから10年経って今やキセルは古株ですからね……。この10年の間に入ってきたcero以降の若者たちも、キセルがいるから「このレーベルには品がある」と思ってくれたところはある。
豪文
ひん?
角張
「いろんなものが保たれてる」イメージだったみたい。そんな意識、二人には絶対ないと思うけど
二人
(笑)
角張
だって未だに“入社したて”みたいな感じでしょ。「この会社に慣れてないな」みたいな感じがある(笑)。その感じわからんでもないんだよね。俺も未だにこの業界の新入社員みたいな感じでいるからね。
友晴
「あれ? cero先輩やったっけ?」とか(笑)
──キセルにどうしてもカクバリズムに来てほしかったのはなぜ?
角張
一緒にやりたいと思ったし、当時はメジャー・メーカーをギャフンと言わせたいという勝手な反骨精神みたいなものがあって。ただ同時にメジャーでもうまく良い音楽を作ってみたいって感覚もあって(※詳しくは角張の著書を笑)。そんな中ちょうど2006年にYOUR SONG IS GOODがメジャーデビューして、キセルはメジャーから移籍してくれて。そういう交錯があるなかで、どこかで「メジャーでもかまして、インディペンデントでもかましてやる」みたいな気持ちがあった。さらに、パンクやハードコアばっかり聴いてた若いころに唯一歌もので聴いてたメジャー・アーティストがキセルだったから、「俺になにかできることはないだろうか」と思ってましたね。そういうなかで、うちに来てくれてから現場レベルなこととしてやってみたのは、アルバムリリースツアーじゃない年末恒例の東名阪ツアーの会場での音源発売(キセルEPや’’夕凪’’)や日比谷野音限定で売るライヴ盤(『KICELL EP in みなと湯』)やカヴァー集(『Songs Are On My Side』)とか、アルバムをせーので売るというよりは現場できて来てくれる人に最初は優先で販売するというか、より現場での展開のやり方とかもキセルで切り開いていったところはあるかなって今は思いますね。。キセルで試して成功したからそれをYOUR SONG IS GOODやceroでもやってみたし。(キセルは)若いながらに歴史があるからやれることがあったし、俺が思いついた「こういうことやりたい」っていうのを常に受け止めてやってきてくれてうれしかったですね。その代わり「新曲早く来ないかな」みたいな気がかりは常にあるけど(笑)
──角張くんのいろんな提案に対するNOは、キセル側にはこれまでなかった?
豪文
今回のベスト盤とかは躊躇ありました。「売れるんかな?」みたいな。
角張
でも、あんまりNOはないよね。ひとつ無しになったアイデアとしては、キセルのトリビュートかな。「それやったらベテラン・バンドみたいやんか」って断られた(笑)。
豪文
そうやったかな(笑)。トリビュートってこっちからお願いしてやるもんでもないかな、と思ったから。
角張
そう言われてそうだよなって(笑)。でも今回のベスト盤は出してよかったなぁってしみじみ思います。数年後効いてくるというか、新しい何かを産んでくれるような気がしてます。それに今年のFUJIROCKのライヴ(7月27日、FIELD OF HEAVEN)を配信で見て「ベスト盤出るんだ」って初めて知ってくれた人も多かった。あれ、すごい数の人が見てたからね。
豪文
ね。松本のコンビニで観た人が声かけてくれたりして。
角張
すごい(笑)。あと、長い付き合いのファンの人でも「今回ベスト出るから聴き返して見ようかな」っていうの反応の人もいっぱいいたからさ。それはすげえいいことだし、いい作品になったと思うよ。ディスク2の宅録もいいしさ。
豪文
本当すか?
(ここで追加注文)
角張
すいませーん。枝豆、さつま揚げ。
友晴
マグロぶつ!
豪文
(ホッピーの)中ください。
角張
話を戻すと、キセルをメジャーをやめてインディーに来たアーティストがうまくやるモデルケースにするわけじゃないんだけど、カクバリズムで最初のアルバムだった『magic hour』(2008年1月)が、スピードスターの最後に出した『旅』(2005年5月)の倍くらい売れたからね。覚えてるけど、『magic hour』発売日の1月27日が雪の日で、タワーレコードでめちゃ売れて品切れしてさ。「ほら!ほら!」と思ったね(笑)。そこからインディーでキセルが音楽をしっかり向き合って制作ペースを作ってうまくやれたらと思いながらやってきたのが、この10年だったかなと思ったり。
──オリジナル・アルバムのリリースはスパンが空いても、常になにかやっている感はキセルにはある。
角張
そうですよね。オリジナル・アルバムは4枚だけど、途切れずにいろんなタイトルを出してる。でも、ひとつデカいのは震災かな。兄さんの筆が止まったのは震災以降。
豪文
まあ、『凪』(2010年6月)から『明るい幻』(2014年12月)が出るまでスパンが空いたのはそれも大きいけど、いろいろあった気がする。若いバンドがたくさん出てきて、自分らができることを考えるみたいな時期でもあったりして。今もそんな感じですけど。
角張
でも、ceroの高城くんも橋本くんもキセルがすごい好きで、カクバリズムに入る前に、俺らが風知空知でやったちっちゃいイベント(2008年6月22日『夜の発火点』)を橋本くんが見に来てくれてたんだよね。ショピンと兄さんのソロがライヴで、友晴くんがゲストDJだったやつ。俺らも自分で思ってる以上に長く音楽をやってきてて、ceroがキセルやSAKEROCK好きだったとか、思い出野郎がYOUR SONG好きだったとか、若いうちにカクバリズムと知らなくて聴いてたみたいな新しいアーティストがうちに入ることにつながってたりするから。キセルって、そういう自分の旗をしっかり持って活動してくれてるから、めちゃくちゃ偉そうだけど……そこは会社(レーベル)としても本当にありがたい。リリース・スパンがこんだけ空いてもやれてるんだっていうのも会社としての勇気というか看板だし(笑)
友晴
でも4年も空いたのは一回だけやで(笑)
豪文
申し訳ない(笑)
角張
でも、10年のうち4年出てないってヤバくない?(笑)
豪文
バリさんのケツを叩く部分と我慢して待ってくれる部分は両方ありがたいんで、そう言われるのはぜんぜんいいんやけど。
角張
そこはね、しょうがないよね(笑)。悪者にならざるをえないときもある。でも、キセルはその間でもカヴァーや劇伴の仕事やってくれたりしているし。あとそもそもみんなが思ってる以上に一曲に対する労力は賭けてるよね。たとえば俺が催促するようなことを言わなくなったら、「バリさんから言われなくなったんで、次のアルバムは5年後になった」みたいにはなんないでほしいなと、この20周年のタイミングであらためて思うけどね(笑)。とはいえ、この二人っていうのは神の配剤だからね。「あなたたちは音楽をやりなさいよ」と神様に言われた二人をたまたまカクバリズムで預かってるだけなので。
豪文
それ、よく言うよね。
角張
この10年でもときどき「俺のわがままに付き合わせてるだけで、もしかしたら二人には違う人生があったんじゃないか」とも思って迷ったりもしたけど、「そんなことはねえな」とも思うときもあった。だってお互いに好きでやってるわけで、それがたまたまおなじベクトルをたどってるわけだからね。今はもうそういう迷い方はやめた。
豪文
「(角張に)付き合ってる」っていう感じは、そんなにないかな。
角張
(飲み物を吹き出しそうになる)
豪文
でも、カクバリズムに入ったころに、バリさんが思い描いてる「キセルをこうしたい」っていうイメージはあったよね。「USインディー感」みたいなことよく言ってた(笑)
角張
めちゃくちゃ恥ずかしい!(笑)
豪文
でも、その期待にはたぶん応えられへんかったなあ、と思ってるけど。
角張
そうかな? 一時期のLIQUIDROOMでのライヴには、応えてる感じあったよ。
豪文
「USインディー感」って、どういうアレなんかなって思いながらやってたかな。
角張
でも、そっちに行ってしまわなくてよかったともちょっと思ってる。キセルには「日本のフォーク」的な血脈もちゃんとあるし、だからいいんだよね。しかし、最近のライヴもすごく堂に入ってていいんだけど、終わった瞬間「どうも、キセルでしたー」って急に新人バンドみたいになる、っていうのはずっとあるよね(笑)
──そこでキャリアや円熟味がリセットされる面白さ(笑)
角張
かわいさでもあるんだけど。
友晴
いつもライヴにせよなんにせよ「よろしくお願いします」感はある。
角張
でも、見たかった景色は野音では何度も見せてもらってるよ。1回目の野音も2回目の野音もそうだった。でも、その先を考えるのがレーベルの代表の仕事なのかなと考えると、ちょっとわかんなくなるんだよね。どう継続していくか? キセルに好きにやらせてることは本当はいいことじゃないのかも。好きにやらせるってことは実はこっちが思考停止しちゃってるからで、もっとこっちが考えて切磋琢磨していかないといけない。で、これから次の10年に向けて、二人が50代になっていくときにできる新しいやり方があるんじゃないかっていうのをこの2年くらい俺は模索ばっかしている……。
──海外での展開も意識するとか?
角張
海外では、キセルの音楽って年齢とか関係なく聴かれてるから、そういうことに関しては追い風が吹きやすいんじゃないのか、とかは思うけど。
友晴
兄さんは海外でやりたいって最近よく言ってるよね。
豪文
今すぐそうなれるとは思えないけど、普通に海外に行ってライヴやれるようになれたらなって思う。今までもニューヨーク、フランス、韓国とかでライヴやらせて貰ったことはあるけど、そういう特別な感じじゃなくて、海外で普通にやる感じにどうやったらなれるのかなって考えたりはするっすね。
──「普通に」っていうのは、どういう感じ?
友晴
まだ行ったことないんですが、、兄さんが住んでる松本に、Give me little more.ってお店があって、東京ではもっと大きなところでやるような外国のアーティストがそこにふらっと来てライヴしたり、そういう環境が普通っぽく思えるというか。そういうのを目にして思うようになったんちゃう? 東京だと大きめのハコでぎゅうぎゅうで見ることになるけど、松本だともうちょい普通に体験できるというか。
豪文
普通にライヴして、普通に帰っていくような感覚っていうか。うまく言えないんですけど、そういう感じで海外でどうやったらできるんかなって。根本的な態度の問題やと思うんですけど、かなり違う感覚で向こうの人はやってるんやろうなぁって。今さら気づくのも遅いんですが。
友晴
生ふたつお願いしますー!
角張
今のキセルのいいところは二人でもあちこちに行けるし、バンドのライヴもすごくいい。これからは、そのバランスを考えていくことも大事かもね。
──確かに、「バンドのキセル」っていうモードはカクバリズムに入ってからできたものだし。それでいて二人でやるときのよさも研ぎ澄まされてきてる。
角張
そう。今は世の中の傾向として「バンドセット=豪華」ということになってるけど、そういうことじゃなくてね。こないだ王舟ともその話になったけど、逆になってもいいんだよね。
友晴
前に、キセル二人の座りライヴツアーをやったとき、お客さんがいつもより来てくれた印象がある。「バンドやから観に来る」というのはキセルにとってはそんなにないかな。お客さんがキセルの音楽を「こういうふうに聴きたい」と求めてる部分と、自分らが「こうしたい」みたいな部分のせめぎ合いみたいな感じでやってるところもあるしね。成功するときもあれば歯がゆいときもあるし。
──やる場所やコンセプトを自分たちから提案していく、みたいなことも、これからはあるのかも。
友晴
そういうことがあっても面白いやろうね。
角張
今回の野音でも友晴くんからステージプランの提案があったしね。
豪文
キセルは「立ち/座り」の葛藤はずっとあって。バンドか二人かもそうやけど、お客さんがどう見るんがいちばん楽しいかが結構人それぞれだったりもするから。自分たちがそのときやりたいことを伝えるのに理想的な人数とか会場がもしかしたらあるのかも。
角張
でも、そう考えられるのは、やっぱりこの10年でライヴがめちゃくちゃよくなってるからなんだよ。これからもいろんなところでお客さんとの出会いの場所を作っていかないと。それを日本も海外もおなじラインでやれたらいいし。
豪文
それはそう思う。
角張
この10年一緒にやってきたけど、これから先はもう少しペースをアップしてやれたらいいのかな。最近は「キセルはいいものを作って当たり前」みたいに思われてるから、ハードルが高いのかもしれないね。これからは「ヒットを狙ってく」というのもすごくいいと思うんだよね。40から50歳になってくときにヒットが出るなんてすげえかっこいいじゃん。
豪文
そうやねえ(小声)
角張
小声になってるし(笑)。でも、野音終わって次の新曲が出て、「すげえいいじゃん。20周年超えて二皮くらい剥けてるね」みたいな曲があるといいかもしれない。生活の感覚があるというのは兄さんのいいところでもあるけど、題材がもうちょっとどうでもいいものでもいいかも。タヌキとか(笑)
豪文
わかりやすいのを狙って作る技量はたぶんないけど、角張くんの言ってることはすげえわかる。
角張
具体性と抽象性の按配というか、言葉のわかりやすさとかね。「田んぼの向こうに小学校が見える」ってことだけを歌にしたっていいのかもしれない。年々経験が上がってきて、いろんな物事を消化するスピードは上がってるけど、消化するだけに終わってアウトプットで出てこないってパターンはよくあるしね。もっと自分のなかでの実験というか、遊びを作ってもいいのかもとか偉そうですが……(笑)
豪文
次を出したいなと思って曲は作ってるから。今の流れにもちゃんと追いつきたいし、そこで新しいものを出したいという気持ちもすごくある。
角張
じゃあ、次の10年の俺の目標は決まりました。「キセルでヒット曲というか新しい代表曲をリリース」。ヒット曲というより、周りの友達とかも含めて「え? 超いいじゃん!」って反応をこれまで以上に多くしていきたい。それはこっちの目標。ってめちゃくちゃ普通の目標だけど(笑)。ただ、そのヒットの引っ掛かりとしては、もしかしたらこれまで試していないやり方だったり、見せ方だったりするかもしれないし、そんなの必要ないかもしれないし、今まで出した曲でみんながめちゃくちゃいいと思ってる曲のなかにあるのかもしれない。光の当て方だけかもしれないし。それを考えていくってことかなって毎度考えているんだけど。でも、これを機にキセルの新しい章が始まれば。第何章なのかな? 3章? 4章?
豪文
1章がスピードスター?
角張
2章がカクバリズムでの10年。3章がこれからの10年。
豪文
普通に続けて行くのに日本でもっと売れないと、っていうのはあるけど、さっきも言った、海外に行って普通にライヴする、とかが目標かな。今行きたいというよりこの10年くらいのスパンでやっていきたい。
角張
最後に友晴くんの目標を聞きたいな。
友晴
そうやね。日本のシャッグスになれれば。
角張
それじゃイチから出直しじゃない(笑)
豪文
しかも「日本のなんとか」になるって言ってる時点でおかしい(笑)
角張
結成20年のバンドじゃない(笑)。もう「日本のキセル」になってるから。
友晴
えー? じゃあ、なんやろう?
角張
インスト集を出すとか?
友晴
いや、それはあんまり興味ないんで。
角張
マジで?
友晴
ずっとインストを作ってはいるけど、出口がないから。まあ、いつかはインストの作品は作りたいけど。
角張
ヤバいね。死後に未発表作品集がリリースされるパターン(笑)
豪文
俺も今ソロでインストやってるよ。
角張
すごくいいらしいね。松本で兄さんのソロ・ライヴ見た知り合いが言ってたよ。
──それこそ角張くんの最初のアイデアはインストの7インチをキセルで出すというものだったわけだし。
角張
そうですね……。でも、今は売れなそうだなとか……(笑)
友晴
目標……、もうちょっと普通に曲を作れるようになりたいかな。あと、僕が歌詞を書けるようになったらキセルにとって5倍くらい飛躍的やね。
角張
やってみたら? 兄さんに見せる前に俺がチェックします(笑)そして、キセルのニュー・アルバムを2022年までに出す!
豪文
え? 『The Blue Hour』から5年後でいいの?
角張
あれ? 来年って2022年じゃなかったっけ?(笑)じゃあ来年はシングルでめちゃくちゃいいのを作ろう。ヒット曲!ヒット曲!(笑)カクバリズムとしてリリースの仕方も工夫して、お客さんとのつながり方も新しく楽しくやりましょう!
二人
今後ともよろしくお願いします。
キセル
辻村豪文と辻村友晴による兄弟ユニット。
カセットMTR、リズムボックス、サンプラー、ミュージカルソウ等を使用しつつ、浮遊感あふれる独自のファンタジックな音楽を展開中。スピードスター在籍時に4 枚のフルアルバム、2006年カクバリズム移籍後も「magic hour」「凪」「SUKIMA MUSICS」「明るい幻」「The Blue Hour」など、アルバムと10インチレコードやライブ会場限定のEPなど精力的にリリース。どの作品も多くの音楽好きを唸らす名盤となっており、ロングセラーを続けている。
毎年の大型野外フェスへの出演や、フランス・韓国・台湾でのライブ、ジェシ・ハリスとの全国ツアー、そして恒例のワンマンライブをリキッドルームや赤坂ブリッツ、日比谷野音などで行っている。今年で結成20周年を迎え、9月16日には日比谷野外大音楽堂での3度目のワンマンを開催する素敵な2人組である。