カクバリズム20周年

Diff’rent Strokes

来たる3月4日にリキッドルームで2マンを開催するYOUR SONG IS GOODと思い出野郎Aチーム。個人的に相性抜群だと自負するこの2組。そもそも昨年カクバリズム20周年イベントの入場特典パンフ用にYOUR SONG IS GOODの淳君と思い出野郎Aチームのマコイチ君に対談もしてもらっているのです。この対談がとても面白いので20周年パンフを読んでない方にも3月4日のリキッドルーム前に読んでもらってから遊びに来てもらったら、当日がより楽しいなと思い掲載させてもらいます。バンドは楽しいだけではない。しかしながら最高な瞬間が溢れている。ってことで、3月4日はリキッドルームに大集合でお願いします!(角張渉)

JxJx(YOUR SONG IS GOOD)
JxJx(YOUR SONG IS GOOD)
マコイチ(思い出野郎Aチーム)
マコイチ(思い出野郎Aチーム)
 

———今年のフジロックフェスティバル(7月30日、WHITE STAGE)で、思い出野郎Aチームがメンバーのコロナ感染で出られなくなって、代打でYOUR SONG IS GOODが出ました。終盤の「On」に、思い出野郎の「楽しく暮らそう」を突然のカットインでカヴァー。あの展開は最高でしたね。

マコイチ もしYOUR SONG IS GOODが出られなくなって俺らが代打だったら、逆は絶対できない(笑)。さすがだな、って思いました。

JxJx 本番の3、4日前くらいの午前中でしたかね。LINEに7個くらい「未読」のメッセージが来てた。「何事?」と思ったら、「日曜日空いてますか? フジロックです」と。メンバーはみんな「行けます」。もちろん僕も「行けます!」と即答しました(笑)

マコイチ めっちゃありがたかったです。

———「楽しく暮らそう」を挟み込むアイデアはどこから?

JxJx 出演が決まってからモーリスと事務所で会ったんですよ。僕は「ライブに思い出野郎の曲のワンフレーズとか入ってたらいいし、お互いに面白いんじゃないかな」と考えていたんですけど、余計なお世話になるかもという迷いもあったんです。で、なんとなくモーリスに「あの2曲、コード進行が一緒だからちょっと入れてみるのどう?」ポロリと言ってみたら、「あ、いいね」って反応だったんです。その打ち合わせの帰り、エレベーターを降りたら目の前に社長(角張)がいて、僕がしゃべる前に「ジュンくん、フジロックで思い出の曲を入れるのどうですか?」って言われた。

マコイチ やばいですね、それ。みんな同じこと考えてたんだ。

JxJx 思い出野郎Aチームが頑張ってきたからあのステージが用意されたわけで、そこでうちらが普段通りのライブをやるのはちょっと違うなと感じてた。「せっかくだから思い出野郎Aチームにも来てもらおうか」みたいな感覚ですかね。

マコイチ あの当日、僕は神田のビジネスホテルで療養中で、それこそ普通に体調も弱ってたし、悔しさもあって正直言ってあんまりフジロックを配信で見る気分にもなってなかった。だけど、YOUR SONG IS GOODは見よう、と思ったらまさかの展開で。というか、そもそも最初からめちゃくちゃいいライブをあの場でやってるのを見て心が楽しくなって、さらに「楽しく暮らそう」だったんで感激しました。終わったら速攻JxJxさんに「泣けました!」ってメールしました。

———カクバリズムの歴史の積み重ねも感じました。

マコイチ YOUR SONG IS GOODは、ちょうど僕らの倍くらいのキャリアですよね。

JxJx そうかー。

マコイチ そもそも僕らが高校生だった20年前に初期のYOUR SONG IS GOODを聴いてましたから。カクバリズムに入ってJxJxさんと知り合ってからも、バンドで困ったことが起きたら相談してます。だいたい僕より10年くらい前にJxJxさんも同じようなことを経験してるんです。大所帯で、メンバーにサラリーマンもいて、それでもずっと精力的に活動している。完全にYOUR SONG IS GOODがつけてきた轍を僕らが後から進んでいる感じがあります。

———確かに共通点がいっぱい。

マコイチ すごくニッチな共通点でいうと、僕が中高生の頃に使っていたスタジオ。都立大学のヒノーズですね。もう閉店してしまいましたけど。

JxJx 出た!(爆笑)

マコイチ そこにYOUR SONG IS GOODもリハでよく入っていたという。ニアミスでした。

JxJx 申し訳ないけど「都立大といえばここ!」じゃないスタジオだった(笑)。渋いチョイス。大好きだった。

マコイチ 深夜パックが最安で、カップラーメン付きなんですよ。通路にあったちっちゃいテレビではずっとMTVのレゲエ・チャンネルが流れてました(笑)

JxJx マコイチとはその後もニアミスが続くよね。スペースシャワーTVの番組で僕がVJをしていた頃、大道具の仕事をしていたでしょ?

マコイチ そうですね。JxJxさんの番組で、CM中に水とかを出してました。

JxJx 美術スタッフなのに、そんなことまでやってくれて。いろんな人が出入りする現場だったけど、マコイチが水をサーブしてくれてたのは印象的だった(笑)。多くは語り合わないけど通じ合ってる仕事仲間だと、僕は勝手に思ってたんですよ。

マコイチ YOUR SONG IS GOODを聴いてることをJxJxさんに言うのは違う気がする、という謎のこだわりで、「おつかれさまでーす」くらいしか言ってませんでしたけど(笑)

JxJx その数年後かな、リキッドルームでの〈YOUR SONG IS GOODの超2日間2013〉(13年12月8日)に、ビデオくん(VIDEOTAPEMUSIC)に出てもらったときがあった。あのとき、マコイチがトランペットを吹いてたんだよね。

マコイチ リキッドでJxJxさんに会ったら「あれ? 今日は(大道具の)現場?」って聞かれた(笑)

JxJx そうだった(笑)。思い出野郎Aチームのことは最初〈Shimokitazawa Indie Fanclub〉で、まずは名前で認識しました。やっぱり名前、気になるじゃないですか。Aチームってなると世代的に他人事ではない親近感があって。

マコイチ 実はその時期もまだスペシャでの仕事は続けてたんで、毎週くらいJxJxさんには会ってたんですよね。ただ、バンド的にも、いろいろ声はかけてもらえていたけどまだCDも出せてないし、難しい時期でした。就職してサラリーマンになったメンバーもいて、ライブのオファーもメンバーの休みがわからなくて断ったりしてた。そんな状況でも、YOUR SONG IS GOODをロールモデルというか、勝手に自分たちがバンドを続けていくうえでの基準にしてたところはありました。他に仕事がある人がいても副業っぽくはない。こういうのってアリなんだ、と。

JxJx たぶん、僕らはたまたま10年先を歩いてるだけで(内実は)一緒ですね(笑)。節目節目のタイミングで、バンドって危ない空気感になったりするじゃないですか。でも、YOUR SONG IS GOODに対しては「終わらせたくない」という気持ちが強かった。結婚したり、子どもが産まれたメンバーが出てくるといろいろ難しくなるけど、うちの場合は〝動ける人が動く〟動方式にしたんです。動けるのは、たとえば、僕やモーリス、タナカさん、ハットリくんですよね。僕らが先に動いておいて、バンドが回りはじめたらうまくペースをつかんで付いてきてもらう、みたいなやり方。それしかなかったという感じかな。

マコイチ まさに僕らも今、そんな感じなんですよね。でも「このメンツでやりたい」という気持ちが強いから、だましだましやってきた。だから、ゴールデンウィークにレコーディングする確率がすごく高かったりして。メンバーの家族には「すいません!」という感じです(笑)

JxJx それぞれのしんどさはあるんだよね。今、僕も子どもができて父親になり、どれだけ時間が必要かわかるから。

マコイチ 僕も先日父親になりまして、その洗礼を受けてます。

———でも、そこで物分かりの良さが出過ぎちゃってもね……。

JxJx まあ……、そうですね。無茶して先に行ってズッコケてる姿を見てもらって、「おーい、ここだよ」って手を振ってる感じっていうんですかね(笑)。本当は、動ける人が先に行って、売れて、メンバー全員同じシチュエーションになるという夢を見ていたんですけど、そんなに甘くはなかったですね(爆笑)。でも、そういうのもある限られた時期での夢だったなと思ってますし、うちらに合うのはどうもそのやり方ではない。もっとサステナブルにというか、そのためにちょっと違うやり方でもう一回やりなおすべきかなと思いました。

マコイチ そう思ったのはいつぐらいですか?

JxJx メジャーとの契約が終わったときだから、2011、12年くらいかな。

マコイチ 僕らも「みんなフルタイムでバンドやれたらいいのにな」みたいな葛藤は最近までありました。ただ、最近はその葛藤もちょっと減ってきてる。「どうあれ、このメンバーでないとこの味にならないから、それをまず優先しよう」というモードにようやく慣れてきた。それもYOUR SONG IS GOODがいてくれたから思えることです。こないだのフジロックの演奏を見ていても、いろんなことを経たうえでの大人の余裕が出たグルーヴ感を感じました。僕らも続けていけばもしかしたら10年先にあんな風になれるかもしれないって勇気が出てくる。

JxJx バンドって、異なる人たちが集まってるから常に問題は横たわっている。若くて夢中になってるときはそこにまったく気がついてないんだよね。勢いがあって楽しいし、むしろドタバタをドラマチックに感じていた。バンドという器にもいろんな色がついていって、思いがけない形にもなり、限界まで膨らんでいく。だけど、ある日「もう無理だ」となって、バンドをやめたくなることが僕にもあった。でもあるとき、「実はこれ、長い人生のなかでは〝ちょっとした面白い瞬間〟くらいの出来事なんじゃない?」と思ったんだよね(笑)。若い時にバンドって、他に比べものにならないくらいめちゃくちゃな楽しいものじゃないくらいに思ってたんだけど、家族と公園で遊んでる楽しさも同じくらい尊いし、愛おしいものじゃないのかな、ってね。

マコイチ あー、なるほど。

JxJx 音楽やバンドが、自分のなかであまりにも大そうなものじゃなくなったとき、なんかちょっと違う感覚になれるし、次に進めたというか。それって後ろ向きなことじゃないんだよね。正直、このコロナ禍でめちゃくちゃ凹んだし、うちの次長(シライシコウジ)が脱退することになったときもいろいろ考えた。若い頃だったら「いや、いける! 頑張ろう!」みたいな言葉をかけてただろうし、もちろん「俺たちまだ何にもはじまっちゃいねえよ!」的なマインドは創作する上では追い風になるんだけど、ここは「まあ、ちょっと待て」だな、と。彼の人生を考えたら、今後に違う面白さだっていっぱいあるし、バンドも十分にやったんじゃないかと思ったんだよね。その面白さは比べるものじゃない。

マコイチ すごく腑に落ちました。だからかな、個人的に最近のYOUR SONG IS GOODのライブを見ると海外のバンドみたいだなとよく感じるんですよ。音楽が普通に生活の一部にある、みたいな感じ。公園に遊びに行く、料理を作る、そういうのと同じ空気のままステージに上がってる感じがちょっとしてて、JxJxさんが今してくれた話は、まさにそういう境地だなと。まさに20周年で〝衣・食・住・音〟になってる。

JxJx お! まさかのそこ!(笑)

マコイチ でも、それが音楽が人生の一部になっていくということなんですかね。そう考えれば、みんながちょっと気持ちが軽くなるし、生活と同じように価値があるから逆に音楽に対しても手を抜くとかにもならない。仮に人生に10個くらいやることがあるとしたら、そのひとつをバンドに使ってくれてればいい。そんな気がしてきました。

JxJx そういうことに気がついたのは本当に最近。それまでは、ずーっと肩に力入ってたから(笑)。でも、続けてたから気付けたんだと思ってます。

マコイチ でも、YOUR SONG IS GOODのタフさは、その肩に力が入っていた時期に鍛えられてる部分もあるんじゃないですか? 僕はまだ全然肩に力入ってますから(笑)

JxJx 思い出野郎Aチームは今、バンドとしていい状態に見えるし、これから楽しみだな。

マコイチ ありがとうございます! いろいろあるけどちょっとずつ前進できている気がしてきました(笑)。いや、それにしても、カクバリズムもYOUR SONG IS GOODも20周年はすごいっすよ。20年前は僕、16歳ですから。

———その頃にスタジオですれ違ってたのもすごいですけど。

JxJx 間違いなくヒノーズのあの狭い階段を上ってた。

マコイチ スタジオの下はカレー屋でしたね(笑)

JxJx その前はレンタルビデオ屋ね(笑)

———もしや10年後にカクバリズムに入る誰かが今マコイチの周りをうろうろしてるのかも。

マコイチ そうですよね。でも、40周年のときにJxJxさんみたいなアドバイスはできないですけどね。

みんな 40周年かー!(頭を抱えて爆笑)

構成:松永良平

YOUR SONG IS GOOD / 思い出野郎Aチーム

ライブ情報

Diff’rent Strokes

2023.03.04(SAT)
KAKUBARHYTHM presents
"Diff’rent Strokes"

東京 LIQUIDROOM

OPEN / START

17:00 / 18:00

TICKET

5,000円(税込)ドリンク代別途必要 /入場特典あり
■ 【抽選制/電子紙併用】オフィシャル1次先行 1/24(火)18:00〜2/5(日)23:59
チケット受付URL :こちらから

■ 一般発売 2/11(土)10:00

※中学生まで親御様の同伴に付き以下無料

LIVE

YOUR SONG IS GOOD / 思い出野郎Aチーム

DJ

DISCO MAKAPUU / 凸凹

来場特典 - ステッカー2枚セット

来場特典 - ステッカー 来場特典 - ステッカー
PAGE TOP