連なる生、散らばる魂。髙城晶平

このアルバムの出発点は、2016年末の全国ツアー『Modern Steps Tour』に端を発します。このツアーを機に、ライブ編成が新たになり(ceroにとっては4度目の脱皮、のようなもの)それによって楽曲も変化しました。荒内くんによる楽曲「魚の骨 鳥の羽根」は、その変化がもっとも顕著にあらわれた最初のものです。複層的に組まれたドラムとベース、それにパーカッション。その上に男女混声のコーラスが折り重なっていく。その渦中にあって、ぼくはこれまで感じたことのない不思議な感覚を獲得しはじめていました。

「我々は幾層にも折り重なった生を生き、かつ一人一人が個別の魂を宿している。」それが、“Poly Life Multi Soul”の僕なりの解釈です。それは、これまで幾度となく繰り返されたセッションのなかで僕が得た実感でもあります。アルバムに収録された楽曲は、手法は様々ながら、全てその感覚に従って作られたと言っても過言ではありません。肯定にも否定にも偏らず、その感覚を混じり気なしにパッケージすることが、今回の暗黙のテーマだったように思います。

ステージの上で、あるいは制作中に、身体を動かすことで音楽の構造に取り込まれる面白さに気づかされました。それは今作を楽しむ上で重要な要素のひとつです。歌のなかでも“ダンス”にまつわる言葉が何度となく出てきますが、それは必ずしも髪を振り乱して舞い跳ねることを指すわけではないと思います(それも最高ですが)。“ダンス”は“振舞い”と言い換えてもいいんじゃないでしょうか。生が連なり、魂が散りばめられた空間で、どんな振舞いが気持ちいいのか。そこに立ち返ること自体が、すでに“ダンス”なのだと、このアルバムは教えてくれました。

前回のアルバムからの3年間は、個人的には子育てと共にあったこともあり、最初こそ不安や抑圧を感じることもありましたが、最終的には今までで一番好奇心に胸躍る制作になりました。“Poly Life Multi Soul”な景色は、家族なしには見えてこなかっただろうなと今にして思います。きっと僕以外のメンバー、スタッフも同じようにいろんな出来事を経てここに至っているに違いありません。まずはお互いの苦労と奮闘をねぎらいつつ、これからもっと広がっていくであろう景色に想いを馳せて発売を待ちたいと思います。
とてもceroらしい作品です。楽しみにしていてください!