ミュージックビデオ MUSIC VIDEO

初回限定盤のDVD『Wayang Paradise』の収録曲より“(I Found it )Back Beard”

予告編 ALBUM TRAILER

アルバム情報 ALBUM INFO

3rd Full Album Obscure Ride

3rd Full Album
Obscure Ride
【初回限定盤】
CD+DVD | 3148円+税 | DDCK-9005
【通常盤】
CD | 2685円+税 | DDCK-1043

  • 01. C.E.R.O
  • 02. Yellow Magus (Obscure)
  • 03. Elephant Ghost
  • 04. Summer Soul
  • 05. Rewind Interlude
  • 06. ticktack
  • 07. Orphans
  • 08. Roji
  • 09. DRIFTIN'
  • 10. 夜去
  • 11. Wayang Park Banquet
  • 12. Narcolepsy Driver
  • 13. FALLIN'

【初回限定盤 DVD】
Wayang Paradise
Directed by 大関泰幸

  • 01. ワールドレコード
  • 02. わたしのすがた
  • 03. exotic penguin night
  • 04. マイ・ロスト・シティー
  • 05. Contemporary Tokyo Cruise
  • 06. roof
  • 07. Bird Call
  • 08. outdoors
  • 09. cloudnine
  • 10. マクベス
  • 11. (I Found it)Back Beard
  • 12. あとがきにかえて

初回特典 BONUS

タワーレコード全店
		『Obscure Ride』の初回店頭入荷分の
初回限定盤をお買い上げのお客様に
先着でCD音源「街の報せ」をプレゼント!
な・な・な・んと〜〜〜音源です!

disk union ショルダートート付きセット
初回限定盤CD+ショルダートート
本 秀康さんの『Obscure Ride』発売記念
イラストが入ったトートバッグのセット!
SET PRICE:  ¥4,400(include tax

その他店舗特典
HMV全店:素敵なステッカー
TSUTAYA 各店:ナイスなステッカー ※取り扱い店舗にご確認お願いします。
カクバリズム・デリヴァリー:素晴らしいステッカー
※ステッカー各種VERが違います。
※特典が付く店舗は発売前まで随時更新していく可能性あります!

インストアイベント INSTORE EVENT

2015年5月26日(火)
【cero / タワーレコード渋谷店地下でのインストアトークイベント出演】
「塔台モトクロス」第一回~おざぶは一人一枚やで~

【日時】 2015年5月26日(火) 21:30~
【場所】 タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUCIO
【出演】 MC.sirafu(片想い、ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり)、行達也(タワーレコード)
    ゲスト:cero 、角張 渉(カクバリズム)
【内容】 ceroの新作『Obscure Ride』を紐解くアレやコレに行達也とMC.sirafuがメンバーに直撃!
【配信URL】 http://www.towerrevo.jp
【観覧】 入場フリー(入場の際、ドリンク代500円を頂きます。)
【参加方法】 イベント開始30分前に、タワーレコード渋谷店1F階段前にご集合ください。入場後、床にお座りいただく形となります。敷物(座布団、新聞紙、ビニール袋等)をご持参くださいませ。

※当日、会場での敷物(座布団、新聞紙、ビニール袋等)のご用意はございませんので、ご了承ください。
※今回のイベントは終演が23時以降となりますので、18歳未満及び高校生以下の青少年のお客さまは、保護者同伴でも ご入場いただけません。
※イベント入場時に身分証明書のご提示をお願いする場合がございます。

会場内で5/27発売 cero ニューアルバム『Obscure Ride』の販売を行います。
タワーレコード渋谷店特典:ステッカー

2015年5月29日
【タワーレコード新宿店 / Inter FM「Night Drifter」】
cero「Obscure Ride」リリース記念
『Night Drifter』公開収録インストアイベント開催!

【日時】 5月29日(金)21:00~
【場所】 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
【参加方法】
タワーレコード新宿店にて5/27発売「Obscure Ride」初回盤または通常盤をお買い上げの
お客様(予約者優先)には特典引換券をお渡しします。
引換券をお持ちの方にはイベント終了後に「Night Drifterスペシャルステッカー」を
プレゼントします。
※追加インストアイベントもありますので、決まり次第お知らせします。

日時:2015年6月19日(金)20:00スタート
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
内容:トーク&特典引換

司会:角張渉

 

参加方法:ご予約者優先でタワーレコード梅田NU茶屋町店、梅田大阪マルビル店、難波店、神戸店、

京都店にて、05月27日(水)発売(05月26日(火)入荷商品)のcero「Obscure Ride」初回限定盤(DDCK-9005)または通常盤(DDCK-1043)をお買い上げの方に先着で「イベント参加券」を配布いたします。
イベントの観覧はフリーとなっておりますが、「イベント参加券」をお持ちの方は優先で会場にご入場いただけます。

また、イベント参加券をお持ちのお客様のみイベント終了後に開催する特典引換へご参加いただけます。

 

・イベント当日は、お渡ししたイベント参加券を忘れずにお持ちください。
・入場番号は購入順となります。(ご予約された方は優先的に確保します)

・ご予約のお客様には、商品購入時にイベント参加券を差し上げます。
・ご予約で定員に達した場合、その後に商品をご予約・ご購入いただいてもイベント参加券は付きません。
・アーティストの都合により、内容等の変更・イベント中止となる場合がございますので予めご了承ください。
・店内での飲食は一切禁止とさせていただきます。
・小学生以上はお1人様1枚、イベント参加券が必要となります。
・6歳児以下の児童の入場はご遠慮下さい。

・商品入荷後のイベント参加券のお取り置きは固くお断りさせて頂きます。

・イベント参加券は各配布店舗をアルファベットで分けさせていただきます。

 ご入場の際は、アルファベットの整理番号順で各店舗別に整列していただき、各配布店舗数同時入場となります。

 

問い合わせ先:タワーレコード梅田NU茶屋町店 06-6373-2951

インタビュー SPECIAL INTERVIEW

<前編 2015.05.25 update>

 『Obscure Ride』。この、甘美なサウンドの上で奇妙な物語が展開するceroのサード・アルバムは、果たして何のメタファーなのだろう。もちろん、小難しいことなど考えなくても、ニュー・ソウルからRobert Glasperを筆頭とする新しいクロスオーヴァーまで、ブラック・ミュージックの歴史に対する瑞々しい好奇心によって、これまでチェンバー・ロックやエキゾチック・ミュージックといったジャンルで積んできた経験を、さらに発展させた本作を楽しむことは出来るはずだ。しかし、あなたは、メロウ・ダンサーにうっとりと身体を揺らしながら、次第に、歌詞の端々に漂う不穏さが気になってくるに違いない。まるで、「約束忘れちゃいないかい?」(「C.E.R.O」)と囁く誰かの声が耳にまとわりついて離れない歌の主人公たちのように。そんな、ポップかつ〝Obscure〟なアルバムの読み解き方について、ceroの3人――髙城晶平、荒内佑、橋本翼に話を訊いた。

――では、インタヴュー、よろしくお願いします。……いや、それにしても、凄いアルバムだと思います。

 

髙城 おっ、やった。

――ポップでメロウでありながら、背景にはコンセプトが複雑に張り巡らされている作品だよね。

髙城 そうですね。自分たちでも段々と全貌が掴めてきたかな。最近、通して聴いてなかったんですけど、今日、ここに来るまでに聴いてみたら普通に「良いアルバムだな」って思えました。

 

――まず、アルバムの構想はどういうふうに立ち上がっていったか、というところから訊きたいなと。ceroの場合、アルバムをつくる上で、音楽的な興味と同じぐらい、物語をつくることに対する興味が大きいと思うんですけど、まずは後者について教えて下さい。

 

髙城 はい。『Orphans/夜去』のインタヴューでも言ったように、去年、アルバムの曲をつくるために何回か合宿をやったんですね。それに合わせて詞も書いていったんですけど、作業の最初の方から頻出するワードが妙に決まっていて。「影がない」とか、「忘れてしまった」とか、「思い出せない」とか……。それで、次のアルバムのキーワードのひとつには〝忘却〟があって、そのテーマは、前作『My Lost City』の最後の曲――「わたしのすがた」の延長線上において展開することになるんだろうなという感じがしてきたんです。つまり、『My Lost City』はパラレル・ワールドの崩壊についてのアルバムだったわけですけど、「わたしのすがた」で夢から覚めたように現実に戻る。そして、その続きとして、今度は、別の世界で体験したことをデジャヴとして感じつつも、それが何を意味するのか分からないもどかしさの中で生きる人々を描きたいなと。一方で、パラレル・ワールドから、かつての約束みたいなものを果たしにやってくる誰かがいて、彼らとの遭遇があって。そういったコンセプトが、合宿の中で段々と浮き彫りになっていった感じでしたね。

 

――『My Lost City』は、〝3.11〟という現象に対してceroなりに落とし前をつけようとしたアルバムでもあったよね。そして、「わたしのすがた」で歌われた、「あーなんか いっさいのがっさいが/元通りになったようなこの街」「なにもかわらんところが/何より不気味で Feelin’ down」という違和感は、同作が発表された2012年10月の段階で既に〝3.11〟をなかったことにし始めていた東京の現状に対するリアクションだった。『Obscure Ride』に関してはさらにその後……要するに、ポスト〝ポスト・3.11〟を描こうという意識があったの?

 

髙城 いや、それが僕にはまったくなくて。

 

――例えば、〝忘却〟という言葉は、今年の3月……東日本大震災から4年目のタイミングでも盛んに使われていたよね。

 

髙城 そうですよね。忘却に抗うとか、あるいは、被災地のひとたちにとっては忘却がある種の治癒になっているとか。

 

――ただ、それは意識していなかったと。

 

髙城 うん。オレにとっての2014年は、何よりも母親が癌を患ってどうなってしまうのか分からない、またそれと並行して子供が出来て、という1年だったので。もうそこしか見えていなくて、世間のことはあまり考えられなかった。だから、『Obscure Ride』に自分の深層心理が関係しているとしたら、それはやっぱり、パーソナルな問題なんじゃないですかね。もちろん、『My Lost City』の世界観を引き継いだ上でつくっているわけなんで、図らずもそういった世間の流れとリンクしているところもあると思いますけど。

 

――なるほど。『Obscure Ride』は制作に入る時点で明確なコンセプトがあった作品だと思ってたんだけど、そうではないと? 歌詞にしても今まで以上に伏線が凝っているでしょう。

 

髙城 順を追って話すと、最初の合宿であらぴー(荒内)が3曲目の「Elephant Ghost」を持ってきて。ほぼほぼ出来上がっていたんだけど、「詞の一部分が空いているから一緒に考えてくれないか」って言われて、音を出す前にロビーで2人で作業をして。その際に「なぜあなたには影がないの」というラインが浮かんできた。それで、「次のアルバムはそういうことをテーマにしたいんだよね」みたいなことを話したのは覚えています。だから、その時点で何となくコンセプトは共有していたのかな。

 

――「なぜあなたには影がないの」っていうのは、何と言うか、不気味な描写ですけど、髙城くんとしては当初からそこに具体的な意味を込めていたというよりは、即興的に出てきた言葉に引っぱられていったという感じ?

 

髙城 そうですね。「なぜあなたには影がないの」というラインを思い付いた時に、それが何のメタファーとして機能するのかは分からなかったんですけど、とにかく、そういった違和感を持って現れた人物がいて。彼らは同じ現世で生きているものの、違うレイヤーにいるような存在で、自分たちに何かを伝えようとしてくる。そして、彼らは当初、不気味な存在として曲の中にちらほらと出てくるのが、段々とそんなに恐ろしい存在ではないことが分かって、身近に感じられるようになって。何かを伝えようとしていたのも、「遊ぼう」っていう素朴な約束を果たしにやってきただけなんだと知る……。そんな話の筋がぼんやりと頭の中にあったんですよね。

 

――それが、アルバムをつくっていく中で形を成していったと。

 

髙城 連想式でした。例えば、〝影がない〟っていうラインから、〝影絵〟に興味が湧いて。そこから、去年やったワンマン「Wayang Paradise」(2014年12月21日/22日、<EX-THEATER ROPPONGI>)で、〝Wayang Kulit(ワヤン・クリ)〟っていうインドネシアの影絵芝居を日本で手掛ける川村亘平斎さんに出演してもらうアイディアに繋がって。そして、そのステージで影絵が大写しになっているのを目の当たりにして、自分の中でイメージがより具体的になった。「そういうことか」と。『My Lost City』では、パラレル・ワールドとこっちの世界の間には境界線が引かれていましたけど、実はそれは影と自分自身の関係と同じで表裏一体なんだって、〝影〟という概念に対してより意識的になっていったんです。

 

――紙資料では、テッド・チャン『バビロンの塔』(『あなたの人生の物語』、ハヤカワ文庫SF)の一節を引用していたよね。以前、髙城くんが読書についてのインタヴューで「好きな小説はリアリティがあるもの」「SFはあまり通ってきていない」(『読書夜話』、Pヴァイン)と言っていたので、意外な作家を引っぱってくるなと思ったんだけど。

 

髙城 <Roji>の常連のミノさん(DJ MINODA。MOODMAN等と共にパーティ<SLOWMOTION>を主催)がSFに詳しくて、お薦めしてもらったのがテッド・チャンで。それで、読み始めたらその一節が出てきて、まさに、『Obscure Ride』で歌っていることにばっちり合っていたんで引用したんです。正確には何と書いてあったんだっけ? (資料をめくりながら)そうそう……「生まれてはじめて、夜の正体を知ったのだ。夜とは、大地そのものが空に投げかける影であることを」。

 

――なるほど。では、『Obscure Ride』の収録曲に沿って、さらに詳しく訊いていきたいと思います。


■「C.E.R.O」

 

――まず、1曲目はその名も「C.E.R.O」。髙城くんの作詞・作曲で、電車の音で始まりますね。

 

髙城 今回、僕らがスタジオに缶詰になっている間、塁(藤田塁/カクバリズム)さんにフィールド・レコーディングをお願いして。この(インタヴューでも回していた)ローランドのテレコで色々なところを回って音を録ってきてもらったんです。ちなみに、『Obscure Ride』っていうアルバム・タイトルは最後の方に出てきた案で、最初は『Traffic』っていう案が有力だったんですね。車とか、オートバイとか、歌詞に乗り物がたくさん出てくるっていうこともあって。

 

――それで、塁くんに電車の音を録ってきてもらったと。

 

髙城 そうそう。「考えが浮かんだり消えたりする」とか、「行ったり来たりする」とか、〝往来〟って意味でも『Traffic』っていうタイトルはアルバムの内容を言い当てていると思ったんで、塁さんに、「電車だったり車だったり、せわしないところの音を録ってきてくれ」って言ったんです。

 

――そのフィールド・レコーディングはアルバムの他のパートでも使っている?

 

髙城 例えば、「Wayang Park Banquet」の頭のざわざわしている音は、花見の様子を録ってきてもらったもので。フィールド・レコーディングの音を使った理由としては、もうひとつ、閉鎖的な作品にしたくなかったってのもあったんですよね。外の音を混ぜることで、エアーを感じさせるというか、風通りを良くするというか。それで、ちょうどレコーディングをしていた頃の、季節の変わり目のふわふわした感じを入れたいなと思って、花見の音を。

 

――ちなみに、「C.E.R.O」は、これまでのアルバムのオープニングと雰囲気が大分違うよね。曲調もドロッとしたファンクだし、髙城くんの発声もドスが効いていて。

 

髙城 なんかヌルっと始めたいな、というのはありましたね。リハーサルの音出し的な感じで。

 

――ああ、仮ミックスの段階では、音出しから始まっていたよね。

 

髙城 うん。最初は、「音を調整しているうちにふわっと始まるみたいにしよう」とか言っていて。何か、始まりらしい始まり……〝ドカーン!〟みたいな感じよりも、気が付いたら始まっているような感じが合うアルバムかなと。

 

――歌詞は、アルバムのテーマを前以て説明しているような感じ。

 

髙城 俯瞰するような歌詞ですよね。そこは『WORLD RECORD』と似ているかもしれない。あのアルバムでも、最初の「ワールドレコード」って曲で全体を俯瞰したような言葉が出てくる。まぁ、『My Lost City』にしてもそうだし、ceroとしては、最初と最後の曲は作業の終盤でピースをはめるようにつくるっていうのがいつものやり方ですね。今回も同じで、「C.E.R.O」と(アルバムのラストの)「FALLIN’」は、他の曲の内容を大体分かった上で歌詞を書きました。「C.E.R.O」に関しては目次をつくるみたいな感じっていうか。

 

――曲調は、やっぱり、D'Angelo And The Vanguardの『Black Messiah』を連想したな。

 

髙城 実際、あのアルバムは凄く聴いてたし、影響はあると思います。ただ、他の楽曲に対しても言えることなんですけど、今回の新しい試みとしては、まずは譜割りを考えずに歌詞を書いて、そこからメロディをつくるっていうことをやっていて。「C.E.R.O」のつくり方はまさにそうで、歌詞とコード進行が出来たら、ラッパーみたいにデモのトラックを何回も何回も再生して、その上で歌詞を呟いてみて、段々とメロディが生まれてきたら、その時点で録るっていう。

 

――確かに、今回、高城くんの歌詞は特殊な譜割りが多いよね。即興っぽいっていうか。

 

髙城 重住ひろこ(Smooth Ace)さんにコーラスで参加してもらったんですけど、「譜割りがめちゃめちゃ難しい」と仰ってましたね。それは、日本のラップに影響を受けているところもあります。

 

――なるほど。ただ、いわゆる日本のラップともまた違ったルートで、ブラック・ミュージックの翻訳をやっている感じがある。あと、「C.E.R.O」でもうひとつ気になるのが、フックの〝Contemporary Eclectic Replica Orchestra〟というバクロニム。このラインは、『WORLD RECORD』収録曲「ワールドレコード」に出てくる〝Contemporary Exotica Rock Orchestra〟を歌い変えたものでもあるわけだけど、現在のceroの音楽性を的確に言い表しているよね。

 

髙城 そうですね。出来上がりつつあるアルバムの全体を見渡してみて、「これから始まるアルバムは以前のceroとは違うよ」ってことを最初に宣言しておいた方がいいかなと思ったんですよね。少なくとも、今回は〝Contemporary Exotica Rock Orchestra〟ではないだろうと。だから、その名前は伏せて、一時改名。まぁ、〝cero〟って名前はそれくらい曖昧なものなんで。

 

――『Obscure Ride』ってタイトルも、最初は「ceroっぽくないな」「意外だな」と思ったんだけど、実は、〝Exotica〟も〝Eclectic〟も〝Replica〟も〝Obscure〟もみな同じような意味で。要は〝混ざったもの〟っていう。そう考えると、ceroは一貫しているなと。

 

髙城 うん。「Wayang Park Banquet」みたいに、実は〝Exotica〟な要素もあるアルバムですしね。

 

――そう言えば、「C.E.R.O」は電車の音で始まるけど、終わりの方には会話が入っているよね。

 

髙城 あれは浅ちゃん(浅井一仁/映像ディレクター)と竜ちゃん(鈴木竜一朗/カメラマン)とツンちゃん(惣田紗希/イラストレーター、グラフィックデザイナー)とオレの会話。当初、今回はスキットで間を繋いでいくような作品にしたいと考えていて。最終的に、それだと説明が過多になり過ぎるなと思って、結局、ほぼフィールド・レコーディングしか使わなかったんですけど、これは最後まで残った感じですね。ちなみに、あの会話には意味があって、内容としては、「好きな女の子がいる」「電話しなよ」「じゃあするよ」って……。

 

――演技じゃないの?

 

髙城 いや、演技ですよ、演技(笑)。適当に内容を教えてあとは自由にやってもらった、好きな子に電話を掛けるっていうだけのスキットなんですけど、「C.E.R.O」の舞台は、砂漠の中にある、<Roji>みたいなバーっていう設定で。それで、あそこで掛ける電話が、アルバム8曲目の「Roji」に出てくる「(ここでPhone call)」って歌詞と、プルルル……って電話の音の伏線になってる。

 

――なるほど。

 

髙城 向こうの世界の<Roji>と、こっちの世界の<Roji>が、図らずも間違い電話で繋がってしまうという。

 

――「C.E.R.O」と「Roji」の曲調が似ているのはそういうことだったのか。

 

髙城 そうそう。どちらの世界の<Roji>もムードは同じというか。そういう、パラレル・ワールドとこっちの世界の繋がりを示す仕掛けとしてあのスキットを入れたんですよね。

 

――これまでも、ceroはライヴの特典CD-Rなんかでサウンド・ドラマをつくってきたけど、その試みが生かされているような感じもあるね。

 

髙城 スキットって、それこそ、ヒップホップのアルバムなんかにはいっぱい入ってるじゃないですか。あれは、そもそもラップは黒人同士のお喋りを音楽化したものだから、合間に実際のお喋りを入れるとちょうどいいってことなんでしょうね。De La Soulの『3 Feet High and Rising』とか。

 

荒内 あのアルバムは曲調がバラバラだから、接着剤としてスキットを入れたっていう話を聞いたことがあるけど。最近だと、Kendrick Lamarの『Good Kid, M.A.A.D City』なんかもスキットが重要な役割を果たしてたよね。

 

――Kendrickは、最新作の『To Pimp A Butterfly』にも、2Pacが遺したインタヴューと会話するっていう、メッセージ性の強いスキットを入れてたし。

 

髙城 そういう、スキットみたいなものには凄く可能性を感じていて。今回はこれくらいに留まったけど、音楽だけがただ羅列されているより、スキットを入れることによって表現の幅がより広がるな、という手応えはありました。

 

――そういえば、『My Lost City』の時は橋本くんがフィールド・レコーディングの素材を集めて回っていたよね。

 

髙城 近所の子供が遊んでいる音とか録って。

 

橋本 ただ、『My Lost City』の時はまさに素材として曲の中に入れ込んでいたので。今回の、スキットとして曲と曲の間に入っている感じとはまた違いますね。あと、『Obscure Ride』って聴きようによってはミュージカルみたいでもあるなと。

 

髙城 ああ、スキットがストーリーを展開させて、音楽がそれを繋いでいくみたいな?

 

橋本 そうそう。そんな風にも聴けるかなって。

 

――ちなみに、「C.E.R.O」に続く「Yellow Magus」も砂漠が舞台の曲だね。

 

髙城 だから、『Obscure Ride』の冒頭――「C.E.R.O」、「Yellow Magus」の後、拍手と悲鳴が聞こえて、「Elephant Ghost」が始まるのは、2曲目までは実はスクリーンに映っていた映画で、それが終わってカメラが観客の方を向いて、物語が現実にスイッチするっていうイメージなんです。もちろん、聴いている人がそれぞれに受け取ってくれていいんですけど。


■「Yellow Magus」

 

――では、続いて2曲目の「Yellow Magus」。これは、もともと、2013年12月にEP『Yellow Magus』のリード・トラックとして発表された楽曲で、作詞・作曲は荒内くん。『Obscure Ride』収録にあたっては、新たなアレンジが施されています。当初は〝Smooth Version〟と表記されていましたが、正式には「Yellow Magus(Obscure)」になりましたね。

 

荒内 〝Obscure〟には〝曖昧な〟って意味もあるけど、〝暗い〟っていう意味もあって。「Yellow Magus」は、アルバムの中でいわゆる〝シングル曲〟みたいな感じで突出させたくなかったので、ちょっとトーン・ダウンさせたんですね。だから、「Yellow Magus(Obscure)」と。

 

――「Yellow Magus」に関しても、歌詞が特殊だなぁって思うんですよね。

 

荒内 そうですよね。何の話なのかっていう。

 

――それもそうだし、あと、譜割りも。

 

荒内 ああ、〝サーファー〟って単語を1音に収めちゃうとか。普通、日本語だったら「サー/ファー」で2音必要なんだけど。「Yellow Magus」に関しては、もともと、曲をつくる時に「ラップもありだな」と思って。でも、オレがラップを書いて髙城くんに渡すっていうのはちょっと違うなと。それで、ラップ的にメロディをつくって渡すんだったら良いかなと思ったんですね。つまり、さっき、高城くんが「C.E.R.O」に関して、ラップみたいに即興的にメロディをつくっていったって言ってましたけど、オレの場合は、自分で歌うわけじゃなくて、高城くんに歌ってもらうわけだから、曲を渡す時にメロディをフィックスさせておかなきゃいけないんですよ。そういう不自由さもある一方で、フィックスさせる過程で細かくつくり込むことによって、また別の面白さを得られる。

 

髙城 言葉のグリッドが細かいっていうことだよね。

 

――確かに、「C.E.R.O」の歌にはラフな面白さがあるけど、「Yellow Magus」は細かくつくり込んだ面白さだよね。

 

荒内 オレはメロディに関しては譜面に書けるんですよ。だから、髙城くんの曲はAと2Aでメロディが違ったりするけど、オレの場合は一緒で。「Yellow Magus」もラップ的ではあっても、あくまでも音符に置き換えられる歌で、そこに言葉をはめていくっていうつくり方をしたんです。

 

髙城 なるほど。そこに微妙な違いがあるんだね。

 

――あと、荒内くんの場合、英語の響きを日本語に置き換えていたりするよね。フックの「帆を下げ」が「Once Again」に聞こえるところとか。

 

荒内 うん。メロディが先にある場合、適当な英語で歌った仮歌の感触を日本語に直すと失われるものがデカ過ぎるなって思ったら、似ている響きとちゃんとした意味を持った言葉を時間をかけて探しますね。「帆を下げ」とか、出てくるまでに一週間とかかかったから。

 

髙城 Youtubeに上がってた、大学生がやってるceroのコピーバンドが、めっちゃ、「ワンスアゲイン」って歌ってた。あれ、多分、耳コピでやってるんだろうな。誰かひとりCD買えやっていう(笑)。

 

――小沢健二がライヴで、「ラブリー」の「それで LIFE IS COMIN' BACK 僕らを待つ」を「それで 感じたかった 僕らを待つ」に歌い替えたり、昔から日本で試みられていることではあるよね。桑田佳祐にしてもそうだし。

 

荒内:佐野元春も。あと、やっぱり、日本語の響きに縛られたくないと思ったら、メロディに対してゆったりとした譜割で言葉を乗せていくよりは、詰め込んでいった方が良いと思うんですよ。

 

――昔、よく言われていたのが、日本語の単語は音節が多いので韻が踏みにくくラップには合わないってことで、それに対して先達たちが色々と苦心したわけだけど、ceroもまたその試行錯誤を引き継いでいるとも言えるのかな。

 

髙城 日本語ラップの人たちの礎はデカい。特に、S.L.A.C.K.(5lack)とかSIMI LABとか、最近のラッパーの曲を聴くと、響きとしては英語と変わらないスムースさが生まれてきていて。それを歌モノにも反映できるんじゃないかなって考えたのはありましたね。

 

――やっぱり、日本のラップ・ミュージックからの影響は大きいんだね。

 

髙城 もちろん、さっきも名前が挙がった桑田佳祐さんは昔から好きですし、最近、自分の中で、それと日本語ラップが合流したような感覚があります。

 

――「Yellow Magus」の物語性に関しては、リリース当時、「「Contemporary Tokyo Cruise」(『My Lost City』収録曲)に出てくる舟のその後を描こうと思った」と言っていたけど。そのような楽曲がアルバムの冒頭に置かれているのは、つまり、前作の延長線上にあることを強調したかった?

 

荒内 そうですね……これもそれぞれに解釈してもらえば良いことなんですけど、確かに「Yellow Magus」をシングルとしてつくった時は、「Contemporary Tokyo Cruise」の後の世界を想定していたんです。ただ、今回、アルバムに入れるにあたって、「Contemporary Tokyo Cruise」に出てくる船が出港する前の話としても取れるなと思って。6曲目の「ticktack」は時間の巻き戻しの歌ですけど、「Yellow Magus」で船が座礁して、「Contemporary Tokyo Cruise」で幽霊船になって出てくる、みたいな。

 

髙城 だから、『Obscure Ride』に関しては時系列が何処にあるのかわからないアルバムなんですよね。

 

――『My Lost City』の続編でもあり、『スターウォーズ』で言う〝エピーソード1〟のようなものでもあると。ところで、「Yellow Magus」のアルバム・ヴァージョンを始めとして、今回、橋本くんのギターの感じが以前と変わっているよね。

 

橋本 如何に〝弾かない〟かってことを考えましたね。結構、録り直しましたけど。僕もいわゆるロック的なギタリストではないと言いつつ、最後に向かって盛り上がっていくギター・ソロに慣れちゃってて、そうじゃないものをやろうってなった時に、なかなか、やり方が分からなくて。

 

――いわゆるファンク的な16ビートのカッティングに捻りを加えたようなものもある。

 

髙城 それこそ、〝Obscure〟なリフ、というか。

 

橋本 便利な言葉だなあ(笑)。

 

――〝Obscure〟って、レコード好きには馴染みの言葉だったりするよね。一時期、ミドル・スクールのマイナー・ラップが〝Obscure Rap〟ってラベリングされて高くなっていたし。

 

髙城 〝Obscure Punk〟とも言いますよね。だから、〝Obscure〟って、辞書で引いた時に出てくる意味とはまた違ったニュアンスを知っているひとは知っている言葉ですよね。


■「Elephant Ghost」

 

――そして、3曲目が「Elephant Ghost」。荒内くんの曲で、詞に関しては高城くんとの共作。それで、先程言っていたように、ここで物語が……。

 

髙城 現実にスイッチする。

 

――ただ、描かれるのはタイトルの通り、モンスターというか……。

 

髙城 そう、物語は現実にスイッチしたんだけど、それと共に、侵入者というか、別の世界の異形のものがこっちの世界にやってくるという。

 

荒内 これもさっき言っていたように「Elephant Ghost」は最初の合宿に持っていった曲で、都市から海へ、そして、砂漠へと向かった物語を、また都市に戻したいなと思ってつくったんですよね。オレのイメージでは、「Yellow Magus」の世界に居たはずなのに、ふと目を覚ますと地下鉄に乗っていて。一瞬、蛍光灯が消えるっていう非現実的なことが起こった後に、誰かから手紙を渡されて。それは実は「ワールドレコード」の手紙で。

 

――〝「ワールドレコード」の手紙〟って何だっけ?

 

荒内 「あの子、ふとしたためたラブレター」ってやつ。

 

――ああー。

 

髙城 「あの子、ふとしたためたラブレター/街に空前の大停電を呼び起こすと思い込む」っていうね。そのあと、彼女は手紙をポイってくずかごに捨てちゃんですよ。でも、「Elephant Ghost」で何故かそれを持っている奴が現れるっていう。

 

荒内 ちょっと話が広がっちゃうけど、手紙を渡したのが、実は「Yellow Magus」で行方知れずになった東方の三賢者だったとも考えられるなと。彼らが亡霊となって都市にやって来たっていう。だから、手紙から砂がこぼれる。

 

――楽曲のアイディアとしては、まず、物語があったの?

 

荒内 いや、リズムです。

 

――以前は「アフロビートをJ Dilla以降の解釈でやりたかった」と言っていたよね。

 

荒内 そうですね。あと、YouTubeでFela Kutiのライヴと、東京の夜景をヘリコプターで空撮した画像を観て、この2つのイメージを統合した曲をつくりたいなと思ったんですよね。

 

――土着的なものと、都会的なものを。

 

荒内 オレは曲をつくる時に、相性が悪そうなイメージを2つと言わず3つとか4つとか、統合してつくっていくことが多くて。

 

髙城 そういうコンセプトは『My Lost City』にも繋がるよね。タイトルに引用した(F・スコット・)フィッツジェラルドのエッセイ(村上春樹訳「マイ・ロスト・シティー」)も、都市が自然に囲われていることに気付くというものだったし。あと、表題曲の「My Lost City」も変拍子のアフロビートっていう点で、「Elephant Ghost」に繋がる。

 

――それで、「Elephant Ghost」に関してはその2つのイメージを基にまずはリズムを組み立てたと。

 

荒内 うん。最初は自分で打ち込みでつくりました。拍子は基本的に8/8で、途中、8/7になる。

 

髙城 デモは完成版とほとんど同じ状態でしたね。

 

荒内 それをみっちゃん(光永渉/ドラマー)に聴かせて、2人でスタジオに入って練っていった。


■「Summer Soul」

 

――続く4曲目は、アルバムのリリースに先駆けてMVも公開された「Summer Soul」。これも荒内くんの作詞・作曲です。この、ずっと乗っているノイズはレコードの針音?

 

荒内 そう。「Roji」に「友達が持って来た できたてのドーナツを/ターンテーブルに乗っけて 揺れようよ」という一節があったので、そのレコードのイメージ。それで、針音が左側で、右側でチャラチャラって鳴ってるのは鍵の音。曲に出てくる車のキーですね。

 

――「Elephant Ghost」から一転、日常を舞台にした曲だけど、いよいよここで物語は本格的に現実にシフトするという感じかな。

 

荒内 アルバムの「一見、何の変哲もない日常を舞台にする」っていうコンセプトが決まりつつあった時に、そういえば、オレはその路線の曲をひとつも出していないなと思って書いたのが、この曲でしたね。

 

――「Yellow Magus」とか「Elephant Ghost」みたいなドープな曲に専念していたので、メロウな曲も書いてみようと?

 

荒内 アルバムの物語から切り離して、スタンドアローンでも聴けるR&Bやソウルみたいな楽曲をつくりたかったというのもあります。

 

――「Summer Soul」も、9曲目に入っている橋本くん作の「DRIFTIN’」も、DJ用語で言うところのいわゆる〝メロウダンサー〟で、それが、このアルバムの基調となっている感じはある。

 

荒内 確かに。「Summer Soul」は、ドライブしている時にJoey Bada$$とかIlla Jのインストに合わせて適当に鼻歌を歌っていたら、「サマソー♪」っていうメロディが出てきて、家に帰って形にしたんですよね。

 

――『Obscure Ride』のテーマは難解なようでいて、「慌ただしい日常から逃げ出したくなることってあるよね」みたいな平凡なものとしても捉えられるところが良いと思うんだけど、「Summer Soul」はまさにそういう楽曲で、だからこそアルバムのリード・トラックとしてはぴったりだよね。

 

荒内 いや、実際、オレも生活基盤が変わってちょっと郊外に引っ越したんですけど、以前は家の近くにビーサン(Alfred Beach Sandal)とか友達が何人かいて、夜中に一緒に呑みに行けたり、気軽に都内で遊べる環境だったんです。でも、引っ越して以降は色んな事情で郊外の小宇宙から抜け出せない閉鎖感がずっとあって、現実との繋がりがなくなってくるような、ライトにヤバい状態に陥っていたんですよ。それで、現実との繋がりを取り戻す方法のひとつがドライブで。車にはどこへでも行けそうな万能感があるでしょう。もうひとつが音楽。自分にとっての社会参加はやっぱり音楽活動なんです。

 

――じゃあ、これは個人的な経験を歌った、いわゆるシンガー・ソングライター的な楽曲でもあると。

 

荒内 そうそう。そういう曲を久しぶりにつくりました。

 

――ただ、「Summer Soul」から、この後、アルバムの中で繰り返し出てくる、日常の裂け目から非日常が顔を覗かせるという描写が始まるようにも思ったけど。

 

荒内 そうですね。当初はさっき言ったみたいに、アルバムの物語から独立したものにしようと思ってたんですけど、こうやってはめ込んでみると、やっぱり、繋がりも見えてきて。例えば、2番の歌詞の「彷徨ってるつもりでコーナーを曲がり切った時に雨雲が/山の向こうに見えたけど 降り出したのは天気雨/傘をささずに 濡れたまま歩くひとたち」……。

 

髙城 「やがてすぐ 雨はどこかへ 消えて見たことのない夕暮れに」。

 

――天気雨の中、白昼夢のような光景が窓ガラス越しに展開する。

 

荒内 〝傘をささずに 濡れたまま歩く人たち〟って、「Contemporary Tokyo Cruise」で「いかないで、光よ わたしたちはここにいます 巻き戻しして」と歌っていたひとたち……言ってみれば、津波に飲まれた人達も想起させるなって。

 

――〝狐の嫁入り〟なんて言い方もあるけど、天気雨って昔から非現実的な光景として描かれることが多いよね。

 

荒内 だから、その奇妙な光景を見た瞬間、別の世界の記憶がデジャブとして蘇ってくるという。

 

――ただ、車窓の外の風景なので、一瞬で流れていって、忘れてしまう。

 

荒内 そうそう。そういうイメージです。

 

――ちなみに、これも、メロディはつくり込んでから髙城くんに渡したんですか?

 

荒内 そうですね。

 

――フックで、高城くんの「Cool Down Baby」というフェイクっぽいラインがあるけど……。

 

髙城 あ、それはオレが付け足したのかな。デモが来た時に、〝Summer Soul〟が〝冷まそう〟に聴こえると思ったから「Cool Down Baby」って歌ったんだけど、それは、あらぴーも意図していたんだよね?

 

荒内 うん、一応、掛けてある。

 

――とにかく、「Summer Soul」は、現実感を取り戻すにしても、非現実にトリップするにしても、いずれにせよ別の世界に連れていってくれる音楽という乗り物を描いているという点でも、『Obscure Ride』を象徴する楽曲だね。

 

髙城 何と言うか、目的地に着いたら忘れちゃうような、移動中に生まれる考えってあるじゃないですか。あらぴーの場合は、車の中で「Summer Soul」のメロディが浮かんで、無事、それを家まで持って帰ってこれたからこうして形になっているわけだけど、ならないものもいっぱいある。オレも自転車に乗ってて、「あ、このメロディ!」って浮かんでも、家に帰ったら「なんだっけ?」って忘れちゃうことが多くて。でも、移動中に頭の中で鳴ってたメロディは最高なはずで、「Summer Soul」にはその感覚がパッケージング出来てたら良いなぁと。

 

――移動しながら考え事するのって不思議な感覚だよね。内省的であると同時に、動的というか。『Obscure Ride』の、ナイーヴなのにグルーヴィという感覚はそれに近い。

 

髙城 そうですね。だから、家で、スピーカーの前で聴くのもありなアルバムだけど、BGMとして外に、街に持って行って、風景とミックスすると凄く良い感じになるんじゃないかなって、今日、ここに来るまでに歩きながら聴いていて思ったり。グルーヴが歩調と合っているというか。

(interview by 磯部涼)

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

<中編 2015.06.08 update>

 

――インタヴュー冒頭で、『Obscure Ride』の発端となった物語的な興味について訊いたので、この辺りで改めて音楽的な興味についても訊いておきたいんだけど、やっぱり、今作のポイントのひとつはブラック・ミュージックの要素を積極的に取り入れたことだと言っていいよね。

 

髙城 そうですね。

 

――髙城くんと荒内くんがD'angeloのようなネオ・ソウルや、Robert Glasperのような新しいクロスオーヴァー・ジャズにハマったり、小沢健二の『Eclectic』を再発見したり……そして、その影響下で書いた新曲のために、新しいリズム隊として厚海義朗と光永渉を迎え入れたり、という流れについては、「Yellow Magus」リリース時のインタビューでも語ってもらったので詳細は省くとして、そのインタヴューを読み返して印象的だったのが、荒内くんの「義朗さんとみっちゃん(光永)と話していて楽しいのは、彼らがブラック・ミュージックに詳しくて、リズムの解像度が凄く高いからなんですよ。〝譜面に起こすとこのリズムはこうなってるんだよ〟って解説してくれたり、黒人の独特なノリっていうのは、実は感覚だけじゃなくて、もっと論理的に追求出来ると教えてくれた。それを聞いているうちに、段々と、僕もブラック・ミュージックが面白くなってきて」って発言。日本人がブラック・ミュージックにアプローチする時って、〝黒さ〟みたいな抽象的な感覚に答えを求めがちだけど、それはもっと論理的に解析出来るはず、というのは、ブラック・ミュージックの精神性や社会的背景に真正性を求めるのではなく、ceroにとって、あくまでも音楽そのものが重要だったということでもあるでしょう?

 

髙城 確かに、こういう方向に踏み出してみて、周りの……「止めときなよ」とまでは言われないんだけど、〝半笑い感〟っていうか、「せいぜいがんばんなよー」みたいな雰囲気を何となく肌で感じることはあって。あるいは、〝タブー感〟? 「理由なき者がこの音楽をやってはいけない」みたいな。ピチカート・ファイヴが『Bellissima!』(88年)でブラック・ミュージックを取り入れた時に、「仏作って魂(ソウル)入れず」って酷評されたそうですけど、それと同じことですよね。

 

――ただ、『Bellissima!』のキャッチコピーが「汗知らずスーパー・スウィート・ソウル」だったように彼らはそういった批判は織り込み済みで、それは、ceroにしてもそうでしょう。

 

荒内  Talking Headsが『Remain in Light』を出した時も、「黒人のミュージシャンを連れてきてアフロビートをやるなんて文化搾取だ」みたいな批判があったらしくて。でも、実際は、あのアルバムはほとんど白人のメンバーだけでつくってるんですよね。だから、その批判は、アフロビートをロジカルに分析して、テクニカルな鍛錬を積めば、まるで〝黒人のミュージシャン〟がつくったように聴こえることを逆説的に証明してるのかなと。今回、例えば「Elephant Ghost」を制作しながら考えていたのが、日本人がブラック・ミュージックにアプローチすると、スピリチュアルな方向に引っ張られていって、結局、音楽的には本国でやっているものの再生産以下で終わりがちだってこと。オレはブラック・カルチャーももちろん好きだしリスペクトもしているけど、やっぱり、興味があるのはブラック・〝ミュージック〟。音楽だけにちゃんと向かい合ったらオリジナルをアップデート出来る可能性があるんじゃないか、という思いがありました。

 

――「Contemporary Eclectic〝Replica〟 Orchestra」と名乗っている背景には、〝Replica〟だと自覚することこそが文化的に誠実だし、それによって音楽的にも前進出来るんじゃないかという思いがあるわけだね。ちなみに、橋本くんは、『Yellow Magus』の頃は「ブラック・ミュージックの気持ち良さもようやく分かってきたところ」と言っていたけど、『Obscure Ride』に提供した楽曲に関しては、「Orphans」がMockyの「Birds of a Feather」を、「DRIFFTIN’」がMacky Feary Bandの「You're Young」を下敷きにしていたりと、AOR的というか、ブラック・ミュージックとの絶妙な距離感が感じられて興味深かった。

 

橋本 そういうものも好きですし、もともと、Marvin GayeやAl Greenの華やかだったり甘酸っぱかったりするところも好きだったんですよ。でも、いわゆる〝黒さ〟みたいなものが全然分からなかったので、勝手にブラック・ミュージックに対して苦手意識を持っていて。それが、2人に「はしもっちゃん(橋本)の好きなものは、ニュー・ソウルって言うんだよ」って教えてもらって、「あ、これもブラック・ミュージックなのか」「何だ、全然いけるんじゃん!」って気付けたのも大きかったです。

 

――ところで、光永渉は本作の要だけど、彼が藤井洋平&The VERY Sensitive Citizens of TOKYOやAlfred Beach Sandalで叩いているドラムと、『Obscure Ride』のドラムはまた違うよね。ceroの時は何と言うか打ち込みを経由しているような感覚がある。

 

髙城 そうですね。ceroの場合は、J Dillaじゃないですけど、サンプラーをノー・クォンタイズで手打ちしたデモを、みっちゃんや義朗さんに渡して研究してもらうっていう手順なんで。みっちゃんは微妙なずらし方とかも忠実に再現しますからね。彼はノリでやるのではなく、ビートを細かいグリッドで解析していくようなひとで、いつも下げてるポーチに自分にしか分からない楽譜みたいなものを入れてて。叩くより、それを見ながら「1、2、3、4」って数えてる時間の方が長いぐらい。

 

荒内 「ちょっと待ってね。1の裏か……」とかメモして、それを見ながら叩いて、身体に入れていくっていう感じだよね。

 

――みっちゃんに訊けって話だけど、やっぱり、Chris Daveからの影響は大きいのかな?

 

荒内 どうなんですかね。「自分は?uestlove派だ」ってよく言ってますけど。

 

髙城 「Chris Daveの影響をなるべく受けないようにしてる」とも言ってたよね。だから、来日公演も行かなかったって。

 

――それだけ、意識してるっていうことか。

 

髙城 そうでしょうね。オレたちにしたって影響は受けつつも、それを如何に自分たちなりに消化するかっていうことを考えてますもん。

 

――では、ceroなりのブラック・ミュージックに対するアプローチがどういうものか、ということについても引き続き考えていくとして、とりあえず、曲解説に戻りましょうか。


■「Rewind Interlude」

 

――さて、5曲目でインストゥルメンタルのインタールードが入ります。

 

髙城 これは、「ticktack」のレコーディングの時に、ビーサン(Alfred Beach Sandal)でもウッドベースを弾いてる岩見(継吾)さんにゲストで来てもらったんですけど、曲を録り終わった後、「せっかくだからこのメンツで、軽く音を出すぐらいの感じでセッションでもしようか」っていうことになって、即興でやったものですね。今回、全曲分あるかどうかは分からないものの、曲毎にこういうものを録っていて。中でもこのテイクは雰囲気が良かったのでインタールードに使いました。

 

――アルバムの流れとしても、「Summer Soul」でひとつ目のピークがあって、このトラックの後、中盤戦に入る感じですかね。

 

髙城 そうですね。ここで1個目のピリオドというか、段落が変わる。


■「ticktack」

 

――続いて、「ticktack」。これは、髙城くんの作詞・作曲ですが、ヴォーカルの譜割がまた独特で。

 

髙城 これはまさに「C.E.R.O」のところで言ったような詞先というか、言葉からメロディを生み出していくような手法でつくった曲ですね。

 

――トラックは3小節ループ。

 

髙城 その構成は歌詞をつくる前からあって。A Tribe Called Questの「Electric Relaxation」を参照したんですけど、あれもトラックは3小節進行じゃないですか。でも、ラップは4小節進行でズレていって、途中で辻褄が合う。いわゆるポリリズムというか、ジャズのソロのようにラップをしてる。あの感じが面白いと思って、「この構成を使って歌ものをつくれないかな?」っていうふうにつくっていった曲ですね。

 

――BPMはそこまで早くないのに体感的に早い感じがするのは、ドラムの打ち方がかなり細かいからかな。

 

髙城 そうそう。不思議なタイム感がある。

 

――そして、その上で、ヴォーカルが漂うようにフロウしていく。

 

髙城 サビの「そんで何か美味しいもの食べにいく/素敵なシャツに袖を通して/ギリギリのラインで保たれる/いくつかの幻想 都市の成り立ち」ってラインとかは、もともと、別の曲のために書いていた言葉とリズムで。そっちは4小節ループなんですよね。それを無理やり入れることで独特のグルーヴになったんじゃないかな。

 

――歌詞の世界観は、「ディアハンター」(10インチ「21世紀の日照りの都に雨が降る」収録/10年)や「good life」(7インチ「武蔵野クルーズエキゾチカ」収録/11年)みたいな以前の曲のように普通の日常を舞台にしているものの、そこに非日常が混線してくるところが『Obscure Ride』のテーマを象徴しているね。

 

髙城 何か大切なことを、一瞬、思い出しそうになるんだけど、結局、ぐだぐだした生活に引き戻されて、「まぁいいか」みたいな感じになるっていうか。日々、遊びに行く約束をしていて、パーティーもあるし、そういうキラキラしたものに絡め取られて、デジャヴが断ち切られていく。

 

――ちなみに、先程のサビは、「そんで何処かダンスパーティに出かける/磨いたシューズに紐を通して/キレキレのステップで交わされる/偽りの喧噪 溶けた会話」という風に展開するよね。このアルバムでは、「C.E.R.O」にしても、「Wayang Park Banquet」にしても、パーティのシーンが繰り返し出てくるように思ったんだけど。

 

髙城 そうかも。単純に、昔に比べてパーティに顔を出すことが多くなったから、そういった風景を描き出すことが出来るようになったっていうことなのかもしれないですけど。

 

――髙城くんは、ここ数年、頻繁にDJをするようになっていたもんね。昔、やけのはらにインタヴューをした時、「何故、歌詞にパーティのシーンがよく出てくるのか」と訊いたら、「普段は外で仕事してるわけじゃなくて、リミックスしたりとか音源つくったりとか、家での作業が中心なわけですよ。それで、週末になると、DJをやって。そういう生活だと、記憶に残ることとか感情が揺れることとか、どうしてもクラブでの出来事が中心になりますよね」(拙著『音楽が終わって、人生が始まる』より)と言っていたのね。今までの高城くんにとってはそれはライヴだったりしたのかもしれないけど、パーティの面白さは最近になって知ったからこそトピックとしてよく出てくるという感じかな。

 

髙城:うん、日常において最近導入された新鮮なものっていう感じですね。件のラインに関しては、ああいう場所での上滑りする会話というか、デッカい音楽がかかっててよく聞き取れないのに、「そうだねー!」みたいな感じで適当に相槌を打つ会話特有のグルーヴ感ってあるよなぁと思って書きました。そういう中で、思い出しかけていたことを忘れてしまう。ただ、それは決して悪い事ではなくて、日常の煩わしさを忘却するっていうのはパーティの大事な機能だと思うし。

 

――また、ここでも、「Elephant Ghost」に続いて〝影のない人々〟が登場します。

 

髙城 「夕暮れの街 流してたら/影のない人々が 川原で焚火していた」。

 

――「Summer Soul」と同じように、奇妙な光景が視界をサッと横切って、でも、すぐに忘れてしまうという。

 

髙城 〝焚火していた〟は、「outdoors」(『WORLD RECORD』収録曲)と繋がるのかな。〝影のない人々〟=〝街のはずれ ランプを燈す奴ら〟みたいな。そういう奇妙なものが常に目の端にちらつくというか、ピントのボケたところにちょっとだけフレームインしてくるような感覚ですね。


■「Orphans」

 

――6曲目は髙城くん作詞・橋本くん作曲の「Orphans」。この曲についてはシングルとしてリリースされた際にも詳しく訊いたけど、5年くらい前のデモが復活したという話だったよね。デモと完成したヴァージョンではどれぐらい変わっているの?

 

橋本 オレは変わったイメージはないけど、どうなんだろう?

 

髙城 雰囲気はそのままだけど、構成は結構変わったよね。

 

橋本 ああ、そうか。髙城くんに歌詞を書いてもらうために渡した時点では、メロディのパターンがもう1個くらい多かったんですよ。それを省いてもらったり、構成を変えてもらったりしたんだ。

 

髙城 デモでは、「あぁ 神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて/あぁ わたしたちは ここに いるのだろう」っていうサビの印象的なメロディはCメロのような使い方で、1回しか出てこなかったんですよ。はしもっちゃんの曲って、そういう、凄く良いメロディが一瞬だけ出てきて、その後、繰り返されないっていう贅沢なパターンが多くて。それはそれで個性なんですけど、「Orphans」に関しては、「もったいないからもう1回出てきてもいいんじゃない?」って構成を変えてる内にそこがサビになった感じでした。

 

――髙城くんの歌詞の譜割も、この曲ではメロディを丁寧になぞるように、押し出すように書かれているよね。

 

髙城 そうですね。今回のアルバムでは、「Orphans」の他にも「DRIFTIN’」と「Narcolepsy Driver」の計3曲ではしもっちゃんがつくった曲に詞を書いたんですけど、その場合は、はしもっちゃんからもらうデモに既に鼻歌が入ってるから、自分で作詞・作曲をする時みたいにラップ的な手法(「C.E.R.O」の項参照)にはならないっていうか、メロディに合わせて、決まっている文字数の中で構成していく、より作家っぽい書き方にはなります。

 

――ただ、シングルのインタヴューの時に言っていたのは、もともと、単独で書いていた詞があって、それを、橋本くんのメロディにはめ込んで行ったという話だったよね。歌い出しの「終日 霧雨の薄明りが包む 白夜の火曜/気が狂いそうなわたしは家出の計画を実行に移してみる」ってラインとか、まさに、単独の〝詩〟としても成立するような完成度があるし、それが曲と合わさることによってさらに趣き深くなっている。

 

髙城 『Obscure Ride』は短編集的というか群像劇的な作品だと思うんですけど、色々な登場人物が出てくる中で、「Orphans」は現実に違和感を感じて生きている高校生2人にフォーカスを当てた1曲ですね。例えば「Summer Soul」の主人公とはまた違う。

 

――1番と2番で視点が変わるっていうところが、このアルバムが群像劇であることを示唆している曲だとも思ったな。ちなみに、橋本くんがもともと持っていたイメージのようなものはあったの?

 

橋本 具体的にはなくて、〝夜っぽい〟みたいな抽象的な感じですかね。そういう歌詞にしてくれれば良いなと思っていたら、結果的には更に世界観を広げてくれたというか。あと、髙城くんの歌詞が上がってきて驚いたのが、オレの鼻歌みたいなメロディに忠実に言葉をハメてくれたんですよね。「DRIFTIN’」にしても、「Narcolepsy Driver」にしてもそうなんですけど。

 

――その点でひとつ訊きたいのは……ちょっと先回りになっちゃうんだけど、「Narcolepsy Driver」のAメロは、それこそ、ラップ的と言っていいようなものだよね。でも、「オレの鼻歌みたいなメロディに忠実に言葉をハメてくれた」ということは、あれは、髙城くんがいちからつくったわけではなく、橋本くんのデモの段階で既にラップ的だったということ?

 

髙城 そうなんですよ。はしもっちゃんが凄いのは、デモに鼻歌でラップを入れていて。

 

――リリックはないけど、フロウだけしてるんだ?

 

髙城 それを拾いながらつくっていきましたね。「頭は〝ほ〟の音で始めてくれ」とか指定もあって。

 

橋本 それが、歌い出しの「ホッ、 と一服 おれだけに開かれたVIP ROOM」になったわけだよね。ラップのいわゆる〝Ho!〟じゃなくて、ひと息つく〝ホッ〟っていう。

 

髙城 不思議なオーダーをするひとだなぁって思ったよ。

 

橋本 英語のラップとかも音として聴いてるからそうなるのかもしれないなぁ。

 

――「Orphans」に話を戻すと、『Obscure Ride』の聴き所として、髙城くんのヴォーカルがブラック・ミュージックに影響を受けて艶っぽくなったことがあると思うんだけど、一方、「Orphans」のサビで聴くことが出来る橋本くんのヴォーカルはまさにインディというか少年っぽい声で、そのコントラストが面白い。

 

荒内 そこがオーセンティックなブラック・ミュージックとはまた違うところで。

 

橋本 あれが〝Replica〟感ってことになるんですかね。

 

髙城:あそこのはしもっちゃんの声、ぐっとくるよね。イノセントな感じっていうか、「Orphans」のテーマにも合ってる。

 

――当初、このポップな曲がシングルになるって聞いた時、ceroはもうちょっとドープな方向に舵を切りたいんだと思っていたので意外に感じたけど、結果として、『Obscure Ride』の良い入り口になったよね。

 

髙城 そうですね。アルバムの中に入ると、やっぱり、シングルだなって感じがありますね。

 

橋本 不思議なもんで。もともと、シングルとしてつくっていた訳ではないですし、サビすらない鼻歌のデモから始まっているので。曲っていうものはちゃんと整えてあげればひとり歩きしていくんだなぁって。

 

――〝Orphans〟(孤児)というタイトルではあるけど、成長した子を見る親のような気分?

 

橋本 まぁ、髙城くんと2人でつくった子供ではありますけど(笑)。それと、自分の曲がカラオケに入ったのは意外と嬉しかった。

 

髙城 アルバムの諸々が一段落したら歌いに行きたいなぁ。

 

橋本 ceroとしては、初めての歌いやすいカラオケなんじゃないかな。

 

――「My Lost City」も「Yellow Magus」も入ってるけど、難しいもんね。

 

髙城 アルバムをつくっている時に社長(角張渉/カクバリズム)からオーダーされたのが「シンガロング出来る曲が欲しい」っていうことで、「Orphans」もそうだし、最後の方で追加した「DRIFTIN’」もそうだし、今回ははしもっちゃんがそれに応えてくれた感じだよね。


■「Roji」

 

――7曲目は髙城くん作詞・作曲の「Roji」。これは、「C.E.R.O」の項のところで話したように、同曲と対になっているトラックだと。「C.E.R.O」がパラレル・ワールドにある<Roji>を舞台にしているとしたら、「Roji」は現実の<Roji>を舞台にしている。この、頭に入っているのは、<Roji>の階段を昇る音?

 

髙城 そうです。これもルイさん(藤田塁/カクバリズム)にテレコで録ってきてもらった(「C.E.R.O」の項参照)もので、<Roji>に行ったことがあるひとにはお馴染みの音だと思うんですよ。続く、ドアを開ける音にしても。

 

――「友達が持って来た できたてのドーナツを/ターンテーブルに乗っけて 揺れようよ」という歌い出しからして、<Roji>のいつもの光景が目に浮かんでくるね。

 

髙城 実際、みんな、7インチが出来ると<Roji>に持ってきてくれますからね。「これかけてよ」みたいな感じで。ゲラーズとか三輪二郎とかオシリペンペンズとか色んなひとたちが。それはもちろんお土産でもあるんでしょうけど、<Roji>で聴いてみることが判断の基準になるっていうか、じっと聴くんじゃなくて、お酒飲みながらだらだら話している中でどんな風に聴こえるかっていうのは重要じゃないですか。僕にしても新曲が出来たらまずは<Roji>のスピーカーで鳴らしてみますから。でも、誰も聴いてなかったり、誰かがふと「いいね」って言ったりする。そういう、<Roji>特有のだらだらしてるんだけど楽しい時間を曲に出来ないかなって思ってつくり始めたのがこの「Roji」ですね。

 

――曲をつくる上で基になるかなり具体的なイメージがあったと。

 

髙城 本当に、目を閉じると在り在りと浮かんでくる、僕にとっていちばん現実的な風景ですからね。それをスケッチするだけっていう。

 

――ただ、楽曲の「Roji」の中では、その現実の風景に非現実が混線してくるよね。「C.E.R.O」のエンディングでパラレル・ワールドの<Roji>に居る客たちがかけた電話が、間違って現実の<Roji>に繋がってしまう。

 

髙城 「乱暴に取った受話器から聞こえた不気味な風の音」というところですね。でも、実際、<Roji>ってこういう謎の電話がかかってくることが多くて。プルルルルって鳴って、「はい、<Roji>です」って出たら、誰も応答のない無言電話で、ガサガサガサ……って音だけが聞こえる。まぁ、多分、ポケットに入れたままかかっちゃった間違い電話なんでしょうけど、「これを曲のネタにしよう」と思って。

 

――それにしても、髙城くんが「Roji」というタイトルの楽曲をつくろうと思った時に、こういう、不穏な感じさえあるファンクになるっていうのは面白いね。

 

髙城 社長にこの曲を聴かせたら、「タイトルがちょっとアレだべなぁ」って言ってましたからね(笑)。「だって、暗い曲だし、<Roji>が閉店しちゃいそうで、ちょっと不安だべなぁ」って。僕が「いや、<Roji>のいつもの雰囲気がしっかりと出てると思うし、このタイトルで行きたいんですよね」って言ったら了承してくれましたけど。多分、社長としては、「Roji」ってタイトルだったら、もっと楽しい、「イェーイ!」みたいなアンセムが出来てくると想像してたんじゃないですかね。でも、僕が知っている<Roji>ってこういう感じだから。

 

――先程話に出た〝パーティ〟とは対照的っていうことかな。もちろん、<Roji>でもパーティはやるけど、普段はバーだから、いい感じに緩いし。

 

髙城 そうですね。楽しいような退屈なような……。『ここは退屈迎えに来て』(山内マリコ、2012年)って短編集があるじゃないですか。あれに入ってる、「私たちがすごかった栄光の話」っていう、昔、東京で暮らしてたけど地元に戻ってタウン誌の編集をやってる女性が主人公の話で、東京に居た頃のことを「楽しいようなそうでもないようなわいわいした時間」って描写していて。それって、凄く東京の雰囲気を言い当てているワードだなと。確かに、東京って楽しいようなそうでもないような、地方から来るひとに「何が楽しい?」って言われても説明出来ない感じがある。そりゃあ、東京タワーとかスカイツリーとか行ったら楽しいのかもしれないけど、それが東京を象徴しているとも思えないし。対して、<Roji>の楽しいような退屈なような感じって、「東京だなぁ」って思う時があるんですよね。それを曲で表現したかった。

 

――毎日のように王舟が来て、全然、帰らないみたいな。

 

髙城 王舟も引っ越しちゃって、昔よりは来れなくなりましたけど、彼はちょっと前の<Roji>の、楽しいような退屈なような時間の象徴ですね(笑)。だから、曲の「Roji」でも、間奏部分に隠し撮りした王舟の声が入ってますもん。2年前か3年前に、PKをするゲームのアプリが<Roji>で流行って、王舟がカウンターで飲みながら「パン!」「パン!」ってずっとそれをやってて。僕は「こいつ、家でやりゃいいじゃねぇか……」と思いながら、それが、まさに退屈で楽しい時間だったので、いつか曲に使おうと考えて、そっと録音して。そして、今回、入れてみた。でも、その録音をいま聴き直してみると、当時はルミちゃん(髙城の母親)も普通に働いてたんですよ。声こそ入ってないけど、いつものようにカウンターの端のところに座って、その光景を見ていたはずで。そういうことを考えるとグッときますよね。

 

――<Roji>も、時間が経つごとに複雑な空間になっていってるよね。

 

髙城 多層的なね。もう8年目ですから。いろんな人が来るようになったし。

 

――ルミさんが亡くなってからも、ルミさんが居たとき以上に……と言っていいぐらい、ルミさんの気配みたいなものを感じるんだよ。

 

髙城 不在の存在感っていうのはやっぱりありますよね。

 

――空間というものはそうやって熟成していくものだと思うし、やっぱり、〝Roji〟と冠するのは、あからさまなアンセムよりもこういう、それこそ〝Obscure〟な曲が似合うのかな。

 

髙城 うん。曲の中でも、「いなくなった奴も何人かいるけど/どっか他所で変わらずにいるだろうさ/「リアリティがない」だなんて誰かが言ったけど/現実はいつだって悲観と楽観のあいだにあるはず」って〝Obscure〟なことを歌ってますけど、当初は、8年もやってると常連さんが移り変わっていくので、「来なくなったひとはいま何をしてるんだろう? まぁ、何処かで元気にやってるだろう」みたいな軽い気持ちで書いた歌詞なんですね。でも、その後、図らずもルミちゃんが、そして、常連だった猫のレタスが亡くなってしまって、〝いなくなった奴〟とか〝どっか他所〟っていう言葉が持つ意味合いもさらに広くなって。それでも、オレは〝変わらずにいるだろうさ〟と思ってるし、その気持ちは、楽観的でも悲観的でもなく、「まぁ、そんなもんなんじゃないの?」っていう……。だから、結果として、暗くて変だけど、妙なポジティヴさも持っている曲になっちゃったなという感じですね。

 

――イエロー・ファンクと言うと凡庸だけど、ファンクってものに新たな意味を与えている曲だってことも思いましたよ。

 

髙城 そうですね。ジャズも隔世遺伝的に入ってますしね。あらぴー(荒内)のピアノだったりとか。

 

――<Roji>を舞台にしているというのもあるし、背伸びをしていない、日常に根差したファンクだなって。

 

髙城 湿った感じに日本人っぽさがありますよね。あと、春のどよんとした感じも入ってる。

 

荒内 湿気もあるよね。

 

髙城 うん、カラッとしてない。これが、ceroのファンクなのかもしれないな。


(interview by 磯部涼)

 

 

 

 

<後編 2015.06.24 update>

 

■「DRIFTIN'」

 

――さて、アルバムもそろそろ終盤です。9曲目の「DRIFTIN’」は作曲が橋本くんで、作詞が髙城くん。もともと、『Obscure Ride』の本編はこの曲以外の11曲で完成するはずだったのが、レコーディングの最後の方で、先程(「Orphans」の項参照)、話に出たように角張(渉/カクバリズム)の「シンガロング出来る曲が欲しい」というオーダーを受けて、急遽、書き下ろされたのが「DRIFTIN’」です。

 

髙城 もうかなりテンパってた時期なんで、あらぴー(荒内)がスタジオで他の曲のディレクションをしている時に、はしもっちゃん(橋本)はイヤホンをしながら曲をつくって、オレは別の部屋で詞を書いてっていう……。

 

橋本 ベンチャー企業スタイルで。

 

――確かにシンガロング出来るというか、『Obscure Ride』の中でもポップな曲だけれど、ただ、結果としてこの曲が入ったことによってアルバムの雰囲気が大きく変わるようなことにはならなかったね。

 

橋本 それはいちばん心掛けたことだったんです。キャッチーな曲をつくらないといけないけど、他の曲と懸け離れたものをつくってもアルバムを台無しにしちゃうし、その〝間〟だなと思って。ここで、熱が上がり過ぎないように。

 

髙城 そういう意味では、絶妙なところに落ち着いたよね。まぁ、角張さんが「まだ1曲行けるべ」って言い出した時も、「気持ちは分かりますけど、アルバムの雰囲気を壊さないようなコマがつくれればの話ですね」って返してたから。そうしたら、はしもっちゃんが上手くブラッシュアップして、アルバムっていうパズルのピースのひとつにしてくれたのが良かった。これも、オープニングの華やかさがニュー・ソウルっぽくて、はしもっちゃんらしい感じの曲ですね。

 

――一方、「茜の照りつける サングラス越しの街が/モノトーンに染めあげられていく/TVが退屈だ ザルソバも美味くないし/だけどその空虚が 笑えるだろう」という歌い出しは、何処か虚無的で。

 

髙城 ただ、これも「Roji」と同じで(「Roji」の項参照)、虚無的だけど妙なポジティヴさがあったりして。それに、本当に最後の最後で書いた歌詞だから、図らずもここで1回、俯瞰しちゃうような感じにもなってますね。資料で引用したテッド・チャンの「生まれてはじめて、夜の正体を知ったのだ。夜とは、大地そのものが空に投げかける影であることを」(前編の冒頭参照)って文章に影響を受けた、「生き物たちのうえ 見降ろす誰かの影が おちて/みな眠りに就いてしまうのさ」ってラインの辺りだとか。夜というものは、誰か覗きに来た者の影で、その中でみな寝てしまう、みたいな。そんな、生きとし生けるものをただただ愛おしく見つめるだけの存在があるというイメージ。だから、「Orphans」の「あぁ 神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて/あぁ わたしたちは ここに いるのだろう」ってラインと同じ宗教的な感覚が「DRIFTIN'」にはあるように思います。

 

――タイトルの〝Drift(漂流)〟は、やはり、アルバムを通して出てくる〝移動〟のイメージから?

髙城 そうですね。移動の中でしか生まれない思考があるって話(「Summer Soul」の項参照)をしましたけど、考えてみれば、そもそも、人間って、人生っていう生から死までの移動の中にいる〝漂流者〟だなって。それで、〝DRIFTIN’〟。あと、「Night Drifter」ってラジオ番組(InterFM/毎週月曜日24時半~25時)をやってるのもありますし。


■「夜去」

 

――続く10曲目の「夜去」は髙城くんの作詞・作曲。シングル「Orphans/夜去」にも入っていた曲で、リリース時のインタヴューではタイトルについて「〝夜去〟は、夕方って意味で、宵の口……夜の始まりなのに、〝夜が去る〟と書く」「その、夜が深まっていくにつれて、同時に遠のいてもいくんだという表現の仕方は、時間をループで捉える日本/アジア独特の感覚に基づいているのかなと思うんですが、それが、「Orphans」で描いたような転生とも重ねられる」と語っていたけど、昼と夜の間のまさに〝Obscure〟な時間について歌った曲だとも言えるよね。あるいは、日が暮れるに従って現実と非現実が融け合っていくような雰囲気もある。

 

髙城 それと、『Obscure Ride』ってタイトルに込めた意味として、〝曖昧な乗り物〟ということともうひとつ、〝Ride〟はセックスを意味するスラングでもあって。〝Let's Ride〟、みたいな。だから、〝Obscure Ride〟は「〝Obscure〟なものとの交わり」とも捉えられるんですけど、収録曲の中では「夜去」がいちばんそういう雰囲気があるかな。

 

――じゃあ、「とびきり素敵なテントを張ろうよ」っていうラインは勃起のメタファー?

 

髙城 それ、はしもっちゃんも言ってた(笑)。

 

橋本 それはやっぱり想起するでしょう。

 

髙城 〝テントを張る〟って、いまどき聞かない表現だけどね(笑)。『GTO』(藤沢とおる、96年~02年)とかに出てきた。

 

橋本 結構、そう捉えるひともいると思うなぁ。

 

髙城 じゃあ、もう勃起でいいよ!

 

――実際、セクシーな曲なんだけど、いわゆるブラック・ミュージック的な、直接的な表現ではなく、妙に怪し気な艶かしさだよね。

 

髙城 だって、交わる相手が幽霊ですからね。「甘くとろける魔法のような夜に/幽霊と交わし合う 誓いの口づけ」っていう。

 

荒内 アルバム・タイトルの最初の候補は〝Traffic〟だったって話をしましたけど(「C.E.R.O」の項参照)、実際、車みたいな乗り物に限らず、手紙みたいな〝Traffic〟(往来)するものがたくさん出てくるアルバムで、ある時、シングルの時点で髙城くんが何気無く書いていただろう〝幽霊〟ってワードも、それこそ、あっちの世界とこっちの世界を往来する存在だって気付いたんですね。しかも、その幽霊と交わるってことは、つまり、あっちの世界とこっちの世界が二重化するっていうことで、アルバムのここまでの展開とこれからの展開を考えると、やっぱり、「夜去」って曲が、ある種のボーダーになっているのかな。

 

――だから、「C.E.R.O」~「Yellow Magus(Obscure )」までがパラレル・ワールドの話で、「Elephant Ghost」~「DRIFFTIN’」までが現実にパラレル・ワールドが浸食してくるっていう展開だとしたら、いよいよ、「夜去」でふたつの世界の境目が溶け始める。

 

髙城 倒錯的というか、パラノイアックというか、これだけ〝パラレル・ワールド〟だとか〝現実〟だとか言っていると、自分がいま書いているのがどっちのことなのか分かんなくなってくるような感じですよね。ceroは、もともと、現実からパラレル・ワールドへと旅をするバンドだったのに、もはやそうではない。

 

荒内 例えば、「Exotic Penguin Night」(ファースト『WORLD RECORD』収録曲)なんかもマジック・リアリズム的で、『Obscure Ride』収録曲に割と近い世界観だけど、あれはあくまでもペンギンが空を飛ぶっていう非現実的なことが日常の中で起こったっていう話であって、今回のアルバムはその現実と非現実の境目がかなり曖昧。

 

――「夜去」の「食堂、新聞、コーヒー、煙草、シンクを流れる水」とか日常的な描写にも、妙な違和感があるという。それにしても、この曲はアルバムの流れの中に収まることによって凄みが増した。

 

荒内 シングルから、若干、ミックス変えていて、それも上手くハマったよね。

 

橋本 マスタリングでいちばん音が良くなった曲でもある。

 

髙城 この曲もニュー・ソウルのcero流解釈ってことになるのかな。当初は『Marlena Shawの「Feel Like Makin' Love」』っぽい感じで」とか言ってたし。そういう、リヴァーブ感というか。

 

橋本 そうだね、この9曲目、10曲目の流れはリヴァーブ感がある。


■「Wayang Park Banquet」

 

――11曲目は「Wayang Park Banquet」。これは荒内くんの作曲で、詞は荒内くんと髙城くんの共作です。

 

髙城 あらぴーが提出した最後のピースがこの曲だったかな。

 

荒内 そうだね。

 

――髙城くんがつくった1曲目の「C.E.R.O」と8曲目の「Roji」のように、荒内くんがつくった3曲目の「Elephant Ghost」とこの「Wayang Park Banquet」もまた対になっていると言えないかな?

 

荒内 確かに、こういう曲をつくろうとしたのは、「Elephant Ghost」ともう1曲、近い印象を与えるものがないとバランスが取れないかなと思ったのもありました。

 

――あるいは、髙城くんがつくった6曲目の「ticktack」とも方向性が近いかなと。どれもリズムに重点が置かれた曲だけど、「Wayang Park Banquet」のコンセプトは?

 

荒内 基本的には8分の6拍子と4分の4拍子のごく簡単なポリリズムですね。実は西洋音楽でもよく使われる仕組みではあって、自分も普段からリスナーとして慣れ親しんでいるんですが、今回は、あえてそれを図式化してやってみたという感じです。

 

髙城 この曲がいちばん構造主義的だよね。

 

荒内 うん。構造からグルーヴが生まれるっていう。

 

――曲調としては何処かエキゾチックな雰囲気もある。

 

髙城 〝植民地の音楽〟ってイメージですね。西洋的な要素と非西洋的な要素の混ざり方が。でも、結果的に支配と非支配が逆転してしまうという。ブラック・ミュージックもまさにそうですけど、最初は奴隷として連れて来られた人々が、結果的には文化を支配する側に回る。

 

――今やアメリカのポップ・ミュージックは全てブラック・ミュージックを経由したものになっている、みたいなこと?

 

髙城 音楽だけでなく、往々にして起こっていることなんでしょうけど。いろいろあって、結局、混ざっていくというか。「Wayang Park Banquet」にはそういう雰囲気があるなぁと。

 

――初期のceroが、〝エキゾチック〟という要素を漠然と捉えていたとしたら、この曲はそれをもっと構造的に表現している感じだよね。

 

荒内 そうですね。〝エキゾチック〟って、要は勘違いとか思い込みとか、ミスリードが魅力なわけですけど、今回は、前に話したように(中編の冒頭参照)、音楽そのものに接近して、解析して、実践するという形でつくっていったんで、もうちょっと、リアリティのある音楽になっているかな。もちろん、どうしても、〝エキゾチック〟な感じは出てしまうものの、少なくともつくっている時は〝エキゾチック〟なイメージは目指してなかったですね。

 

――一方、歌詞ではライヴの後に繰り出した街での大騒動が描かれている。「夜去」が〝静〟のイメージなら、一転、〝動〟のイメージというか。スペクタクルの中で全てがぐちゃぐちゃになっていく。

 

髙城 「夜去」で仄めかしていたあっちの世界とこっちの世界の二重化が本格的に始まって、いよいよ、訳が分かんなくなってきてる感じですよね。それこそ、さっき言った、植民地支配における支配と非支配の逆転じゃないですけど。歌詞に関しては、もともと、あらぴーが「公園での狂乱」みたいなテーマを出してきて、「分かった、じゃあ一緒にやろう」ってあらぴーの家で2人で書きました。それで、オレらが閉鎖的な空間で黙々と作業をしているのと対照的な、花見の狂乱の様子を塁(藤田塁/カクバリズム)さんにテレコで録ってきてもらって(「C.E.R.O」の項参照)、ミックスしたっていう。

 

――頭の中で展開していたはずの狂乱が現実でも起こっていて、それが混線していくみたいな。ちなみに、〝Wayang〟はインドネシア語で〝影〟という意味で、昨年末に行われたワンマン「Wayang Paradise」(2014年12月21日/22日、<EX-THEATER ROPPONGI>)では、インドネシアの影絵芝居を日本で手掛ける川村亘平斎さんをゲストに迎えたという話(前編の冒頭参照)もしたけど、「Wayang Park Banquet」はその後に書いた曲?

 

髙城 そうですね。「Wayang Paradise」を経た後なんで、〝影〟というイメージにさらに意識的になってますね。

 

――そして、大騒動が終わり、続くラインで決定的なことが起こります。「スモークが消えて次第に視界が晴れて気付く なぜだか わたしの姿に影がないことに」と。

 

荒内 これまで、影がない人に気を引かれ続けてきた語り部ですけど、恐らく、最初から自分自身にも影がなかったんですよね。でも、それに気付かなかった。そして、気付いた瞬間、あっちの世界とこっちの世界が決定的に二重化してしまう。ここは、物語を動かそうと思って意識的に書いたラインですね。

 

――あと、〝影〟ってブラック・ミュージックのメタファーとしても捉えられるから、ここは、ceroの音楽性についての自己言及的なラインなのかなって思ったんだけど。

 

荒内 あぁ、なるほど。

 

髙城 イデア論、みたいな。光源の向こう側に行ってしまうというか、影絵芝居を観る側だったはずが、影絵芝居をする側になっちゃう。〝影がない〟と気付くってことには、ボーダーを超えるって意味もあるのかなと思いますね。

 

――『Obscure Ride』は確かに新旧のブラック・ミュージックに影響を受けたアルバムだけど、「Wayang Park Banquet」のように、これまでのエキゾチックな要素を展開させてもいるよね。

 

橋本 そうですね。例えば「ticktack」や「Roji」みたいな曲でスティールパンを使っているのも新しいんじゃないかなぁって思うんですけど。

 

髙城 湿っぽさを出すのに一役買ってるというか。あと、シラちゃん(MC.shirafu)のスティールパンはこれまでのceroを象徴する音色でもあるから、それを曲調が変わった中にあえて入れ込みたいっていうのもありました。


■「Narcolepsy Driver」

 

――12曲目は橋本くん作曲、髙城くん作詞の「Narcolepsy Driver」。冒頭でアルバムのドープな流れから一瞬浮上するけど、後半でまた呑み込まれていく感じ。これは、先程(「Orphans」の項参照)言っていたように……。

 

髙城 はしもっちゃんがデモに鼻歌でラップを入れていたという。

 

――最初、クレジットを見ないで聴き始めた時は橋本くんの曲だと思わなかった。

 

橋本 「Orphans」も「DRIFTIN'」も昔につくったデモをネタとして使ったんですけど、「Narcolepsy Driver」は、いちからつくった曲で。

 

髙城 サンプリング・ミュージックぽいですよね。

 

橋本 そういうこともやってみたかったんです。でも、結局、サンプリングっぽい感じと生演奏っぽい感じ、両方あると良いのかなと思って、あらぴーにピアノのループを弾いてもらって。

 

――「Orphans」と「DRIFTIN’」では、橋本くんらしい綺麗なメロディが前面に出ているとしたら、これは新しいことをやろうとした感じだよね。

 

橋本 今のceroだったらこういうことやっていいんじゃないかな、と思ったのはありましたね。

 

――「Orphans」に関しては、シングルのリリース時のインタヴューで、以前に書いたもののceroには合わなかった曲が、バンドの音楽性が幅広くなっていくことによって包摂されたと言っていたけど、「Narcolepsy Driver」は、ceroの今のモードに対する橋本くんなりのアプローチ、というところかな。

 

橋本 そうです、そうです。実際には2人の気分とは違うかもしれないんですけど、僕のイメージする〝今のcero〟はこういう感じで。

髙城 最初、デモが上がってきた時はびっくりしましたけどね。ある意味、いちばん攻めてるし。高速から、ぐわーって無限状態に入っていくみたいな。はしもっちゃんのサイケデリックなセンスが爆発してるなと。

 

――これも乗り物がテーマの曲だけど、ここでは、〝Traffic〟と〝Trip〟が掛け合わされている感じもあるし。

 

髙城 はしもっちゃんってマジでそういうセンスがあるよね。

 

橋本 ニュー・ソウルも好きなんですけど、アンビエントも好きで、それを合わせるとこういうサイケな感じになるのかな。だから、後半のインストゥルメンタルのパートはオレなりのアンビエントのイメージなんです。

 

――アンビエントって、例えばどんなもの?

 

橋本 いや、全然、詳しくないんで、〝アンビエント〟と言った時にイメージするのは自分で趣味でやってるフィールド・レコーディングとかなんですけど。これまでも、曲にミックスでそういうものをちょこちょこ入れ込むのが好きで、今回のアルバムに関してはそれをもっと大胆にやっても良いのかなと。

 

――橋本くんがジオラマシーンでやっていたハイ・ラマズ的なチェンバー・ロックを、最近、髙城くんと荒内くんが志向しているポスト・DAW的なクロスオーヴァー・ジャズと掛け合わせたような感じもあるよね。また、そのアンビエント・パートの導入になっているあだち(麗三郎)くんのサックスの艶っぽさが凄い。

 

髙城 爆発してる。

 

橋本 気持ち良さそうだよね(笑)。

 

――ドライブでトリップしていくと、何処からかあだちくんが飛んでくるみたいな。

 

橋本 快楽ことあだちが。

 

髙城 これ、要は居眠り運転の歌ですからね。ウトウトとしているうちにアクセルを踏み込んじゃって、遠くでクラクションがフワーンと聴こえる、みたいな。オレは免許を持ってないから分かんないんだけど、角張さんが言ってたのは、最近のハイブリッド車って乗り心地が良すぎて、運転してると身体と車が一体化してきちゃうみたいでヤバいんだって。

 

――運転しているのかしていないのか、境目がなくなってくる。

 

髙城 そうそう。アスファルトの摩擦もほとんどなくて、凄くスムースなドライビングが出来るんだけど、例えば高速に乗ってひたすらまっすぐ走ってると、何の違和感もないから、まるで、自分が車、そのものになったみたいでトランス状態に入ってくるっていう。

 

荒内 話はそれるけど、iPhoneもそうだよね。操作する時にボタンの抵抗感がないから、身体の延長みたいな感じがしてくる。

 

髙城 iPhoneいじってるところとか、夢で見るもんね。それぐらい、身体の1部になってる。

 

――でも、「Narcolepsy Driver」の後半、「そしてまぶたの幕が下りる(前ぶれもなく、カーテンコールもなく)」「おやすみ 踏み込んでゆく… おやすみ 夢のなかで またね…」というラインのあと、あだち君のサックスが鳴り響いて、快楽的なアンビエント・パートに突入していくという展開は、事故を起こしてあっちの世界に行ってしまったとも解釈出来るよね。そして、次の「FALLIN’」に繋がっていく。

 

荒内 生と死がぱっきりと分かれている感じではなくて、ここでも、さっき言ったみたいに2重化してる。

 

髙城 その生と死を隔てて考えないところに、オレは妙な温かみを感じるんだよね。

 

――これまでのceroの楽曲は、コラージュみたいにパッパッパッと展開していく構造だったのが、ここでは、フワーっと変化していくよね。

 

髙城 そうそう。グラデーション的で。

 

橋本 それは得ちゃん(得能直也/ceroのPA兼レコーディング・エンジニア)に色々なイベントに遊びに連れて行ってもらった成果ですね。ダンス・ミュージックの少しずつ展開していく感じを体験して、「あ、こういう音楽があるんだ。気持ち良いな」って思ったので。

 

――「Summer Soul」と設定がほぼ同じというのも面白い。また別の車なのか、はたまた、同じ車のドライブの果てなのか。

 

髙城 ベイビーを捨てて、高速に乗っちゃって。

 

橋本 居眠りをし始めて……。

 

――気付いたら異世界に行っていたという。トワイライト・ゾーン的な。

 

髙城 〝突入〟って感じのエンディングですよね。


■「FALLIN'」

 

――そして、いよいよ、最後の曲。髙城くん作詞・作曲の「FALLIN’」。これは凄く感動的な曲だよね。穏やかなんだけど、何処か死の匂いのようなものも感じるというか、色々なものが微睡みの中で融け合っているようなニュアンス。

 

髙城 オレは、時々、何故か分からないけど夢の中で大泣きして、ぱっと目が覚めると妙に清々しいということがあるんです。まるで、良い映画を観たみたいにカタルシスがあってスカーッとしているのに、何故、泣いていたかは思い出せない。夢の中で自分の人生の総体を目の辺りして「ユリイカ!」って閃いたら、起きると全部失われていて、その余韻だけ残っている、みたいな。だから、移動中の思考の話(「Summer Soul」の項参照)をしましたけど、「FALLIN’」ではそういった失われてしまう夢の中の思考が表現されているとも言えるなって。

 あと、この曲ではオラリーをコーラスに起用してます。今回、一十三十一(「Orphans」「夜去」)さんと重住ひろこ(「C.E.R.O」「Yellow Magus(Obscure)」「Summer Soul」「Roji」)さんにも参加してもらっているように、これまでに比べて、女性コーラスのパートを多目に使っているんですけど、最後は、オレの個人的かつエモい采配で、オラリーに歌ってもらうことにして。何と言うか、ふと、ルミちゃん(髙城の母親)も死んだばかりで、オラリーのお腹の中にはまっちゃん(街/髙城の子供)がいるっていう特別な瞬間に録音作業をしてるんだなと考えたら、そういう瞬間を、記念に音として収めておいても良いのかなと思ったんですね。子供が生まれた時、「これが、お前がお腹のなかにいた時にお母さんが歌ってた歌だよ」って聴かせてあげたいし、ちょっと無理言ってやらせてもらいました。

 

――インタヴューの冒頭で「オレにとっての2014年は、何よりも母親が癌を患ってどうなってしまうのか分からない、またそれと並行して子供が出来て、という1年だったので。もうそこしか見えていなくて」「だから、『Obscure Ride』に自分の深層心理が関係しているとしたら、それはやっぱり、パーソナルな問題なんじゃないですかね」と言っていたけど、昨年の12月にルミさんが亡くなって、最初に書いたのが「FALLIN’」?

 

髙城 いや、それは「C.E.R.O」なんですよ。「FALLIN’」はもうちょっと後で、だから、その頃にはようやく、ルミちゃんが亡くなったっていう事実にフォーカスできるくらいの気持ちにはなれてたってことですよね。「FALLIN’」をつくる時に考えていたのは、オレが夢の中で母親に会うというよりは、まっちゃんがお腹の中で見ている夢の中で、会った事のないおばあちゃん、ルミちゃんに会うっていうロマンチックな奇跡が起こるかもしれないってことで。知らない人が夢に出てくる時ってあるじゃないですか。それって実は、自分が知らないところで自分のことを思ってくれていた誰かだったりするのかもしれないし、夢って、そういう、時間を越えた交通が可能になる唯一の場所だなぁと思ったんですね。

 

――歌詞には「街へ」というフレーズも入っているね。

 

髙城 〝街〟は、実はceroでいちばん多く使っている単語かもしれない。

 

――その、微睡みの中ですべてのものが溶け合っていくようなイメージに、『火の鳥・未来編』のラストを思い浮かべたな。細胞になって、死んだひとと再会するみたいな。

 

髙城 コスモゾーンでしたっけ。火の鳥の胸の中で、これまでに誕生した全ての生命が渦を巻いているっていう。

 

――それと、個人的な連想としては、母方の祖父母がボケちゃって介護施設に入っているんだけど、以前、彼女に会いに行ったら、夕焼けが眩しいぐらい差し込む部屋で、ウトウトとしていて。話しかけても分からなくて、「眠たいの、眠たいの」って、まるで、赤ん坊に戻ったみたいで。その時に考えたのは、人生って、カタストロフィックな終わり方をするのではなく、微睡みながらぼんやりと、フェイドアウトするように終わっていくんだなって。そのことも思い出した。

 

髙城 そうですよね。「ペコロスの母に会いに行く」(監督・森崎東/原作・岡野雄一、13年)っていう映画で、主人公の母親がボケちゃってて、父親は既に死んじゃってて、両親の間では辛いことも色々とあったんですけど、母親が「旦那と手を繋いでデートとかしてみたかったな」っていう思いを、ボケの微睡みの中で過去を書き換えて、実際にあったことにしちゃうんですよ。そして、息子である主人公は、その、ボケた母親と死んだ父親が手を繋いでいるシーンを幻視する。だから、ボケってある種のボーナス・ステージだと思うんですね。幾らでも過去を書き換えたり、時系列を無視して自由に行き来できる能力を身につけることだっていうか。もちろん、ちゃんと介護してくれるひとがいればという話ですけどね。「FALLIN’」にはそういう夢現つの感覚もありますね。

 

荒内:確か間章がデレク・ベリーのインプロについて、「彼のいちばんの能力は、その場その場で忘れていくことだ」というようなことを言っていて。過去の自分に囚われずに、その都度、フレーズが生成されていく能力がある、みたいな。

 

髙城 夢見心地で弾いているような感じなのかもしれないね。

 

――この、『Obscure Ride』の、現実とパラレルワールドの相互作用が始まり、最初は「Elephant Ghost」のように不穏なことも起こるけど、結果的に「FALLIN’」で、生死の境すら融解してひとつの世界になるという流れは、最初から見えていたの?

 

髙城 いや、全然、そんなことは無いですね。だって、それこそ、アルバムの曲をつくり始めた時はまだうちの母親は生きていて。「頑張れ!」「こっち側に戻ってくるんだ!」っていうような気持ちも込めながら制作していましたから。ただ、やはり、抗いきれず、亡くなってしまって。そして、僕の中でもともと希薄だった死生観のモラルみたいなものがなくなっていったというか、生きることと死ぬことのボーダーが消えてしまった。以前、熊本のライヴ(2014年5月18日、<NAVARO>)の打ち上げで、べーやん(筆者)とあらぴーが「死ぬのが怖い」っていう話をしてたじゃないですか。対して、僕は「怖くない」って言ったんです。それで、何でだって訊かれて、「親が死ぬからだ」って言葉が口から出たことを、凄く酔っぱらってたけど、よく覚えてるんですね。自分で言って、自分で吃驚したから。アルバムをつくっている時、それをふと思い出して、「あぁ、そういうことなんだな」と思ったんです。

 

――全然覚えてないんだけど、「親が死ぬからだ」というのは、親があっちの世界で待っていてくれるからだという意味?

 

髙城 まぁ、そうですね。あるいは、もう自分の半分が持っていかれているというか。現世に残しているものは半分しかない、みたいな。

 

――ただ、子供もできて、現世の比重も増えたわけだよね。

 

髙城 そうなんですよね。本当に月並みな言い方ですけど、自分を待っていてくれる人がもう2人もいるから。いや、2人どころじゃなくいっぱいるから。そういうことに気付くと、また変わってくるんですよね。現世に引き止められるというか。

 

――もともと、人間って生と死の間にいる、それこそ、〝Obscure〟な存在だとも思うんだよね。養老孟司が『日本人の身体観の歴史』(法藏館、96年)という本で、何処からが生で、何処からが死なのかっていうことを、延々、細かく分析しているんだけど。脳死は死なのかとか、人間の細胞って日々入れ替わっているわけで、そもそも、人間に固有性はあるのか、みたいなことを。

 

髙城 超スピった話ですけど、肉体的な生命のスパンと、精神的な生命のスパンにはズレがあると思うんですよね。だから、幽霊みたいな概念がつくられたんじゃないかとか、逆に赤ん坊は死の方に近いんじゃないかとか考えたり。

 

――そうやって考えていくと、生命そのものが〝Obscure〟であり、現実そのものが〝Obscure〟なものであるということが分かってくる。

 

髙城 アルバムではそこであえて答えを出さずに、ぼかしたまま見るというか。そういう、凝視しないで、ピントをずらしたまま見続けるみたいな感覚が『Obscure Ride』の通底としてあると思いますし、その感じは気に入ってますね。

 

――確かに、『My Lost City』は劇的だったし、静と動がはっきりとしているアルバムだったけど……。

 

髙城 「スペクタクル!」って感じですよね。

 

――『Obscure Ride』は絶えずアブストラクトな感触があるというか。そして、それが、ラストの「FALLIN’」に飲み込まれていくようなクライマックスで。

 

髙城 バーっとハレーションを起こして明るくなっていって、真っ白にホワイト・アウトして。ハッと気付くとアルバムが終わっているんだけど、何も覚えていない、みたいな。

 

――例えば、前作の「わたしのすがた」みたいに、「FALLIN’」の後に、さらにオチを付けようとは考えなかった?

 

髙城 そうですね。まぁ、この後に付けられるものはないなって。例えば、ゆらゆら帝国の『空洞です』(07年)の最後に付け足せるものはないだろうと思うのと同じ感じというか。「FALLIN’」はピリオドとも言えないですからね。シュワーっと消えていく。

 

――では、長かったインタヴューもそろそろ終わりにしましょうか。完成したアルバムを自分たちで聴いて感じたことを訊かせて下さい。

 

橋本 オレは、ceroがこういうものをつくれるようになるとは予想してなかったんですよね。『My Lost City』みたいにひたすらスペクタクルなものつくっていくタイプのバンドだと思っていたから。リラックスしていて、テンポも一定していて、BGMとしても楽しめる。あるいは、派手さはないかもしれないけど、じっくり聴き込めるみたいな作品をつくれたということは自分の中で大きいです。

 

――そうだよね。ディープな話をしてきたけど、このアルバムが良いのは、それはそれとして、流しても聴けるスムースさがあるところだよね。

 

荒内 自分は今日もリズムのことばっかり言ってましたけど、この間、ふと思い出したのは、震災の後にあだ麗と車に乗っていた時のことで。当時、地震から数ヶ月の間、音楽が聴けなくなっちゃってたんですよ。それで、あだ麗に「最近、何聴いてんの?」って訊いたら、「『スリラー』」って答えが返ってきて。

 

――ははは。

 

荒内 でも、それ、凄く分かるなって。価値観がボヤーっとして、夢なのか現実なのか分からないからこそ、ビートが強いものを聴いて、地に足を付けるっていうのは。髙城くんが冒頭で、「去年は社会を見ていなかった」っていう話をしてましたけど、オレが「リズム、リズム」言っているのは、無意識にビートを通して社会と繋がりたいと考えていたのかもしれないなと、アルバムをつくり終えて思いました。

 

――「Summer Soul」の話の時も近いことを言っていたよね。ビートはひとをトリップさせて非現実的なところへ連れていってくれるけど、一方で、身体性を取り戻し、現実に向かい合わせてもくれる。

 

荒内 オレはもうバイトもしてないし、社会とつながる手段が音楽だけなんですよね。だから、今まで以上に音楽は大事なものになってるんです。

 

――『Obscure Ride』はceroにとって3枚目のアルバムです。〝3部作〟という言い方もあるように、〝3〟は区切りの良い数字ですが、何か思うことはありますか?

 

髙城 アルバムが完成する度に思うことだけど、いち段落した気持ちはあるかな。次のことは全然考えてない。

 

荒内 オレはすぐにでも次のアルバムをつくれるな。

 

橋本 あ、ほんと?(笑)

 

髙城 「もう3作目なのかー」ってのも思う。前に3人で「無駄にキャリアを重ねたくないよね」って話をしてたんですけど、これからも、スピードは緩めたくないし、作品もどんどん濃くしていきたいですね。

 

(interview by 磯部涼)

ツアー情報 TOUR INFO

3rd Full Album Obscure Ride Release Tour

チケット一般発売日: 2015年4月18日(土)
※その他のLIVEはスケジュールページをご確認下さい。

2015.06.07 SUN @札幌 PENNYLANE

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-854) | ローソン(L:14005) | e+(pre:4/10-12)
TOWER RECORDS札幌PIVOT店

2015.06.09 TUE @盛岡 Change WAVE

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-776) | ローソン(L:22692) | e+(pre:4/10-14)

2015.06.10 WED @仙台 Darwin

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-777) | ローソン(L:22693) | e+(pre:4/10-14)

2015.06.13 SAT @松本 Sound Hall a.C

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-790) | ローソン(L:75992) | e+(pre:)
Sound Hall a.C店頭

2015.06.14 SUN @金沢 AZ

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-791) | ローソン(L:53403) | e+(pre:)・AZ店頭

2015.06.18 THU @神戸 VARIT

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P: 260-716) | ローソン(L: 53467) | e+(pre: 4/10-13)

2015.06.20 SAT @京都 KYOTO MUSE

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P: 260-716) | ローソン(L: 53467) | e+(pre: 4/10-13)

2015.06.21 SUN @高松 DIME

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P: ) | ローソン(L: ) | e+(pre:)

2015.06.23 TUE @熊本 Django

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-536) | ローソン(L:84942) | e+(pre:4/10-12)

2015.06.24 WED @鹿児島 SR HALL

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-536) | ローソン(L:84943) | e+(pre:4/10-12)

2015.06.26 FRI @長崎 Studio Do!

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-536) | ローソン(L:84944) | e+(pre:4/10-12)

2015.06.27 SAT @福岡 BEATSTATION

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-536) | ローソン(L:84945) | e+(pre:4/10-12)

2015.06.28 SUN @広島 CLUB QUATTRO

Open 17:30 / Start 18:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-440) | ローソン(L:67877) | e+(pre:4/10-12)

2015.06.30 TUE @岡山 YEBISU YA PRO

Open 18:30 / Start 19:00
¥3,800(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-441) | ローソン(L:67878) | e+(pre:4/10-12)

2015.07.04 SAT @名古屋 Diamond HALL

Open 17:00 / Start 18:00
¥4,000(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-735) | ローソン(L:46899) | e+(pre:4/11-13)

2015.07.05 SUN @大阪 BIG CAT

Open 17:00 / Start 18:00
¥4,000(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P: 260-716) | ローソン(L: 53467) | e+(pre: 4/10-13)

2015.07.12 SUN @東京 ZEPP TOKYO

Open 17:00 / Start 18:00
¥4,000(前売り/ドリンク代別)
チケットぴあ(P:260-709) | ローソン(L:75846) | e+(pre:4/10-12)

メディア情報 MEDIA

〈雑誌〉
QUICK JAPAN 119号(4/10発売)(裏表紙・インタビュー)
ROCKIN' ON JAPAN 6月号(4/30発売)(SCENE)
INDIES ISSUE Vol.73(4/30発売)(表紙・特集・インタビュー)
Casa BRUTUS(5/9発売)(インタビュー)
MEN'S NONNO 6月号(5/10発売)(インタビュー)
TV Bros(5/7発売)(インタビュー)
POPEYE 6月号(5/10発売)(高城インタビュー・レビュー)
GINZA 6月号(5/12発売)(高城インタビュー・レビュー)
MUSICA6月号(5/16発売)(インタビュー)
SWITCH(5/20発売)(インタビュー)
MUSIC MAGAZINE6月号 (5/20発売)(表紙・インタビュー)
CDジャーナル(5/20発売)(表紙・インタビュー)
WARP MAGAZINE 6月号(5/24発売)(インタビュー)
Bounce379号(インタビュー)
ROCKIN' ON JAPAN 7月号(5/30発売)(インタビュー)
Meets Regional(6/1発売)(インタビュー)
QUICK JAPAN 120号(6/10発売)(インタビュー)
札幌TVガイド(インタビュー)
フェスエコ(5/20発行予定)(インタビュー)

SAVVY 6月号(4/23発売)(レビュー)
Rolling Stone 6月号(5/10発売)(レビュー)
OCEANS 7月号(5/23発売)(レビュー)
月刊KELLy 7月号(5/23発売)(レビュー)
セブンティーン7月号(6/1発売)(レビュー)
steady. 7月号(6/7発売)(レビュー)
ar 7月号(6/12発売)(レビュー)

<RADIO>
5月23日 J-WAVE "RADIO DONUTS" ゲスト出演 朝8時~12時
5月23日 Inter FM "ALTERNATIVE NATION" ゲスト出演 17時~20時
5月25日 J-WAVE "BEAT PLANET" ゲスト出演 11時30分~14時00分
5月25日12時30分ごろ〜12時45分ごろまで Tokyo FM 「LOVE CONNECTION」橋本・コメント出演
5月25日 Inter FM "SALUの惑星" ゲスト出演 24時~24時30分
5月27日 Inter FM Special Program 『cero Obscure Ride発売記念Night Drifter Special』20時〜21時(生放送!)
5月28日21時〜22時45分 / NHK FM 「ミュージックライン」 cero ゲスト出演
6月1日(月) JFNネット10局(FM青森,FM岩手,FM秋田,FMとやま,FM石川,FM三重,FM山陰,FM香川,FM徳島,FM鹿児島)「OH!HAPPY MORNING」 ゲスト出演 9時40分~9時50分
6月2日(火) JFNネット10局(FM青森,FM岩手,FM秋田,FMとやま,FM石川,FM三重,FM山陰,FM香川,FM徳島,FM鹿児島)「OH!HAPPY MORNING」 ゲスト出演 9時40分~9時50分
6月13日(土)東海ラジオ 「TOKYO ROCK」ゲスト出演 26:00〜26:30

毎週月曜日24時半よりInter FMで放送中のceroのレギュラー番組「Night Drifter」は絶賛放送中。

〈WEB〉
HMV ON LINE 「無人島〜俺の10枚〜【cero編】」
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